「大蒔絵展——漆と金の千年物語」@三井記念美術館
三井記念美術館「大蒔絵展」、会期ぎりぎりに駆け込んできました。
異素材と競演する素材、漆
この展示の凄いところはタイトルにまったく誇張がない点です。
平安時代から現代の人間国宝たちの作例に至るまでの蒔絵作品を一気通貫で観ることのできる、まさに「大」蒔絵展であり「千年物語」。
漆芸展はよく訪れるのですが、一度に漆芸史を辿れる展示ははじめてです。しかも、三井記念美術館・MOA美術館・徳川美術館の3館共同開催のためか国宝・重文ぞろいの名品たち。質・量ともにすごいエネルギーです。
名品ぞろいすぎて印象に残った作品は枚挙にいとまがなくってキリがないのですが、個人的には螺鈿作品に感銘を受けました。
螺鈿とは、文様の形に切り抜いた貝を表面に貼る技法のこと。複雑に反射する貝と漆、双方の輝きが際立つ美しい表現です。
その螺鈿技法を使った国宝「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」(鎌倉時代[13世紀]、サントリー美術館蔵)がこちら。
全面に金粉が蒔かれた表面に、螺鈿で円型の文様が約115個(!)描かれています。
箱の内側から発光しているかのような螺鈿の輝きは、さながらステンドグラスのようです。見る角度を変える度、薄紅色から若草色の美しいグラデーションへと変化していくので見飽きずずっと見てしまいます。
展示室で見た時は、丸く切った螺鈿の上に筆で細かい模様を描いているのかなと思っていました。しかし実際は、細かく切り抜いた螺鈿4種13個のパーツを組み合わせて1つの文様を作っているとのこと。なんたる繊細かつ膨大な量の仕事……
比較的時代の下った作品では、柴田是真・三浦乾也「夕顔蒔絵板戸」(江戸時代(19世紀)、根津美術館)も、花弁に使われた螺鈿とひょうたん部分の深緑色の陶板の取り合わせが非常に美しい作品でした。
螺鈿に陶板、あるいは珊瑚や卵の殻など、塗料だけではなく接着剤としての役目も果たす漆は様々な素材と「競演」する不思議な工芸です。そんな漆の魅力に酔いしれられる「大蒔絵展」、東京・三井記念美術館での展示は11/13(日)までと、この土日がラストチャンスです。事前予約不要なので、週末の予定が空いている方はぜひ!
昭和モダンな内装も見どころ
三井記念美術館は1929年築のどっしりとしたアメリカ風新古典主義の洋風建築・三井本館内に位置しています。エレベーターや一部展示室の内装も当時のものなのか、優美な装飾があしらわれた木製の壁がとても美しいです。
飾られている作品はもちろんですが、重厚な洋館の雰囲気にひたりたい方にもおすすめです。
今年の展覧会は漆芸尽くし
「大蒔絵展」と相互割引キャンペーンをおこなっている永青文庫(「永青文庫漆芸コレクション かがやきの名品」展開催中)も旧細川侯爵邸の建築を活かしたつくりなので、併せて訪れると楽しそう。こちらは12月11日なので、近いうちに必ず行きたい……!!
参考文献:
『大蒔絵展ー漆と金の千年物語』(図録), 朝日出版社, 2022.
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