junaida展「IMAGINARIUM」@PLAY! MUSEUM
12月に入り、街はクリスマス一色。皆何となく浮足立ち、店や民家の軒先が様々に装飾されるこの季節に、赤や金で彩られる空間を楽しめるjunaida展「IMAGINARIUM」はぴったりかもしれません。
junaida展「IMAGINARIUM」
「IMAGINARIUM」展は、『Michi』『怪物園』などの絵本作品で知られる画家・junaidaの初の大規模個展です。オリジナルのイラストレーション作品はもちろん、絵本・ポスター・装丁等の原画も含め会場には400枚以上が並びます。
作品には赤くとんがった屋根の家々やそこに暮らす人々、あるいは不思議な形をした生き物がみっしりとひしめき合っていて、1枚の絵の中を思わずずっと覗き込んでしまうような作風です。
「宮殿のような空間」に没入する
会場となっているPLAY! Museumは今回初めて訪れたのですが、楕円形の回廊をぐるりと歩き、大きな広間に出る少し不思議な構造になっており、junaida作品によく描かれる入り組んだ道にどんどん分け入っていくような楽しさがありました。
展覧会公式HPに「宮殿のような空間」とある通り、にぶく光る金箔を貼ったようなパネルやたっぷり使われたドレープなどが印象的です。
ぞろぞろうごめく怪物たち
回廊の壁には『怪物園』(福音館書店, 2020.)に登場する怪物たちがぞろぞろと歩く様子がプロジェクションマッピングで投影されていました。
このアニメーションの前では大人も子どもも足を止めていて、ゆっくり歩く怪物たちの足元をたまに小さなやつが走り抜けるのを見ては「見た? 今の」と声を上げたりしていました。こういう、各々好きに観ているけれど何となくその場だけのゆるい一体感が形成される展示は楽しいです。
感銘を受けたのは、怪物たちの「影」が徐々に色彩をもった実体へと移り変わるところ。原画には描かれない影がアニメーションに加えられることで、「何かが来る」という観客の予感や怪物たちの存在感を引き出す役目を果たしていました。
たった一文字で連なる作品:『の』
こちらは絵本作品『の』(福音館書店, 2019.)の展示。『の』は「わたしの」「お気に入りのコートの」「ポケットの中のお城の」……と、毛糸玉の糸端を引っ張るように「の」でつながれた単語が紡がれ、くるくると変わっていく絵を楽しむ絵本です。
壁面を階段状にジグザグさせ、片面に絵を、もう片面に文が展示され、「の」という一字が連なる世界観を体現したようなしつらえです。
junaidaのイラストとブックデザイン
その他、junaidaがイラストを手掛けた装丁の書籍展示もあり、イラストレーションそのものと、それをブックカバーに落とし込む際のフォントや箔押しの効かせ方両方を見比べるのに夢中になってしまいました。最近InDesignやIllustrationに苦戦しつつZINEの表紙を作っている素人としてはプロのブックデザイナーの手腕に見とれてしまいます……。
特に金の箔押しが格好良かったのが長野まゆみ『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』(河出書房新社, 2018.)。これは実物を見てしまうと絶対電子書籍版ではなくて紙版が欲しくなってしまう……。
junaida展「IMAGINARIUM」は、「宮殿のような空間」でjunaida作品にこころゆくまで没入し、絵の中をいつまでも探検できるような展示です。
年明け、2023/1/15(日)まで東京・立川のPLAY! MUSEUMにて開催。
会場は全点撮影可能(フラッシュ使用・動画撮影は禁止)。日付指定券をオンラインで購入可能ですが当日券も販売しています。年末年始のご予定にぜひ。