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パーマンも憧れる(そして挫折する)『無人島で暮らそう』/藤子Fのロビンソン漂流記② 

藤子先生が子供の頃から好きだった冒険小説「ロビンソン漂流記」。流れ着いた無人島で一人自力で生活をしていく超有名な物語だが、なぜこの小説が子供たちの心を掴むのか?

一応簡単に「ロビンソン・クルーソー」のあらすじと魅力ついても触れているので、前回の記事をご覧ください。


大人になった身からすると、たった一人で無人島に漂着してサバイブするのは絶対に嫌なわけだが、子供からすると奥底にしまってあった野生心が騒ぐのか、憧れを抱いたりするようである。

特に本作のようなスーパーヒーロー、パーマンであれば、そのスーパーパワーを使って、自力で生活してみたいと思ってしまうのものなのかもしれない。


「パーマン」『無人島で暮らそう』
「小学三年生」1967年7月号/大全集3巻

まず冒頭、みつ夫(パーマン)がパー子とブービーに、自分たちの生活がどんなに便利かを語る。

・スイッチを押せば電灯がつく
・蛇口をひねれば水が出る
・どこかへ行くには乗り物がある
・お腹が空けば食べ物を売っている

そこで、誰の力も借りずに暮らしてみたいとパーマンは言い出す。「パーマンならやれるよ、やってみよう」と、やはり頼りはスーパーパワーのようだ。


無人島に行こうということになり、パー子がお弁当を用意しようと言うのだが、それは島で現地調達をしなければとみつ夫。

ということで、船でも簡単にはたどり着けないような遠洋の無人島を見つけて、そこに居を構えることにする。

到着して、パーマンは何をして遊ぼうと、気楽な感じだが、しっかり者のパー子は「遊ぶ前に住むところと食べ物を用意しなくては」と提案する。

前回の記事では無人島ごっこに興じるQちゃん・正ちゃんが、食べ物・寝る所・着るものを準備しなくてはという展開だった。生活の基本は衣食住なのだ。


パーマンが家を建て、パー子は魚取り、ブービーは木の実探しという分担。パーマンは適当な木を倒して、ツタで結んで家を組み立てる。「パーマンは何でもできちゃう」と手応えを感じるパーマン。

食べ物探しから戻ってくる2号と3号。木の実は落ちてなく、魚は捕まえるのが残酷だと言って、手ぶらの二人。

パーマンが代わりに海に飛び込んで魚を捕獲しようとするが、不慣れなため全く捕まえられない。仕方なく、ワカメを採ってくるが、パー子たちには不評である。


喉が渇いたので、水探しをするが、島には川もなく、掘っても井戸も湧かず、当然海水も飲めない(パーマンは試してみるがなおさら喉が渇く・・・ってそんなことも知らないで無人島に来たのか!)。

雨が降ってくるのを待つしかないと、パーマンの作った家で一休みするのだが、もともと脆かったのか、パーマンの力が強すぎるのかわからないが、ブービーが柱を叩いただけで、家屋崩壊となってしまう。

さすがに嫌気が差して、パー子とブービーは帰ろうとするのだが、初志貫徹だと言って全員のマントを埋めて、少なくとも10日間は頑張ろうということになる。


そこへポツリと待望の雨。口を開いて雨を飲もうとするのだが、すぐに猛烈なスコールとなってしまい、びしょ濡れに。しばらくして雨が止むと、岩に書き置きが残されて、パー子とブービーは一足お先に帰ってしまったようである。

しかも埋めてあったパーマンのマントも持っていかれてしまい、10日後にマントを持って迎えにきてくれるという置き手紙も残されている。図らずも、パーマンが望んでいたたった一人の無人島生活が始まってしまうのだった。


さて、どこまでパーマンは頑張れるのか。

その夜、焚き木をしていると、背後の草むらがガサガサする。ドキーンとビクつくパーマンの前に、小さなトカゲがひょっこり姿を見せる。

パーマンは「怪獣が出たあ」と、大げさに驚いてその場から逃げ出す。簡単に心が折れて、島から脱出しようと海に出るが、マントがないので溺れてしまう。

と、そこへパー子とブービーが降りてきてパーマンを助ける。本当に頑張れるのかこっそり見ていたのだという。結局パーマンのたった一人での生活は5~6コマ分しかもたなかったようである。


「今日は面白かったまた来よう」とハイキングみたいな感想を残して、半日(?)の無人島生活は終了。

かなりな短期間の無人島滞在だったにも関わらず、家に帰ると、「懐かしいなあ」と感慨に耽り、スイッチを押して電灯を点けたり、蛇口をひねって水を出したっ放しにして喜ぶみつ夫なのであった。



憧れの無人島漂流生活。けれど実際にその立場となると、衣食住や水の確保がともかく大変。パーマンはすぐに挫折してしまったようだが、のび太だったらどうだろうか?

次回はのび太の漂流生活を検証する。



「パーマン」考察たくさんやっています。


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