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72候【花鳥風月】小雪の候


風花かざはな雪虫ゆきむし小春空こはるぞら


冬がやってきます。
寒さと乾燥対策、だいじな季節ですね。
太陽光が弱まると光と影の境界線がゆるみ、大気が乾くと遠くの景色まで見晴るかすことができます。
冬が近づくと花鳥風月は地上世界という舞台のお色直しをして、精神をサラリと広げるような演出を仕掛けてきます。

冬はじめの風のない日、春のようにあたたかで穏やかな小春日の空は、光の反射がゆるいせいか空の色もやさしく光ります。
青は光を通して見る暗闇の色。
光が強い夏のころは、影の蒼さも鮮烈さを増しますが、小春空は地球惑星と宇宙空間の区切りをふわっとゆるめて、ヒトの精神も宇宙にむかって広がる季節ですよとお知らせしてくれるかのようです。

大都市に住んでからめったに見ることのない雪虫(本州ではわた虫?)は、綿のようにフワフワした白いロウ物質を体から出し、雪のようにふるまいます。
雪虫を見かけたらそろそろ雪が降る季節。
雪が積もると、地面から浮いて歩いている感覚が楽しくて、北海道に住んでいたころは雪道散歩も日課のひとつでした。

お山が雪化粧をはじめると、晴天で強い風の吹く日には、山から運ばれる雪がキラキラと大気のなかを舞い踊り、世界が実質的に輝いてみえる、風花も冬ならではの花鳥風月。

小雪しょうせつの候、今年は11月22日からです。

虹不見にじかくれてみえずー虹を見かけなくなる
朔風払葉きたかぜこのはをはらうー北風が木の葉を吹き散らす
橘始黄たちばなはじめてきばむー橘の実が色づきはじめる

虹は吉兆、というのは万国共通シンボルと思います。
今年は何回、虹を見ましたか?
陰気が強まる季節に入ると大気中の水蒸気が減って虹は見えなくなるよと、わざわざ伝える七十二候ですが、今回は虹を呼ぶ「冬知らず」の花について綴ってみたいと思います。


皮膚を守る、もうひとつの金盞花きんせんか


前回の花鳥風月では立冬の候で、金盞花香きんせんかかぐわしの水仙について所感を綴りました。
園芸種では一般的に金盞花きんせんかというと、マリーゴールドをさし、花の色と形が金の盃のようだから金盞花きんせんかと呼ばれます。
学名の Calendula からカレンデュラとも呼ばれ、ラテン語の Calendae(カレンダー・月のはじめ)が名の由来です。
「月のはじめにいつも咲いている花」と認識されるほど開花期が長いことからついた名前です。

「月のはじめ」についてですが、古代ローマでは暦をつかさどる僧侶が新月の現れた直後に人々を集め、つぎは何日後に満月になるかを知らせていたといいます。
つまりカレンダー(月のはじめ)は、新月のころを意味することばでした。

原産地は地中海沿岸。
植物学上では春咲きの一年草に分類されますが、宿根草もあり、冬越えをすることから「冬知らず」の名でも知られています。

日本では観賞用、園芸種としての認知度の方が高いようですが、ヨーロッパではハーブでありエディブル・フラワー(食用花)として、サラダにちらしたりスープやシチュー、バター、チーズなどの色付けに利用されてきました。
花びらを乾燥させたハーブティは日本でも入手しやすく、カレンデュラ、またはポットマリーゴールドの名で販売されています。

ヨーロッパでは皮膚や粘膜の修復をし、殺菌作用があり、身体の内側の炎症を抑制するとして、傷やしもやけ、床ずれなど皮膚のトラブルに役立つハーブとして活用されてきました。
ホホバオイルなどに2週間ほど漬け込む浸出油は、簡単に仕込めることもあり、わが家の常備薬のひとつです。
包丁で指を切ったり、サカムケを深く剥いてしまったときなど、カレンデュラオイルをまめに塗ると治りもはやく傷跡も目立たなくなります。(個人的な実感です)

