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スタバのキッシュが死ぬほどうまい(2024年4月の日記)

 2024年4月の日記です。皆さまいかがお過ごしでしたでしょうか。

 そろそろ、この日記をしっかり書いていこうと思います。今まで1行だけとかで済ましていた日もあったけど、もうそういうのなし。ちゃんと毎日2行以上書きます。がんばります。今月は、まるまる休職していた1ヶ月でした。周りが働いている中で罪悪感もありますが、よく考えたら学生の頃って年に2回も2か月くらい休んでいましたよね。ほんと、休みすぎ。いや、社会人が働きすぎなのか。大学生のわたしは休みのありがたさがわかっていなかったなと、あれだけ休んだならもうちょっと学期中はがんばっとけよと、そんな風に思ったこともありました。もうなんの意味もない後悔ですけどね。

ヒトのアタタカサに触れたApril

2024/4/1 月

 何かの流れで今の体調や休職のことを地元の友人Yに話したところ、地元でご飯に行くことが決まった。嬉しいハッピー感謝感謝。

 定期的に会っている地元のイツメン3人組。わたし、Y、そしてK。中学生の頃、わたしは3人(プラスもう何人かいたが)で塾の帰り道に肩を並べてただただ駄弁ることが生きがいだった。塾でみっちり勉強した後なので、時刻は夕方を通り越してすっかり夜。1時間くらい話すこともあって、そんな日は家に帰るのが23時頃になった。それだけ楽しかった。あの頃の一番の楽しみだったかもしれない。少なくとも、めんどうな勉強を続けられたのはこの帰り道のおかげだと思う。——母親は心配していたが、このように勉強のために必要だと説明して納得してもらっていた。

 久々に集まる場所には、地元の小さなレストランが選ばれた(ハイセンスなKによる選出)。小さい頃からよく行っていた地元の公園。少し前にその公園の中にレストランができた。飲食店が少ない町なので、どんな店であれ新しくオープンするのはありがたい。しかも今まで地元になかったタイプのお店だったのでなおさらありがたいなとは思いつつ、立ち寄ったことはそれまで一度もなかった。

 店員に案内されて席につく。近況報告もそこそこに、わたしたちはほとんど中学時代の話をしていた。高校生の頃、大学生の頃、社会人になりたての頃、会うたび会うたび当時の話で盛り上がってきたのだが、なぜこんなにも話題が尽きないのだろう。いや、もしかしたらとっくの昔にネタは尽きていて、なのにもかかわらず、同じ話をスルメのようにしがみ続けているのかもしれない。

 地元のカップルが破局した話(ストーリーズで状況が全バレしていた)、Kの所属していた野球部がサッカーの練習ばかりしていた話(雨の日は馬飛びばかりしていた)、わたしたちが嫌っていた先生の話(特にわたしが嫌っていた)、Yに恋人ができた話(あ、これは近況報告だ)。わたしたちの目線もひねくれている気がするが、それにしても熟成すればするほど旨味が増す味わい深い話が多すぎた。

 きっと10年後も同じ話で盛り上がっているだろう。そんな気がしている。人生で、こんなに喜ばしいことは他にあまりないと思う。

2024/4/2 火

 心療内科に行ってきた。前回の診察からは少し日があいていた。今日は、傷病手当をもらうための書類を担当医に書いてもらう予定だった。心療内科では受付をしてから案内まで30分くらい待たされる。長い日は1時間以上待たされる。日本には、心療内科を必要としている人がたくさんいる。

 その日は30分待って名前(正確には診察券番号)を呼ばれ、再度受付に向かった。

わたし「傷病手当の記入をお願いしたいのですが。」
受付「かしこまりました。いつからいつまでですか?」
わたし「○月○日から、休職終了予定の○月○日までで。」
受付「えー、傷病手当は過去の日程分しか申請できないのですが……」
わたし「あっ……じゃあいいです……」

 こういった申請系はとにかく苦手だ。昔からこれだけは変わらない、変えることができない。苦手だったマヨネーズを食べられるようになっても、これだけは変わらない。あとで聞いた話だと、1ヶ月分ずつ傷病手当を申請していくような方法もあるらしい。稀代のめんどくさがりであるわたしには、とうてい不可能なテクニックだ。

