「免許をもたない教育人材」への期待
昨今、各自治体で教員免許を持たない人材を教育現場に出迎えるような動きが加速しつつある。
教育現場の人材不足を解決する一つの策としてこのような採用方法を導入している自治体がほとんどだろう。「教員人気」がだだ下がりする今の状態が改善されない限り、この動きはさらに広がりを見せることが予想される。
教員免許を持たない人を採用ということで、、たしかに「教員の質」を懸念する声は理解できる。だが、その辺はちゃんと伸び代がありそうな人材を登用するだろうし、多様性のある人材を得るという意味では、画期的な取り組みではないだろうか。
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そもそもだが、「教える」という行為に対して特別な資格はいらないはずだ。
教員免許を持っているから教えるのが上手とは限らず、教員免許を持ってないから教えるのが下手くそとも限らない。この世の中には、教員免許を持っていなくても教えることに長けている人はたくさんいる。反対に、教員免許を持っているにもかかわらず、教えることが下手な人も一定数いるのだ。
むしろ、今回のニュースのように、社会一般から教員に向いていそうな優秀な人材を登用することで、教えることが得意で、かつ、社会人経験を持ち合わせたユニークな教員が生まれるのではないか。
そんな期待もできる。
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個人的には、子どもたちの目の前に立つ人ほど、さまざまな経験や学びをしてきてほしいと感じる。大学の4年間で「教えるプロ」になるのももちろんいいのだが、もっと教職以外の科目にも興味を持って学び、大学の外での経験を積み、他の教員にはない「個」や「深み」を持つ人が増えてもいいのではないだろうか。そういったその人自身の学びや経験からユニークな価値観が生まれ、面白い教育を展開できることもあるように思える。
そう考えると、大学4年間を通じた教員養成のシステムは「王道」ではあるものの、多種多様な教員を生み出すにはあまりにもモノトーンすぎるようにも感じられる。
まあたしかに教員の質を保つという意味では必要なシステムかもしれない。
しかしながら、もう少しユニークで、社会経験をたくさん得て、子どもたちに世界の様々な面を見せられるおもしろさがあってもいいと思うのだ。
なので、今回の「教員免許を持たない人材を教育現場に」という動きは、名目は教員不足の解消とはいえども、モノトーン化した教育という領域に一つ風穴を通してくれるだろう。
そんな期待をしている。
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とはいえ、そんなユーニク人材に対する現場の風当たりは強いのかもわからない。
はたして、教育現場は今回のこの新しい動きに、どれだけ寛容にいられるだろうか。
さまざまな期待はしつつも、学校現場が大学で教育を学んだ人しか働くことができないような「牙城」と化さないことを、心から祈るばかりである。
2023.10.22
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