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2021.02.20 indigo la End「夜警」@福岡市民会館・マチネ

indigo la End ONEMAN TOUR 2020-2021「夜警」と題されている通り、年またぎで開催されているライブツアー。1月公演が中止になるなど、紆余曲折を経て先週の静岡公演から再開された。この日はなんといっても6thアルバム『夜行秘密』がリリースされてから初の有観客公演ということで、ツアー的にも第2部開幕的な意味合いもあるのでは?という期待を胸に向かった。個人的には初めてホールで観るインディゴ。常々、このバンドは座席指定で観るべきだろうという思いもあったので鑑賞環境としても絶好の機会だった。

スーツに身を包んだメンバーと、ドレッシーな女性サポートメンバーを加えた6人編成でのライブ。1曲目は「夜風とハヤブサ」、じっくりと踊らせてくるファンクネスと、美しいコーラスワークがスリリングに絡まる1曲。この独特の緊張感はインディゴならでは。続いて川谷絵音(Vo/Gt)がギターを持ち、2017年のアルバム『Crying End Roll』から「想いきり」。うってかわっての清廉な疾走感に観客も手を挙げるが、結果としてこの日披露された楽曲の中で唯一のギターロック。変化を続けるインディゴの孤高さを思い知った。

後々調べて分かったが、やはりこの日からセットリストはアルバムツアー用に変更されており、1曲目である「夜行」は初披露。タイトなアンサンブルがダンスを誘った後、昨年夏のナンバー「夜漁り」へ。インディゴが元より得意としていた夜のモチーフだが『夜行秘密』のタイトル通り、本作はとりわけ夜のみに交わされる蠱惑的な魔法が色濃く出ているように思う。その危うい匂いを引き連れ、2016年の『藍色ミュージック』より「藍色好きさ」、新作より「たまゆら」を立て続けにプレイ。マチネなのにすっかり夜の心地。

MCこそ、久々に飛行機に乗った話をゆるゆると展開させるのだがそれ以外は常に緊迫したムード。「左恋」では後鳥亮介(Ba)の骨太なベースラインが荒々しさを生み、長田カーティス(Gt)の柔らかなギターフレーズがまどろみを生む「チューリップ」など、心をスッと冷やしていくような楽曲が並ぶ。『夜行秘密』はかつてなく多彩な楽曲が揃ったアルバムだが、その中でもスピッツ直系なアルペジオとアコギストロークが眩しい「夜光虫」の存在感はライブでもハイライト。川谷の歌声はますます透明度を増していると思う。

アルバム屈指のスイートメロウ「フラれてみたんだよ」から、ヒットナンバー「夏夜のマジック」でずぶずぶと音の波にのまれていくような心地に。すっかりほぐれたなぁ、、なんて思ってると本編ラストの「晩生」がつんざいていったのもインディゴらしい。佐藤栄太郎(Dr)の強烈なドラミングを主体とした、ノイジーなインプロビゼーションで埋め尽くされ、さっきまでのチルなバンドはいずこへ、、となった。アンコール前のMCで、「晩生」の消費カロリーについて語りながら、しばしの休憩時間を貰えたのは良かった。

アンコールでは「通り恋」を披露した後、次曲までの間に川谷絵音から語られた言葉が印象的だった。川谷はあらゆるスキャンダラスな出来事や非難された経験をも音楽としてきた根っからの音楽家だと思っていたのだが、それを「音楽への逃げ」と捉え始めた、、という話。自身の内情を込めた楽曲をステージで披露することへの迷いも吐露し始めており、異様な空気が漂っていた。「この曲をここでやるのを良いと思っていない」「どう捉えてもらっても構わない」と語って始まったのは、5年前に作ったという「夜の恋は」。

ちょうど5年前のあの話はとっくに終わったこととして聴き手としても考えていたのだが今ここでその話を敢えて持ち出すとは、、と驚くばかり。こちらが触れないでおいたことも、彼の中にはやはりどうしたって息づいてきたのだ。「藍色好きさ」や「通り恋」といった、色濃く川谷のプライベートを反映した楽曲が多く並んだセットリストは、そんな「音楽への逃げ」としての楽曲をこのツアーで埋葬する意味もあったのだろうか。「ファイナルで何を喋っているかは分からない」と本人も語っていた通り、何かが彼の中で変わろうとしているのは間違いない。ここにきて表現者としての転換期に立ち始めた川谷絵音。その写し鏡であるindigo la Endはこれからどんな夜を描く?

<setlist>
1.夜風とハヤブサ
2.想いきり
3.夜行
4.夜漁り
5.藍色好きさ
6.たまゆら
7.左恋
8.チューリップ
9.夜光虫
10.フラれてみたんだよ
11.夏夜のマジック
12.晩生
-encore-
13.通り恋
14.夜の恋は


※MCで言及していた、「晩生」で"叩かれるスネアだけが映るカット"めちゃ面白かった。佐藤さんが立ってぶっ叩く姿は是非とも現場でご覧ください。


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