見出し画像

しずちゃんを島で独り占め!『ロビンソン・クルーソーセット』/藤子Fのロビンソン漂流記④

藤子先生が影響を受けたとされる冒険小説「ロビンソン漂流記」。それはそのまま藤子作品の中でも、登場人物たちはロビンソン・クルーソーの物語に影響を受けて、皆、自力で無人島で生きてみたい!と力強く決意する。

確かに原作を読むと、クルーソーの過酷な環境にも関わらず、冷静な判断や創意工夫によって困難を突破していく様は格好良く、少年たちが憧れる気持ちはよくわかる。(ただし中年は、もう憧れない・・ロビンソンは中年になっても冒険に再出発しているが・・)


これまで、パーマン、正ちゃんQちゃん、のび太の憧れ無人島生活のお話を見てきた。記事はこちら・・。

どの話も、憧れと現実には大きなギャップがあり、特にのび太などは雨が降っただけで萎えていた。


続けて本稿では、少し違った角度から無人島体験をしていくお話を見ていきたい。タイトルは、その名も・・

「ドラえもん」『ロビンソンクルーソーセット』
「小学四年生」1983年5月号/大全集13巻

これまで見てきた作品は、ロビンソン・クルーソーに憧れて無人島に出発したり、漂流ごっこをするお話だった。本作では少し動機が異なる

のび太は冒頭でしずちゃんとバドミントンをして遊んでいるのだが、下手くそなので全くラリーが続かない。途中で現れたジャイアンとスネ夫にラケットを取られて、のび太は傍観者に。


のび太は家に戻りドラえもんに悩みを相談する。しずちゃんと二人きりでもっと遊びたい、無人島にでも行きたいという、突飛な内容だ。これを聞いてドラえもんはピッタリの道具があると言って、「ロビンソンクルーソーセット」というストレートな名前の小さな樽を出す。

これは、漂流ごっこのスリルを味わうためのレジャー用品で、ボタンを押すと霧が流れ出し、そこをくぐると本物の無人島に連れて行ってくれるのだという。そして、樽の中には生活に必要なものが詰まっているらしい。


のび太は、無人島でしずちゃんと二人っきりになり、頼られる姿を想像してニヤつく。するとドラえもんは、「でも貸すのは危ないから止めよう」と心変わり。どんなにいい道具でものび太の手にかかると、トラブル発生がつきものだからだ。

・・・そしてこの悪い予感は、もちろん的中することになるのだが、それはどのタイミングとなるのだろうか?


のび太はしずちゃんに公園の池のボートに誘う。突然の誘いに訝しがるしずちゃんだったが、そこでのび太は、「ロビンソンクルーソーセット」のスイッチをオン。霧が立ち込めて、さすがのしずちゃんも怖がり出す。

自分が漕ぐと言って漕ぎ手を代わるのだが、霧が晴れるとそこは海の上。「どうしてこんなとこへ連れてきたの?」と涙ぐむしずちゃんに、のび太は「ボートを漕いだのは君だよ」と冷たく反論する。


すると少し離れた場所に陸地が見える。たどり着くと、のび太は「本物の無人島だ」と言って喜ぶが、しずちゃんは「ママー!!」と本格的に泣き出してしまう。

のび太は「安心しなさい、僕がついてる」とイケメン発言だが、しずちゃんは「だから心配なのよ」と、至極もっともなお返事。相手がのび太なら誰でもそう思うはずだ。。


のび太は、「どんな道具を使ってもロクな目に遭わない」というドラえもんの発言を思い出し心配になるが、「ロビンソンクルーソーセット」を片手に、せっかくしずちゃんと二人きりになれたので、なにくそやるぞと決意を固める。


さてここからはお馴染み、無人島漂流における基本ステップが踏まれていく。前回の記事でも紹介したが、具体的に
①食料
②住居
③衣類
④水

である。今回も順番は違えど、これに沿った動きとなる。

STEP①住居
「ロビンソンクルーソーセット」から取り出したのは、「マイハウスガス」。これを木にかけると、軽く柔らかくなり、しかも頑強な家を建てることができる。

のび太はあっと言う間に一軒建て、しずちゃんは驚くのだが、信用のないのび太の作ったものなので、「風が吹いたら潰れそう」と言って、家に入ろうとはしてくれない。


STEP②衣類
無人島あるあるの突然のスコールが降ってくる。びしょ濡れになって、のび太の家に入ってくるしずちゃん。のび太は「着替えを探してくる」と言って外へ飛び出し、「キモノン液」という、木の葉を布みたいに変質させる薬を使って、服の形をした葉っぱを作り出す。

全稿で紹介した『のび太漂流記』でも、同じような葉っぱの服をのび太は見つけている。


STEP③食料
雨が止んだので、次は食料探し。しずちゃんはのび太が取ってきた葉っぱの服を着て、のび太から少し遠巻きについてくる。のび太は少しずつ自分が頼りにされつつあることを感じる。

少し歩くと、木の実はたくさん成っているが、どれが食べられるかわからない。そこで次に出した道具は「食べ物さがしめがね」。食用可能なものだけが見える便利グッズである。

これを掛けて、食べられる実をしずちゃんに指示していくと、「良く知っているのねえ」と感心されるのび太。続けて自分は魚を採ってくると言って一人海に行き、「魚型かまぼこのもと」を水中にばら撒く。

すると本物の魚みたいに変化するので、これを焼いて食べることに。かまぼこなので、骨が無く食べやすいという余計なゴミを出さないレジャー仕様である。


一連の無人島漂流ステップを難なくなり遂げたのび太に、遂にしずちゃんは心を開く。

「のび太さん・・・。のび太さんて、いざとなるととっても頼りになるのね」

のび太が夢見たセリフである。

暗くなった海岸で肩を並べて座るのび太としずちゃん。のび太は幸せを感じ、いつまでもこうしていたいと考えるが、ボロが出ないうちに引き上げた方がいいと、良い判断を下す。大体調子に乗ってやり過ぎると、痛い目に遭うのが関の山だからだ。


「ロビンソンクルーソーセット」のスイッチを押すと、再び霧が立ち込める。これで帰れるぞとなり、ボートで海上へと漕ぎ出す二人。のび太はそろそろいつものように思いがけない災難があるのではとビクビクするが、何事もなく、最初の公園へと戻ってくる。

無事に帰還できたことに大喜びののび太。「ドラえもんはバカにするけど、何も失敗しなかったぞ」と、興奮冷めやらぬ様子である。


・・・しかし、災難はこの後
無人島生活は何とか突破したが、貸しボートの超過料金が発生して、のび太のママがカンカンとなるのであった・・。



ハードな漂流生活に憧れるのは良いが、実際の漂流は危険や困難がいっぱい。そうであるならば、レジャー仕様の「ロビンソンクルーソーセット」は、何と持ってこいの道具であろうか。

手ぶらで行けるキャンプコテージみたいな感じなんでしょうかね。


「ドラえもん」の考察をやっています!


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

マンガ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?