2024/4/3 水

 梅田のカフェは、ほんとうに空いていない。平日であるにもかかわらず、ほんとうに空いていない。わたしのような暇な人間は案外たくさんいるのかもしれない。そう思ってしまうくらい、ほんとうに空いていない。

 大阪でこんな有様なのに、東京はいったいどうなっているのだろうか。ただのカフェチェーンに、テーマパークのキューラインぐらい人が溜まっているのかもしれない。その先にミッキーはいませんよ。

 ただのカフェに人が並んでいるようでは、その都市は都市として機能していないと聞いたことがある(何回"とし"って言うんだ)。東京だけでなく、梅田ももうおしまいになりかけている。

2024/4/4 木

 3月に見たダウ90000の単独ライブ『30000』の余韻がまだ残っている。配信チケットも買い、もう3周くらいは追加で見た。余韻どころか、まだ本韻の真っ最中なのかもしれない。

 最近では『30000』の配信を観るだけでは飽き足らず、noteやXで上げられている感想まで見漁るようになってしまった。好きなコンテンツの感想を見るのは好きだ。内容もさることながら、同じ好きを共有する同士が世界にはたくさんいるという事実に喜びを感じる。自分でも言うのもなんだが、お手本のようなファンだなぁと思った。

2024/4/5 金

 今日は4月入社の新入社員に向けた歓迎会があったらしい。そういえば少し前に後輩から誘われていた気がするが、完全に忘れていた。ほんとにごめん。申し訳ない。

 とはいえ、こんなニートが行ったとてである。とて、とて、とて、とて。目をきらんきらん輝かせて入ってくる新入社員に、こんな人生という道をさまよい歩くゾンビをお見せするわけにはいかない。

 いや、なんとか復活して歩き始めているだけゾンビの方がまだましだ。今のわたしをゾンビに喩えるのは、毎日が戦いのゾンビに失礼極まりない。

〈訂正〉
 目をきらんきらん輝かせて入ってくる新入社員に、こんな落ち武者をお見せするわけにはいかない。

 よし、これでいこう。落ち武者であれば罪悪感はない。かつてのわたしが武将のように奮闘していたことは、まぎれもない事実なのだから。

2024/4/6 土

 今日はオールスター感謝祭。まともに見たのはいつぶりだろうか。覚えているのは、赤坂5丁目ミニマラソンでワイナイナが活躍していた頃だから、案外けっこう前なのかもしれない(調べたところ、2015年がワイナイナが出演した最後の年らしい)。

 霜降り明星・粗品が総合優勝していた。準優勝はあのちゃんだった。案の定、カップル推しをしている人たちがX上で狂喜乱舞していた。

 推し活おいおいおいおい、と思った(いい意味だけではない、たぶん)。

2024/4/7 日

 赤、青、黒、白は特別な色だと思う。赤い、とか、青い、とか、形容詞になれるから。黄と茶は、色がつけば形容詞になれるから二軍だ。

 わたしが好きな緑は、どうしたって形容詞になれないからけっこう弱い。「信号だって緑が入っているのに!」と思ったけど、ことばにすると青だった。「光の三原色にだって緑が入っているのに!」と思ったけど、黄が入っている絵の具の三原色の方が一般的だった。青々しいなんで言葉を作るくらいなら、緑い、とか、緑色い、とか言えばいいのに。

 そりゃあVeganは生きづらいよね。知らんけど。

2024/4/8 月

 書いた文章を人に見せるのはいつまでたっても怖い。noteを見ず知らずの方に後悔するのも怖いが、それを知り合いに見られるのが一番怖い。書く人の知識、教養が出るし、なによりその人そのものが出る。ああ怖い。

 久々にマクドに行った。マックではなくマクド。食べ終えて、トレーを持って返却コーナーに行き、紙ごみを「Plastic」に捨ててプラスチックごみを「Paper」に捨てた。こういう時に、わたしは、生きるのが下手な人間であるという事実を思い出す。その前に……マクドまじごめん。

