見出し画像

遂にエジサンの過去が判明!(←どうでもいい)『タイムマシン』他/オバQ世界の発明王②

Qちゃん、正ちゃんが住む町の有名人。それが自称、エジソンと比肩する天才発明家のエジサンである。

え?知らない? ・・まあそうでしょうとも。

エジサンは、実は全部で6回ほど作中に登場しているのだが、オバケではなく、人間のキャラクターということもあり、その存在は余程の藤子マニアの間でも知られていない(多分)。

かく言う私も、全く気に留めていなかったのだが、「オバQ」にドはまりしている息子(7歳)が、エジサンというキャラクターがあちこちに出ていることに気がついて、教えてくれて、初めて意識したのである。


ということで、エジサンの記事が世の中に求められているとは思えないのだが、逆に言えば記事にするような人間は僕だけだろうから、ビュー数を無視して文章に書き残しておこうということにしたのである。

前稿ではエジサンの初登場回について、たっぷりと紹介した。どんなキャラクターかは、是非ご一読して確かめて欲しい。

本稿では、その後にエジサンが登場したお話を2本まとめてご紹介したい。


まずは、初登場から半年後、二度目の登場となった作品から。

『タイムマシン』「小学六年生」1965年11月号/大全集11巻

まず簡単にエジサンの基礎知識から。
町の発明家エジサン、本名は江地サンスケという。自動で動くロボットを作ったりしているので、才能はありそうだが、どうしようもない発明品も多く、どちらかと言えばインチキ臭がするタイプである。

日夜発明に取り組んでいるが、あまり結果が出せずに、貧乏暮らしを強いられている。前回では4日間ご飯を食べていなかったり、あらゆるツケ払いが滞っていた。


本作では、Qちゃんたちとエジサンが旧知の仲となった前提でお話が展開される。

冒頭で江戸から参ったという武士(のような人)を見つけた正ちゃんたち。なぜかエジサンという博士の家のたどり着き、町の見物に出たところ迷子になったという。

エジサンの家ならよく知っているということで、Qちゃんたちが連れて行く。エジサンに「なぜ昔の人がいるのか」と聞くと、秘密だと言う。しかし「秘密だが特別にQちゃんたちには教えてくれる」と、何だか押しつけがましい。

で、その秘密というのは、何とタイムマシンを作ったのだと、エジサンは胸を張る。これが本当なら世紀の大発明だが・・・。すったもんだあって、正ちゃんQちゃんは武士と一緒にタイムマシンに乗り込んで、江戸へとタイムスリップする。


ばかに揺れるタイムマシンに乗っていると、「着いた。出てよろしい」とアナウンスが流れる。外へ出ると、江戸の町を一望できる丘の上。「本当だ」と驚いた正ちゃんたちが町へ向かおうとすると、武士に「それは困る」となぜか拒否られる。

するとそこに犬が出てきて、武士が「犬をいじめると江戸では死刑だ」と脅してくるので、そのまま現代に帰るQちゃんたち。戻ると、エジサンはタイムマシンを大勢の人に宣伝して欲しそうにしつつ、正ちゃんたちを見送る。

エジサンの家を出ると、先ほど江戸時代で見かけた犬とそっくりな犬が歩いている。江戸で見た犬はこのご先祖なのか? 何だかどうにもすっきりしない。


正ちゃんたちはエジサンの家へと逆戻り。エジサンは周囲に宣伝してくれることを期待していたようだが、正ちゃんたちは、その前にもっとテストを重ねたいと要望する。次の行き先希望は戦国時代である。

それを聞いたエジサン。「ちょっと待ってくれ」と言って一人外に出ると、先ほどの武士だった男が、現代の格好で弁当を食べている。それはまるで、出番が終わったエキストラの様である。

そしてエジサンは「(正ちゃんたちが)疑い深い」と愚痴りながら、戦国時代のセットを作り出す。ここで、ほぼエジサンの狙いが見えてくる。インチキタイムマシンを本物だと正ちゃんたちに信じてもらい、それを宣伝してもらって、一花咲かせようということなのだ。