アメリカ南北戦争のとき、戦場の医師はカレンデュラを活用して、傷の手当てをしたと伝えられています。別名、皮膚のガーディアンとも呼ばれています。


神話のヘリオトロープ


カレンデュラはハーブティーとして飲んだり、サラシにくるんでハーブバスにしたり、食用ではドレッシングにいれておくとサラダの彩りも風味もよくなります。
ポプリとして小皿に飾り精油をたらせばルーム・フレングランスにも。
なんどか使ったものは香りがしみ込んでいるので、匂い袋に入れてタンスや洗面タオルの棚においています。

園芸用のカレンデュラ(またはキンセンカ、マリーゴールド)は、属がちがうものがたくさん出まわっています。
ポットマリーゴールドの名でハーブとして流通している種なら飲んだり塗ったりして使用できます。

現代ではとても身近なカレンデュラですが、ギリシャ神話・変化物語のひとつに登場するハーブでもあります。
ペルシャの王女レウコトエは太陽神に見初められ、父であるペルシャ王の手によって人柱となり乳香樹にゅうこうじゅ(フランキンセンス)に変化したというお話があります。
この神話にいっちょかみしている水の精霊クリュティエは、9日間太陽神を見上げ続けて可憐な花に化身し、その後もずっと太陽を見続けている、という神話です。

いつでも太陽をむく花はギリシャ語の helios(太陽)と、trope(向く)で「ヘリオトロープ」と呼ばれ、カレンデュラのほかにはヒマワリと、キダチルリソウ属、その名もヘリオトロープの3つが有名です。
ヒマワリはアメリカ原産、キダチルリソウはペルー原産なので、ギリシャ神話でいうところのヘリオトロープならば地中海原産のカレンデュラではないのかな、と思います。
クリュティエの変じた花は、ヒマワリやヘリオトロープ説もありますが、神話の成立時にヨーロッパで知られていなかったんじゃなかろうか、と。

神話の詳細はあいも変わらず嫉妬と復讐がモチベーションとなっている、ソープオペラ仕立てなので割愛します。
それよりも太陽神から水の精霊、ペルシャの王族へと植物を媒介にして梯子がかけられた、という情報の方に刮目しています。

この神話では太陽とヒトが直結するのはむずかしいので、空と大地を自在に往来できる水の精霊が媒介者となって、地上生活者でもあるペルシャ王の系譜(血)に梯子をかけた、というのが話のキモなんじゃないのかな、と。


虹のたもとの金の壺


別名ポットマリーゴールドはマリア様の黄金の壺。
金盞花は金の杯。
水の精霊は太陽光にあたると虹色に輝き、そのたもとにはカレンデュラが咲いているよ、というのが名前の由来に隠されているのではないかと思っています。

「虹のたもとの金の壺」は、占星学のサビアンシンボル牡牛座4度の象徴です。
金の杯、金の壺のことは現代思想では「財宝」「お宝」と表現するほうが
わかりやすいのかもしれませんが、牡牛座が象徴する内容を盛り込んで考えてみると、金の壺がもたらす豊かさに、もう少しバリエーションが出てきます。

たとえば地上生活するうえでは、からだが資本です。
そのからだを形成するのに意志力はとても重要で、すこやかなからだを成育させることは、生まれもった資質(遺伝的素質)を開花させることにもつながります。

地上生活をまるごと楽しむための道具として、からだの使い勝手が安定した状態や、五感を最大限に駆使して世界を楽しむ幸福を表すのが牡牛サインの特徴です。
そのうえで五味を味わい、美しい芸術や心おどる音楽を楽しむ。
感覚器としてのからだをつかって、地上生活を存分に楽しむことをあらわすシンボルが、牡牛座4度です。

ヒトのからだの境界線である皮膚をまもり、皮膚のガーディアンと呼ばれるカレンデュラは、杯のかたちで花ひらき、器としてのからだの大切さを思い出させてくれるハーブなのかもしれません。