2024/4/9 火

 大学時代の友人Mと久々に会った。「ものは言いよう」という言葉がある。ほんとうは、Mは大学時代の元恋人の友人だった。

 今でもMと関係性が続いているのが奇跡だと思う。もしかしたら元恋人との関係を続けるより難しいかもしれない。しかも不思議なことに、元恋人との関係があった当時にはMとはそこまで関わりがなかった。

 Mには今現在恋人がいるし、そもそも元恋人の友人とどうこうなるなんて思ったこともない。ほんとうにない。そういった関係の異性の友人がいることは、わたしの生活にたしかな潤いを与えていると思う。

2024/4/10 水

 ラニーノーズのリアコファンによるnoteが話題となり、X上で大論争が巻き起こった今日この頃。いろいろ胸に溜まる思いがあり、わたしなりの考えを整理して投稿してみた。

 やんなくてよかったかもしれない。ありがたいことに「スキ」を押してくれる方がいたので記事は残しているが、わざわざ首を突っ込む必要はなかったかもしれない。

 この記事への「スキ」はスキなのだろうか。「キライ」がないから、止められないキライの衝動で指先が動き、結果的に「スキ」を押してしまっているのではないだろうか。だったらもはや残しておく理由もない気がしてきた(が、読んでもらえるのは嬉しいので載せちゃう)。

2024/4/11 木

 短歌を自分でも詠んでみようと思う。

 ものを書くのは好きだ、こんな日記を毎日書くくらいには。ただ悲しいことに、わたしには集中力が足りない。体力も足りない。タイピング力も足りない。つまり、長文に弱い。小学生の頃、将来は小説を書いてみたいと言っていた。中学生になって諦めた。この頃にはもう、わたしはわたしの不可能性と向き合っていた。

 短歌は31音しかない短い表現だからイージーだ、なんて思ったことはない。そんな甘いものではないと思う。ただ、わたしの性に合っているような気はしている。自信があるわけではない。わざわざこんなに保険をかけているところに、わたしの臆病さが表れ切っていると思う。

 なにはともあれ頑張ってみます。

2024/4/12 金

 過去の恋を思い返して珈琲を飲む、情けない夜がある。——いま禁酒中でなかったらウィスキーを口にしていただろう。

 はじめて恋人ができたのは大学一年の終わりだったが、はじめて偽恋人ができたのは高校二年生の五月だった。

 学年が上がり、クラス替えをしてすぐにひとつ前の席のAと仲良くなった。Aは、ほとんど黒髪しかいない高校生の中でも特に綺麗で艶やかで濃い黒髪をしていて、言葉や立ち姿、身に着けているアイテムなど全てにこだわりのあるようなオシャレな人だった(今のわたしがAを見たら、下北沢にいそう!と言うだろう)。

 仲良くなったきっかけは、ほんとうに些細なことだったと思う。新年度になってすぐの学力テストが全く同じ点数だったとか。きっとそんな感じだ。

 毎日ふたりで喋っていた。朝の授業前も、休憩時間も、テスト期間中の放課後も(定期テストの一週間前から、放課後の部活動が休みになったのだ!)。いつもより少し朝早く学校に着くようにしたら、Aも同じ時間に教室に現れた。わたしたちが喋る時間は少しずつ伸びていった。

 高校二年生の最初の定期テスト。その最終日。学校に着く前に、AからLINEが来た。「放課後、話したいことがあるからちょっと残ってほしい」。わかりやすく、わたしは緊張した。高鳴る鼓動も、首筋の汗も止まらなかった。はやる心を鎮めるため、一日中机のシミばかり数えていた。放課後まで、Aに話しかけることもできなかった。後日返ってきたテストの点数が芳しくなかったことは言うまでもない。

 放課後。テスト終わりの学生たちは早々に帰り支度をし、Aと私は教室でふたりきりになった。

 「……テストお疲れ。」

 わたしは、締まり切った喉から声を絞り出した。

 「お疲れ……」

 「どうだった?」

 「うーん、まあまあかな。」

 「そっか。なんか、緊張してうまく解けなかったかも。」

 「そうなんだ……そうだよね。」

 「うん……それでさ、話したいことってなに?」

 「あー……そうだよね。うまく説明できる自信がなくて、紙に書いてきたから読んでもらってもいい……?」

 そう言ったAから手渡された紙を、わたしは食い入るような目で読んだ。その紙には、要約するとこんなことが書かれていた。

・わたし(A)は歌が好きで、中学生の頃から作詞作曲をしてきた
・今まで歌詞を作る時は、その時々の恋愛から着想を得ていた
・でも高校に入ってから恋愛をしておらず、歌詞を書けていなかった
・だから、わたしの恋人のふりをしてほしい

