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海と船

私が今溺れずに済んでいるのはあなたが大きな船だから。ただただ大きな船だから。

自分は何者なのか分からなくて、どの方向に進めば岸に辿り付けるのか分からなくて、私は暗く冷たく激しい巨大すぎる果てしない海を一人で出来る限り全速力で泳いできた。

波が落ち着いてる日には簡単に前に進めるし、朝日が昇って明るいうちはかろうじで前が見えるから一人でどんどん泳いでいける。

だけど、雨の日や風が強くて思うように前に進めない時や水が冷たすぎる時、私はいつもパニックになっていつもは泳げているのに最後には泳ぎ方すら忘れてただただ犬かきをするしかなくて、毎秒、息継ぎが難しくなって行って、もがいて、苦しんで。

私は今までこの大きな果てしない海を一人で泳ぎ渡ってきたから誰も周りにいない。助けなんて求められないし助けを求めるような人や物もこのただっ広い暗い海の真ん中じゃ見つからない。

このまま、流されてしまえばどれだけ楽なんだろう。真っ暗だし水は冷たいし、自分がどこにいるのか分からないけれど、このまま体力や気力を使わずにプカプカ浮き続けたらどれだけ楽なんだろう。

だけど、そんな時、いつでも私は諦めなかった。自分に何度も何度でも問い続ける。

「このまま海に流され溺れて行ってしまっていいのか。目指す岸にたどり着かなくてもいいのか。」そう聞くと、私はいつだって「これでいい訳ないじゃん」ってまたもがき始める。

この繰り返し。

ありったけの力で進んで、障害に戸惑って、自分は無力だと感じて、もうこんな事辞めてしまいたいって思って、自分と向き合って、問い続けて、そしていつも「このままじゃ終われない」って結論に至って、また踏ん張って前に少しでも進もうとする。

だれにも頼らない。頼れない。頼り方を知らない。


だけど、ある時本当にレスキューが必要になった。溺れるどころが瀕死状態。だけど自分でどうにかしなきゃいけない。もがく。泳ぐ。もがく。息が苦しい。意識が遠のきそうになる。

そんな時、最後の力を振り絞って大きくクロールをすると、指先に固いものがトンって当たった。それがあなただった。

私にはほとんど力が残っていなかった。だけどあなたはその力強い腕で海から私をひっぱり助け出してくれた。

引き上げられたのは船。大きくて驚くほどにどっしりとしていた。

「大丈夫か?寒くないか?温かいものでも飲むか?休むか?寝るか?」私を助けてくれたあなたはひっきりなしに私を心配してくれた。私は言った。「全然大丈夫じゃない。寒くて死んじゃいそう。温かい飲み物が今すぐ欲しい。疲れ切ってるから休みたい。フワフワのブランケットに包まれて寝たい。」

これが初めて私が人に頼った瞬間だった。

「ここにいれば大丈夫だから。」あなたはそう言って私に熱いコーヒーとフワフワのブランケットとあなたが着ていたジャケットをくれた。私は泣きたくなった。すっごく泣きたくなった。鼻の先がツンとする。

誰かの優しさに包まれた瞬間だった。

私は少し甘えさせてもらった。自分の体力と気力を使わなくても何もしなくても前に進んでくれる。運んでくれる。心地よかった。

だけど、今まで一人で頑張ってきた私は数日するとあなたに頼ったり甘えたりすることが申し訳なく思ってきた。だから勇気を振り絞って言った。「もう行くね。こんな素敵な船に長々と留まるのは申し訳ないから。」

あなたは困った顔をした。「ここがあなたの居場所だから。いつまでもいていいから。頼ってくれてもいいから。甘えてくれていいから。でも君が行きたいなら行けば良い。そしていつでもここに戻ってきたらいい。」あなたは低く穏やかな声でこう言ってくれた。

あたなは私にいつでも優しいのに、私はあなたに何をしてあげられるのだろうか。。。

結局あなたがそう言ってくれたにも関わらず私はまた海に戻ろうとしている。だけど、今回は一人でずんずん前に進む為に泳ぎたいとは思っていない。あなたが操縦する船の横で泳ぎたい。そして同じ岸に向かって行きたい。


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午前2時はやはり不思議な時間ですね。普段、早寝早起きロングスリーパーの私がこの時間に起きているのは珍しいのです。外の空気は本当に澄み切っていてシンとしているのに私の心はザワザワ。そんな時、急にペンを持って手帳に殴り書きをしました。そしたらこの「海と船」が自然とで出来て私は自分の感情を客観視する事が出来ました。

普段、自分の気持ちが複雑すぎて表現する言葉が見つからなくて苦しむ時が多いのですが、紙に書きだすと比喩を使ってでも自分の気持ちや状況を洗いだせる。こうやって気持ちって整えていくのか、と感じました。

自分ってなんとも難しい人間だなぁ。頼っていいよ、甘えていいよって言われているのに申し訳なくなって出来ない。でも助けて欲しい時もある。嘘。助けてほしいんじゃなくて「大丈夫」って言って欲しいだけかもしれないです。

出会った事が無かった感情なのでどうしても書き留めたくなりました。

読んでくださってありがとうございました。

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