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2021.01.29 ストレイテナー Applause TOUR@福岡DRUM LOGOSで惚れちまうだろ

ストレイテナー、1年ぶりの全国ツアー。DRUM LOGOSは普段の1/3くらいの集客。それでも椅子が並べられ間隔の空いた席という会場は地方では滅多に観れない"ホールでのストレイテナー"的な雰囲気があって開演前からワクワクしていた。SEの「STNR Rock and Roll」で一気に士気が上がる。2019年は3回観たバンドを2020年に全く見ていないと渇望感が違いすぎる。1曲目「叫ぶ星」はオンラインでの披露でも聴いていたけど、生で聴くとダイレクトに感慨が心を突き上げていく。『TITLE』再現でもプレイされていた4ピース「REBIRTH」もまさに今、ここから蘇っていくイメージが湧いて昂ぶりが止まらない。<そして夜明けを訪れる>というサビでそれまでの不穏さが一気に解き放たれる「クラッシュ」もそう。今聴きたいテナーばかりである。

ホリエアツシ(Vo/Gt/P`f)の「俺たちストレイテナーって言います」の挨拶も久々だし、その後の「Graffiti」の祝祭感がこの場を温めていく。そのままダンスを止めさせない「DISCOGRAPHY(DECADE DISCO MIX)」の絶頂感たるや。フィードバックノイズの中、ナカヤマシンペイ(Dr)が椅子に立ってクラップを煽ればそりゃ「Melodic Storm」なのだが、このお馴染みの導入でもかなり涙ぐんでしまったし、やっぱり15年以上聴いてきたバンドの定番曲をライブで聴く喜びは凄まじいものがある。ここからライブが再始動していくバンドたちの定番曲にも思いを馳せてしまった。MCでも相変わらずのゆるいトークだったのも嬉しかった。CAさんのマスク越しの笑顔にときめいた話を聞いていると、こういう状況もエピソードの糧になっていることが頼もしい。

「吉祥寺」の穏やかな日常感を一気にひっくり返す「DONKEY BOOGIE DODO」のイントロが個人的にこの日1番の驚きポイント。この曲順凄い。日向秀和(Ba)のベースさばきはファンキーかつどこまでも破壊的。華やかすぎてクラクラしてしまった。そんなグルーヴを引き継ぎながら、ホリエアツシが鍵盤を弾く「Parody」へ。妖しさと軽やかさを兼ね備えた不思議な楽曲。そのまま、『Applause』のポップスサイド「さよならだけがおしえてくれた」にナチュラルに続くのも心地よい。ここから『Applause』の楽曲が集中するブロック。ダンサンブルな「倍音と体温」がじわじわと体を揺らし、「Dry Flower」もスイングするリズムでどこか冷たい世界を生み出した。

うねるように曲が展開していく「Maestro」はストレイテナーのあらゆる側面が集約されたような、さらりと演奏するにはあまりにも複雑な曲だがこれもあくまで自然な佇まいでプレイ。22年の歴史がこの在り方を肯定している。その後、アルバムでもひときわ攻撃的な「Death Game」が熱を巻き起こす。正直、新曲が盛り上がることってそうそうないはずだけど、これと次の「ガラクタの楽団」は新鮮な熱狂が発声していて痛快だった。コロナ禍を強く反映し、サウンドだけでなく言葉も鋭利。テナーをロックバンドたらしめるのはこういう部分がライブで起爆力を持つ点だろう。「From Noon Till Down」までひと時も緩まない鮮烈な中盤だった。一方でその後のMCは曲順を間違えそうになる時のあるあるトークに終始していたのも面白かった。

クリスマスソング「No Cut」の丁寧なアンサンブルが終盤を薫らせる。晴れやかな約束の歌「スパイラル」が2019年までとは違った意味合いを持って輝き、近年の代表曲「シーグラス」では次の夏に待つ海を思い出させてくれる。シリアスかつヘヴィな祈りを持つ「Our Land」を序曲のように、「羊の群れは丘を登る」が奏でられる。<悲しみに埋もれた世界に別れを告げるんだ>という言葉はどうしたって今に刺さる。これまでホリエの綴ってきた歌詞は"幻想としての退廃した世界"が多かったように思えるがそれが現実的なものとして捉えられてしまうことは非常に恐ろしい事態。しかし故に、ストレイテナーの音楽は北極星のように目印として存在してくれている。黙示録としても聴けるテナーだが、決して突き放すことのない先導者のようだ。

本編ラストはアルバム同様に「混ぜれば黒になる絵具」。亡きミュージシャンの歌をカーラジオから聴くというシチュエーションに2020年が刻まれている。ただ、<All Right>という歌詞に終わり、長く沁み入るようなフレージングが刻まれていくこの曲には彼らなりの哀悼や慈しみが溢れているよう。アンコールで鳴らされた「覚星」が<物語の結末を超えて旅を続けよう>なのだから勇気もでる。MCでは大山純(Gt)がCAに惚れてまいそうになった話で締めるなど、ゆるいところはゆるいおじさんたちなのだが、音が鳴れば幾らでもその場所を塗り替えてしまえる。その姿にはただただ惚れちまうだろ、という話だ。最後は古より伝わりしアンセム「ROCKSTEADY」が高らかに鳴り響いておしまい。また必ず戻ってきたいと思える偉大なライブだった。

<setlist>
1.叫ぶ星
2.REBIRTH
3.クラッシュ
4.Graffiti
5.DISCOGRAPHY(DECADE DISCO MIX)
6.Melodic Storm
-MC-
7.吉祥寺
8.DONKEY BOOGIE DODO
9.Parody
10.さよならだけがおしえてくれた
11.倍音と体温
12.Dry Flower
13.Maestro
14.Death Game
15.ガラクタの楽団
16.From Noon Till Dawn
-MC-
17.No Cut
18.スパイラル
19.シーグラス
20.Our Land
21.羊の群れは丘を登る
22.混ぜれば黒になる絵具
-encore-
23.覚星
24.ROCKSTEADY


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