 はじめ、わたしには書かれていた内容が理解できなかった。恋人のふり?とは?何をするの?なぜわたし?もはやパニックだった。脳内で「?」を連打するわたしの様子を察して、Aが口を開いた。

 「いきなりこんなこと言われても困るよね。ごめんね、急に。でも、けっこう大事なことだったから、今日話したくて。今年の文化祭、バンドで出て、オリジナル曲やりたいと思ってるんだ。なのに、歌を作るインスピレーションが湧かなくて……」

 Aは、説明を続けた。

 「恋人のふりっていうのは、そんなガッツリじゃなくても大丈夫。駅までいっしょに帰ったり、ちょっと手を繋いだり、恋人っぽい気分になれたらそれでよくて……。ごめん、無茶なこと言ってると思うけど、他に頼める人もいなくて、もしよかったらお願いしたい。」

 「そっか、なるほど……。そうだね、あんまり聞いたことない話で、まだちゃんとは理解できてないかもしれないけど。うん。いいよ。特に何かマイナスになることもないし、歌も聴いてみたいし。」

 「……ありがとう!嬉しい。ほんとに大丈夫?好きな人いたら申し訳ないなーって思ってたんだけど。」

 「わたしは大丈夫。そっちこそどうなの?」

 「わたしも大丈夫。」

☁︎☁︎☁︎

 ここまで思い出したところで、急激に睡魔に襲われた。カフェインはけっこう摂取していたはずだった。もしかしたら、わたしの脳が「これ以上思い出に浸るなアホンダラ!」と警鐘を鳴らしていたのかもしれない。

2024/4/13 土

 伊藤 紺の歌集『気がする朝』を読んだ。おもしろかった。

 伊藤 紺の短歌に、大きなサプライズはあまり訪れない。でも、それがいい。読んだその日から生活がちょっとうれしくなるような短歌だ。なんでもなかったはずの毎日に付箋を貼って、「ここ!ちょっと楽しいよ!」と教えてくれている。なんだか、まるでわたしのために詠んでくれているかのように錯覚してしまうほど、まっすぐでそのまま胸に突き刺さる歌集だった。

2024/4/14 日

 不老不死は昔から権力者が追い求めてきたものらしいが、権力者はそんなに生きるのが楽しいのだろうか。

 いま現時点で「はやく死にたい!」とまでは思っていないが、「生きるのが辛い!」という人は多いだろう。わたしもそうだ。権力者は豊かな暮らしをしているから、生きる辛さなんてないのかもしれない。でも、もしわたしがその状況でも、永遠に生きたいなんて微塵も思わない気がする。終わりがない人生ほど、退屈な物語はない。

2024/4/15 月

 たまに聞く「ちゃきちゃき」の由来は「嫡々」らしい。嫡は嫡子なんかの単語で知られているように、正当な後継ぎという意味を持っている。つまり、「ちゃきちゃき」には「血筋にまじりけがなく純粋なこと」というような意味がある。

 今後「ちゃきちゃきの江戸っ子」なんて言葉を聞いたらば、「あいつは、EDOの意志を受け継いでいる……」と少年漫画の意味深なシーンように思ってしまうかもしれない。

2024/4/16 火

 東京で就職した友人Nが大阪に戻ってきていたので、久々に会うことになった。なんでも、来月からワーキングホリデーでオーストラリアに行くんだとか。

 ああ、オーストラリア、オーストラリア、あなたはどうしてオーストラリアに行くの?と芝居がかった調子でNに尋ねたところ、仕事に疲れたからだと言っていた。

 わかるううううううううううううううううう。

2024/4/17 水

 久々に会社の後輩Kと焼き肉へ。どうやら人事異動で相性の良かった上司と離れたらしく、落ち込んでいるかもしれないと心配していた(休職中のやつが誰の何の心配をしてんだか)。