その後は、戦国時代→平安時代→神話時代などをタイムマシンでパッパッパッと巡り、石器時代に到着。各時代では、エジサンと彼に雇われたエキストラの二人で、コスプレしてその時代の人物を演じている。

ところが、石器時代ではエキストラの男が「イップクシタイ」と言い出して、思わずライターでタバコに火を点けてしまい、ここでインチキとバレてしまう。


さて、何でこんなインチキをエジサンはしたのか。エジサンの意外な子供時代も紹介しながら、事情が語られる。

・近頃仕事がうまくいかず、ロクな発明もできなくて落ちぶれるばかり
・昔は大金持ちの息子でみんなに大事にされた
・「昔は良かった、昔に帰りたい」と思っているうちにタイムマシンのインイキを思いついた

エジサンの意外なる過去。それは金持ちのボンボンだったという事実である。お金に余裕があったからこそ、子供の頃から発明に没頭できていたのかもしれない。

正ちゃんたちは、昔を懐かしむばかりのエジサンに、「昔の夢を追っても仕方がない」と諭す。そこでエジサンは気を取り直し、

「インチキはインチキだ。今度こそ真面目な研究を続けるよ」

と決意を固めるのであった。



真面目な発明を続けると宣言したエジサン。その後はどうなったのか。続けて本作から3ヶ月後にその姿が描かれる。

『発明家エジサン』「小学三年生」1966年2月号付録/大全集8巻 

珍しくおやつのシュークリームが余ったので、正ちゃんQちゃんは、いつもお腹を空かせているエジサンにお裾分けしようと、家へと向かう。すっかり二人の中では、エジサンはロクな発明をしない貧乏発明家という認識のようだ。

エジサンの家ではロボットが出迎えてくれるが、エジサンはいないという。が、すぐに「いるいる」と言ってエジサンが顔を出す。ロボットには、基本的にエジサンはいないと言えと居留守を命じているようである。

居留守の目的は、溜まっている家賃の徴収から逃れるため。溜めすぎて、大家さんに追い出されそうなのだとか。

そこへ大家が訪ねてくる。ロボットが対応し、「シュークリームを持っているならいるよ」と居留守をバラしてしまう。先ほどのQちゃんたちのお出迎えの時に、AI学習してしまったようである。


結局、なんやかんやあって、家を追い出されてしまうエジサン。人の家を借りるから追い出されるので、自分の家を建てればいいと言い出す。それができれば話が早いのだが、ともかくもここからは、ドタバタの持ち家騒動が展開されていく。


まず、狭い土地に大きな家を建てるべく、縦に伸びている家を設計し、ロボットにあっという間に作らせる。しかし三階まで登ると、バランスが崩れて家も倒れてしまう。

次に高くすれば倒れるので、今度は地下に作ろうということになる。またしてもロボットがあっという間に穴を掘り進めて、地下三階の建物が完成。しかし水がしみ出してきて、すぐに住めなくなる。

その後も、入り口で家に入る人をローラーで薄っぺらにする家だとか、コマのように回転させる家だとか、壁を磁石にして壁や天井にも住めるようにする家だとか、滅茶苦茶な狭小住宅を作っていくが、どれもダメ。

最終的にはドラム缶を集めてイカダを作り、水上で暮らす家を作る(考案は正ちゃん)。しかしドラム缶に穴が開いており、沈んでしまう。


ということで、エジサンの新築計画は全て頓挫したかと思いきや、めげないエジサンはカタツムリの殻のような家を背負って、家と一緒に動くスタイル考案する。デンデン虫スタイルの家だと、満足そうなエジサンなのであった。


さて、本稿ではエジサンがメインとなるお話2作紹介した。前回と合わせてこれで3本紹介済みとなるが、実はまだまだ作中に登場している。

本作以降で登場するお話が3本、さらにエジサンそっくりだが、若干外見の異なる発明家が登場するお話が1本、そして別の藤子作品にもゲスト出演を果たしている作品が1本ある。

次項ではこれら5作品を一挙紹介して、エジサンのシリーズ最終回としたい。



「オバQ」研究やっています。


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

マンガ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?