褒められたとき「ありがとう」と言えていますか。
人から褒められたとき。
「そんなことないですよ」というべきなのか「ありがとうございます」というべきなのか。
わたしは「ありがとうございます」に一票入れたい。
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20代前半の頃の話。
同僚に40歳の女性がいた。
背が低く童顔だったその方は、角度によっては25~6歳くらいに見えてしまうほどの容姿。
くすみのない白い肌とサラサラとした髪の持ち主で、お顔立ちも整っていた。
そのため、初めてその方に会う人たちは必ず「若い」「きれい」「かわいい」と褒めていた。
しかし本人はその都度「そんなことない」と答えていた。
普段はおだやかで気遣いもあって優しい人なのに、容姿を褒めたときだけは、顔をしかめて強い口調になる。
「まさかー」「いやいやいや」と、顔の前で手をブンブン振り回し、それ以上相手が褒めることを許さない空気を出す。
照れちゃって・・・とかそんな生易しい仕草ではなく、顔の前でおならでもカマされたかのような反応。
それは相手が男性に限らず、女性であった場合も同じ。
なかには、その突然の反応に困惑してしまう相手もいるくらいだった。
それをはたで眺めていて「なぜだろう、なんだか気持ちよくないなあ」と違和感を感じていた時期があった。
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たまたま本人と話をする機会があり、なんでいつも褒められたときに否定するのかを訊くと「だって受けいれたら自意識過剰に思われちゃうでしょ」とのことだった。
その言葉を聞いて、ケツが限りなく透明に近い青だったわたしは「でも褒めことばって相手からのプレゼントじゃないですか。それをノータイムで否定するのって、もらったお土産を目の前で投げ捨てていることと一緒じゃないですか」と、生意気にもアドバイスめいたことをまくし立てた。
「あー、なるほどねー。ウフフ」と女性は大人の対応をしてその場は終わった。
自分で言いながら、違和感の正体はこれだったのかと勝手に納得した。
日本人は謙虚が美徳。
とはいえ、謙虚もすぎると意図せず相手を不快にさせかねない。
こうなると本末転倒。
人の発する「褒めことば」には、いろいろな意味や狙いがあるのも分かる。
しかし、大半が相手の素直な感情。
「ことばのプレゼント」だ。
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子育てで「子供にアメを2つあげたとき、その1つを親に分け与えてきたら、それは受けとってあげてください」という教育方針を聞いたことがある。
たしかに「わたしは大丈夫よー〇〇ちゃんで食べなー」と、アメを突きかえしたとして、それで喜ぶ子供は少ないのかもと思う。
「くれるの?ありがとねー」と受けとってあげたほうが、子供が笑う顔が想像できる。
(子供いないけど)
だから「褒めことば」というプレゼントに対する最大の感謝は、それをありがとうと「素直に受けとること」が相手への報いなのだと思う。
会社の休憩室におみやげを置いたとき、誰も食べてくれないことがいちばん傷つく。
その謙虚もだいぶいらない(人気がないお菓子の場合は別)。
日本人が誇るべき文化として、謙虚の使い方は考えて生きていきたい。
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