 席に着くなり、たたみかけるようにKが話を切り出してきた。

「前インスタに載せてた人紹介してください!」
「最近ウィスキーにハマってるんですよ!」
「こないだの水ダウ見ました?」
「肉って、なんか、うまいですよね?」

 なんだこいつとは思ったが、世の中も人も案外変わっていないということに、どこか安心感をおぼえた夜だった。

2024/4/18 木

 おいしいドッグフードとは、どのように判断しているのか。

 犬の味覚を持つ人はいない。かといって犬に聞いてみたとて、まともな答えが返ってくるわけがない。

 試食係の犬がいて、その反応を見て判断しているのかもしれない。だとしても、その犬が美食家なのか、バカ舌なのかはわからない。マヨネーズをかけないと美味しく感じられない舌の持ち主かもしれない。性格面も考慮した方がいいだろう。試食係の犬が気いつかいいなタイプの場合、開発した人間に忖度して美味しそうな顔をするかもしれない。投資額が大きい商品ほど、いい顔をする可能性がある。

 もし犬の味覚を持つ人間になれたら、就職先には困らないだろうと思った。

2024/4/19 金

 イヤファンをつけたままだと声が聞き取りにくいのは当然として、自分が喋るのも下手になる。元から喋るのが苦手なんだから、もう目も当てられない惨状になる。つらい。

 わたしの声は常に細く、平時でさえ意図的に太い声を出さないと、なんとも情けない雰囲気になってしまう。いわんやイヤフォン装着時をや。録音された自分の声が苦手で、「え、わたしこんな声?やば」と聞くたびに毎回思ってしまう。ルックスよりも修正するのが難しい声のコンプレックスは、地味に心にぐさぐさくるものがある。

2024/4/20 土

 毎日のようにスタバに行っている。お金はかかるが、禁酒している分をこっちに費やしていると思っている。

 休職をしはじめてから、実家に帰って生活するようになった。ありがたいことに母親が朝ご飯を用意してくれるが、それを朝には食べない。昼になってから食べることで一食減らし、ニートなりに体形維持に努めている(母親には説明済み)。

 そして昼過ぎにはスタバに向かう。読書や書き物をするにはスタバが最適。実家はいごこちがよく、それゆえに少しでも負荷がかかるようなことができなくなってしまう。別のカフェでも問題はないが……まあ、ちっちゃいことは気にするな。

 さて、スタバのカウンターである。何をオーダーするかを考えている。アイスコーヒーはすでに確定。ホットコーヒーの季節ではないし、甘い飲み物を頼むような陽気な人間ではない。左前にはフードのショーケース。数時間前、朝ご飯を昼ご飯にした。ほんとうはここで何も食べず、一食抜いて夜を迎えたい。だが、すでに腹は減っている。我慢できずにキッシュを頼む。そう、わたしは意志が弱い。

 いや、違う。スタバのキッシュが死ぬほどうまいのだ。わたしの意志の問題ではないのだ。しかたなかったのだ。阪神野田。

 信じられないほど分厚い角切りのベーコン。ほっくほくのじゃがいも。こってり感をいい意味で抑えて全体を整えているほうれん草。わたしはキッシュの先端の方(ホールだった時の中心部)から食べ始める。意外とベーコンは序盤に出てくる。一人目の四天王のような存在だが、決して最弱ではない。そしてほうれん草ゾーンも食べ切ったところで、ピザの耳のようなパイ生地のへりの部分が残る。パイ生地をフォークで刺すと、耳元までサクサクっと音が届く。それくらいサクサク。この音を聞くためだけに食べているような気もしてくる。おいしいというより、うれしい。

 ふううっ、お腹いっぱいだ。作業もけっこうはかどった。いい一日だった。

 スタバを出て、電車に乗る。家に帰ると、チーズの香りがキッチンの方から漂ってきた。ドアを開けると、そこには、晩御飯のグラタンが用意されてあった。なるほど。わたしは、まるで生まれてはじめてグラタンを見たかのような喜びの表情を顔に浮かべつつ、「グラタン久々じゃない?」と言う母親の前でそそくさとそれを食べ切った。

