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オンラインで演劇を観た⑨(ダウ90000「いちおう捨てるけどとっておく」/ケラリーノ・サンドロヴィッチ「世界は笑う」)


ダウ90000 第4回演劇公演『いちおう捨てるけどとっておく』

「ABCお笑いグランプリ」決勝進出やフジテレビでの冠ドラマ、更に「エルピス」のスピンオフと怒涛のごとく躍進し続ける若手劇団の演劇公演。大学受験の学習塾を舞台とした物語。最初はいつも通り、どういう話なのか掴めない小気味いい会話の応酬(ルビサファ、ってやってた人しか言わない略称って感じで身体性があってイイ)でにこにこ笑っていたし、今までにないシンプルな不審者のキャラクターなど今までにない関係性の話だな、、と思っていたが女性メンバー4人になってから急速にこの作品の焦点が絞られていった。

https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2234683&rlsCd=001

物語の中核にあるのは「何でどう喧嘩するのか」。互いの譲らなさと、どうにもならないことに触れられた時のあの何とも言えない冷たい気分、そして距離を取るということの暴力性など、コミュニケーションの狭くも身近な部分を見事に切り出してあった。特に道上珠紀と中島百依子のヒリヒリとしたやり取りの全てはうなだれながら観るほかなかった。こういう圧迫感のある不快感を得て、ラストはまさかの大喜利的アプローチで結末へと向かっていく。成り立ちも構成もかなり意欲的。蓮見翔、こんなのも書けるのか!



COCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS「世界は笑う」

ケラリーノ・サンドロヴィッチがBunkamuraでの上演のために書き下ろした5年ぶりの新作。昭和30年代の新宿を舞台とした作品で、戦後10年経った日本に“喜劇”でのしあがろうとする人々を描く。てっきり人情モノかと思ったら、そこはケラさんで、どちらかと言えばその欲深さとか意地汚さのほうにも目を向けてどこかヒリヒリとした質感も漂っている。笑いを求めることって全然ほっこりした温かいもんじゃなく、鬼気迫る生業なのだということを突きつけられる。そんな中、犬山イヌコとラサール石井はずっと癒しだった。

セットもぐるぐる切り替わり、時代の移ろいとそれぞれのキャラクターの変化がほろ苦く描かれていき、ケラさん特有のシュールさや奇妙な会話などなく進行していく。その分、真正面から笑いに生きることに向き合っているように見えたし、戦争が巻き起こっている現代において、笑いがもたらしてくれる力と限界と、いやそれでも、と思わせる希望とがないまぜになる様がとても胸に残った。今巻き起こっているお笑いブームとは違う話なのかもしれないけれど、この先人たちの信念は今なおこの国には息づいてると思うと熱くなる。





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