虹のたもとの金の壺は、世界じゅうで神話、民話となり現代に伝えられています。

ドイツの伝承では
虹は水を飲むために天から現れる。
虹が水を飲んでいる間に虹のたもとに辿りつくと杯を手に入れ、幸福が約束される。

フランスの伝承では
虹のたもとで、虹は水を飲む。
柄杓か杯を見つけられると幸福になる。

中国の伝承では
晋の時代、家に虹がやってきて、釜の水を飲みはじめた。
家人は「虹がやってくるのは目出度いこと」と喜び、釜に酒をふるまい、虹は酒も飲み干して釜の中に沢山の黄金を吐き出して去っていった。

日本の伝承は
虹のたもとを掘ると宝や金塊が出る、というのがあります。


水神様と悪戯妖精いたずらようせい


古い伝承には、虹を竜(蛇)として見ているものも多いです。
ヨーロッパ、インドでは、竜、ドラゴン、蛇は土中の黄金を守ると言い伝えられ、この場合の黄金を物質的な財宝ではなく、智慧やアカシックレコードとするなら「りゅう座トゥバンは宇宙図書館」という古代の叡智が、世界じゅうにちらばり、物語となって継承されているのかもしれないな、と思います。

アイルランドの詩人、ウィリアム・バトラー・イェイツ(1865 - 1939年)がのこしたケルト妖精譚には、レプラコーンという妖精がでてきます。
レプラコーンは金の壺をもっており、うまく捕まえることができると黄金のありかを教えてくれますが、たいていはうまくいかず、それどころか悪戯を仕掛けて、トラブっている人をみて、笑いながら去っていくそうです。
アイルランドには「レプラコーンに注意」という交通標識もあるそうです。

恐いものをとことん怖がると、やがてウィットに富んだユーモラスな物語になるように、悲しいことをとことん悲しんだ水の精霊クリュティエは9日間太陽をみつめるあいだに、太陽神への思慕が美しい思い出に変わり、可憐な花に変化したのかもしれません。

虹のたもとを目指す旅は、破天荒で楽しい冒険になると思いますが、マリーゴールドをお庭やベランダに咲かせて、虹を呼び込むのもまた、ココロ踊る冬の過ごし方になるのではないかな、と。
*レプラコーンなどのいたずら妖精、もしくは竜神さまのご来訪などがあっても自己責任でご対応ください。


太陽は射手座に入ります


射手座は冬至に向かう、一年で最も夜の長い日にむかう最奥・最深部への旅路のころ。
奈落の底へ落ちるのは、深淵なる領域への冒険でもあり、一生のあいだ1年ごとにやってくる射手座の季節には、人生をとおしていろいろな最深部バージョンを経験してゆくと思います。

キャンドル、ランタン、かがり火など街中に小さな炎がともされる季節でもあり、火元素の柔軟宮らしいあかりを目にする機会も多くなります。
射手座は精神性を向上させる取り組みが大好きです。
見聞を広げ、探求心を絶やさず、人生は旅そのものといわんばかりにあたらしい可能性を求めて、あちらこちらへ出かけます。
それは実質的に出かけることもあれば、夢見や瞑想によって最深部のシャドウを訪ねる旅、ということも。

胸の内に燃える柔らかい炎は消えることなく、探求する学徒でありつつ運動能力の高い冒険者でもある。
さそり座の季節にひらかれた魔界の扉のその奥へ、インディ・ジョーンズよろしく探検に出かけるなら、恐ろしいものをとことん怖がってユーモアに転ずる(陰極まって陽になる)射手座らしい発想が助けになります。

日本では11月に各地の鷲神社や大鳥神社で酉の市が立ちますが、縁起物の熊手はこれでもかというほど福徳ラッキー吉兆ものが盛り込まれて、はじめて実物を目にした時は日本のユーモアが凝集されている感に笑いがこみ上げてきました。
鯛に小判にまねき猫、お多福、金俵、打ち出の小槌、宝船と、陽気で愉快なシンボル総出で、深刻さを吹き飛ばすごときアソートセット。
熊手を片手に進むなら、扉の向こうに広がる漆黒も、きっと笑福に湧くことだろうと感じます。

☆☆☆

お読みくださりありがとうございました。
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