2024/4/21 日

 九段理江の小説『東京都同情塔』を読んだ。正確には、少し前に読み終えて、改めてその話を思い返していた。おもしろかった。

 ここに感想を書いてみようとも思ったけれど、なかなか思考がまとまらない。寛容をうたう不寛容な社会、内省に内省を重ねて不用意に発言ができなくなった社会、なんでもかんでもカタカナの言葉を使ってさも分かったような顔をする社会。現代の日本へのアイロニーは節々に感じるものの、最終的な結論はなんだったのかは理解できていない。まだまだ読み切れていないと思う。

 ただわかっているのは、生成AIをしようしたことに話題が集中するのはもったいない名作だということだ。

 夜には会社の後輩Mとジンギスカンを食べた。ジンギスカンは小学生の時に食べた以来だったので、興味と不安がハーフアンドハーフになっているような状態で店に向かった。まじで杞憂。肉おかわりするくらい激ウマでした。

2024/4/22 月

 毎日のように短歌を詠んでいる。短歌に思考を取られていて、日記のネタがない。朝起きて、短歌を詠み、昼スタバに行って、短歌を詠み、夜には帰ってきて、短歌を詠み。思いついたことや思い出したことを短歌に回してしまっている。最近の日記の内容の薄さには危機感を持った方がいい。

 こんな反省を日記に残すほど、ほんとに何もない一日でした。

2024/4/23 火

 昨日の日記、可能であれば撤回させてほしい。

 小原晩のエッセイ『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を読んだ。おもしろかった。あまりのおもしろさに衝撃を受けた。日常の同時に、自分の不甲斐なさを恥じた。このままじゃいけないと思った。あと2年以内(『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』が出版された時の作者の年齢)にここにたどり着きたい。もちろん遠い遠い目標だけど。

2024/4/24 水

 文学フリマなるものが存在していることを知った。出たい。今年は無理でも、いつか出たい。しかし、わたしに1人で出るような度胸は当然ない。それができたらとっくの昔に会社も辞めている。もう1人文章を書く人を連れてくるか、絵・イラスト・写真との共作にするかしか道はない。知り合いに声をかけてみようかしら。

 芸人雑誌が届いた。ラランド・サーヤと令和ロマン・くるまの対談が目当てだ。届いたはいいものの、表紙でお腹いっぱいになり、いったん本棚に置いた。まだこれを読むべきタイミングではない。

2024/4/25 木

 U25短歌選手権なるものがあることを知った。文学フリマもそうだが、短歌をはじめてから新しく知るものが多くて困る。しかも締切は明日。無理だ。絶望だ。とりあえず頑張って今日中に課題の25首は読んでみるが、連作になり切らないような中途半端なものができあがるだろう。未発表短歌のストックなど1つもなかった。

 うーん、来年に期待。

2024/4/26 金

 昔よく行った大阪のラーメン屋が、大阪メトロ御堂筋線電車内のアナウンスで聞こえてきた。お部屋探しのミニミニの立ち位置である。おい、人類みな麺類。おまえ、電車でアナウンスするほど立派になったのかよ。わたしはちょっと寂しいぞ。

 心斎橋にて『うれしいすぎるよ展』と『そういうことじゃないんだよ展』の2つの展示会が同時開催。以前から気になっていてたシリーズだったので、1人こそこそと見に行ってきた。混み始める前でラッキー!ビル間違えてチケットの時間ぎりぎりだったけど、トータルではラッキー!展示しているものに留まらず、展示場所やスタッフなど様々な角度で体験を作り出しているところに、主催しているentakuの遊び心≒本気を感じ取れた。楽しかった。

2024/4/27 土

 大学生の頃、en-courage(エンカレ)というNPO団体に所属していた。かっこつけてNPOなんて言ったが、メンターとして大学の後輩のキャリア支援を行うような団体だ。雰囲気としては学生団体やサークルに近い。

