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答えられたら天才? もしくはバカ?『ナンデモ研究家のカンデモ博士』他/クイズのはなし②

以前、僕の7歳の息子が発掘した「オバケのQ太郎」のマイナーキャラクター、発明王エジサンをご紹介した(しかも全三回で!)。この時の記事で触れようか一瞬迷ったキャラクターがいて、それが本稿で取り上げるナンデモ研究家のカンデモ博士である。

エジサンは自力で動けるロボットを作れるくらいの発明家だが、ろくでもない発明も多く、基本的に貧乏の苦労人だった。なので、基本的に性格は悪くなくQちゃんたちとも打ち解けていた。

一方で、本作のカンデモ博士は、その点、何か怪しい空気を漂わせている。よって、エジサンと同じような発明家のキャラクターであったが、敢えて一緒の記事で紹介しなかったのである。

ちなみにエジサンの記事は以下。


「オバケのQ太郎」『ナンデモ研究家のカンデモ博士』
「小学二年生」1965年11月号/大全集7巻

本作はあまり性格のヨロシクないカンデモ博士のお話である。そんなお話を、なぜ本稿のテーマとなっている「クイズ」の作品として取り上げたかというと、作中で博士がQ太郎に知能テストを出すのだが、これが相当な意地悪クイズばかりなのだ。

前回のドラえもんの「クイズ」作品の記事では、知能レベルの高い科学的な未来クイズが登場した。こちらはSF作家藤子F先生の本領発揮と言った作品であった。

本作に登場するクイズは、高尚とは全く正反対の、バカバカしいクイズばかりだが、こちらもまた藤子先生らしい問題だと言える。高尚なクイズ=SF作家の顔だとすると、バカバカしいクイズは一級のコメディ作家としての顔を見せているのである

同じ「クイズ」をテーマにしても、まるで違う問題・答えを描いていくところに、藤子先生の作家としての幅を感じさせるというわけなのだ。


さて、中身をざっと見ていこう。

冒頭早々、Q太郎は「誰かが僕を狙っている」と言い出し、正ちゃんを掴んで飛び上がると、間一髪手裏剣が飛んでくる。忍者でも襲ってきたかと思いきや、現れたのは禿げ頭の男性で、Q太郎のことを試したのだという。

Qちゃんは「自分がすっかり有名人になったのか」と満更でも反応を見せるが、その男性は

「そのはげた頭、でっかい口。でぶちんなところなど有名だよ」

と、完全なる悪口を述べる。本人のハゲを棚に上げて。


この男は「ナンデモ研究家のカンデモ博士」と名乗る。オバケの研究をして、その成果を世界中に発表したいのだという。何だか怪しい申し出だが、世界中の人がQちゃんのことを知ると聞かされ、協力することに。

研究所に行くと、外装に絆創膏が貼ってあるようなボロっちい建物。博士はここで今までにも色々な研究をしてきたのだと胸を張る。その研究とは・・・

・原子爆弾の研究 → 危ないから止めた
・宇宙ロケットを制作中 → お金がないので先っぽだけ

というもの。つまりは、これまで大した成果を上げていないということだ。


さっそくオバケの研究開始。いきなりオバケのタブーとされる服の中身を見ようとするので、Qちゃんは嫌がって帰ろうとする。すると、中を見るのは諦めて、他のことを調べるという。

そこで始まったのはQ太郎への知能テストである。知能テストとは、頭の良さを調べるものだと聞いて、なぜか自信満々となるQちゃん。しかし、ここから出される問題は、知能とは全く無関係なのであった・・・。


ではここから問題を列挙するので、一応答えを予測いただきたい。まあ本作を読んでないと答えるのはかなり難しいが。。

第一問
向こうをイヌが走っています、それを見た人はネコだと言いました。なぜでしょう。

第二問
ウサギとカメが競争しました。ウサギが勝った時、カメはなんと言いましたか。

第三問
木の枝に三羽の小鳥が止まっていました。鉄砲で一羽撃ったら、何羽残るか。

第四問
キャラメル十個とガムが八枚あった。それぞれ半分ずつ食べたら、いくつ残るでしょう。

さあ、難問ばかり・・・。

Q太郎の答えは下記(全部外れ)
第一問:わからない
第二問:「まいった」「くやしい」
第三問:鉄砲の音で逃げちゃって一羽も残らない

三問目は、これで普通は正解なのだが・・。四問目の答えは、色々あって割愛。

それでは解答コーナー。




答え
第一問:ネコだと言った人は近眼だった
第二問:カメは口をきかないので、何も言わなかった
第三問:耳の遠い一羽が残った
第四問:キャラメル五個とガム五枚とガムのかす五枚

一問でも正解していれば、東大に入れるだろう(嘘)

このインチキな知能テストの結果、「オバケはオバカである」と結論付けられる。当然不愉快な表情を浮かべるQちゃんであった。


この後は身体的なテストが実施される。オバケがどんなに丈夫にできているか調べたいのだという。Qちゃんの体を目一杯ゴムのように伸ばす。暑さのテスト、続いて寒さのテスト。

テストの様子を見ている正ちゃんは、Qちゃんを気の毒に思い始め、テストを止めるよう博士に言うのだが、聞く耳を持たず、続けてQちゃんに犬をけしかける。

「残酷だ」と正ちゃんが訴えると、カンデモ博士はその真意を明らかにする。それは、博士の作っているロケットにオバケを乗せようというのである。宇宙には極寒・灼熱の世界が待っている。オバケならどうなっても平気だと言うのだ。

カンデモ博士は、ロケットが成功したら正ちゃんもオバケの持ち主として有名になれると、説得を試みるが、正ちゃんは男らしく反抗する。

「僕は持ち主じゃないよ。Qちゃんは品物じゃないんだ。僕の友だちだ」

と、博士に食ってかかり、そのまま二人はもみ合いとなる。何気ないシーンだが、正ちゃんとQちゃんの友情がさらりと描かれる名場面なのである。


正ちゃんは博士に対して劣勢になるのだが、それを見たQちゃんは、自分を掴まえていたマジックハンドを操作して、逆に博士を掴まえることに成功。博士の両腕を伸ばして、難を逃れ、Qちゃんたちの友情が深まるラストシーンを迎えるのであった。


さて、本作に登場したバカバカしいクイズたち。藤子先生はこれに手応えを感じていたようで、何とほぼ同じような問題を別の作品でも使っている。それが、「ウメ星デンカ」『宇宙クイズ』(「小学三年生」1969年10月号)である。

この作品は掲載当時に大流行していたテレビのクイズ番組をテーマとした内容で、全編非常に馬鹿らしくて楽しく読めるのだが、ここで登場するクイズを紹介しておこう。カンデモ博士の問題を知っていれば、答えられるものばかりである・・。

第一問
かたつむりが高さ3メートルの木から落っこちました。かたつむりはなんと言ったでしょう

第二問
チョコレートが三枚、キャラメルが二十個、ガムが五枚あります。これをみんな食べると、いくつ残る?

第三問
木の枝に、小鳥が三羽とまってます。一羽を鉄砲で撃ち落としました。残りは何羽?

答えはあえて書き出しませんが、あなたの頭に浮かんだ答えが正解です!


様々な切り口でF作品をご紹介してます。


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