 わたしの大学最後の一年は、エンカレに捧げた一年だった。メンターとして20人以上の担当学生を持ち、彼ら彼女らのキャリアについていっしょに真剣に考え、エントリーシートや面接の対策など様々なサポートを行った。また他のメンターと共に利用者数を増やす方法を考えたり、企画した就活セミナーに登壇したり、組織内でのリーダーなんかも経験した。わたしにとってエンカレとは社会的意義のある奉仕活動であり、自分のスキルアップができる機会でもあり、新しくできた居場所でもあった。

 大学を卒業して丸二年が経ち、エンカレの同窓会が行われた。行くかどうかはかなり迷った。休職中のわたしとは違い、エンカレの同期は仕事に邁進しているはずだ。なんならすでに転職をして、新たなキャリアに漕ぎ出すほど意欲的な人もいる。久々にみんなと会えるよろこびと、今の自分をみんなに知られる恥ずかしさがちょうど同じくらいだったと思う。悩んだ末、わたしは行くことに決めた。ここで停滞していてもよくない。休職しはじめてからはじめて出た前向きな決断だった。

 会場に着くと、懐かしい顔がそろばんのようにきれいに並んでいる。近い席の人同士で話す流れになり、「元気にしてた?」「最近どうしてんの?」という当然の投げかけに、わたしは全て「日本一明るいニートやってる!」と答えてその場を切り抜けた。楽しい同窓会を暗い雰囲気にしたくはなかった。

 結果的に楽しかったし、参加したことに後悔はない。久々に会う友達と過ごすひと時はいつだってきらめいているし、新鮮な空気を纏っている。ただ、やっぱりわたしはエンカレのみんなのようにはなれないんだろうなーと、今までぼんやり抱いていた思いがしっかり輪郭を持つようになった気がした。会社で、ビジネスで、キャリアを積み重ねていくイメージがもう全く見えなくなった。

2024/4/28 日

 東京の友人Kの荷造りにつきあって、その後いっしょにシーシャバーに行ってきた。カフェではなくシーシャにしたのは、最近コーヒーを飲みすぎていたからだ。シーシャをふたりで吸いながらあれやこれやと話をし、大阪に帰る前にそれはそれは充実した時間を作り出すことができた。

 2時間ほど滞在してシーシャバーを出た。Kに別れを告げて駅に向かう。新幹線に乗り、YouTubeで霜降りチューブを見ていたところ、KからLINEが来た。

K「そういえば、Xでシーシャは本命と行くとこって投稿見たんよね」
わたし「そんなことある?笑」
K「あるんじゃない?実際、本命としか行ったことないし」
わたし「へー、そうなんだ」

 …………えっ?

 あのさ、無駄にドキドキさせないでほしい。

2024/4/29 月

 青松輝の第一歌集『4』を読んだ。おもしろかった。

 独特な作風だと思った。青松輝の短歌には、ネットスラングやコピペを取り入れたものも多い。はじめて読んだときは不思議な感覚だった。元ネタを知っているものもあるが、一首としてどういうことを意味しているのか理解するのが難しい。ただ、理解はできていないけど、いいなと感じた歌がたくさん見つかった。語感の響き、言葉と言葉がぶつかった時の響き、それが心地よくておもしろい。あらためて、短歌は歌なんだなと感じさせられたような気がする。

 以前、書評家である三宅果帆の選書サービスを購入したのだが、その第一弾である小説が届いたので読み始めた。ガブリエル・ゼヴィンの小説『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』。まだ読み始めたばかりで序章の内容しか見ていないが、すでにおもろすぎる。かなり高いところまでハードルを上げられていたが、これはいい読書体験になりそうだ。

2024/4/30 火

 そろそろ仕事への復帰を真剣に考えなければならない。

 心療内科に行ってきた。いつもの担当医に復職を相談。正直なところ、日常生活に関してはすでに問題なく送れており、ある程度は回復しているように思う。一方で、仕事の話になった時にからだがどのような反応を示すかはわからない。

 ただ、いつまでもこの状態を続けていても良くないような気がしている。収入がなくゴロゴロしてる日々にそろそろ焦り始めてきているし、休職が長引くほど仕事に戻りにくくなるようにも思う。それに、日常生活に関して回復している今、もはやこの先「だいぶマシになった!」と改めて感じるタイミングはないのかもしれない。

 現在の診断書では5/12までの休業指示となっている。それが明ける5/13、わたしは何をしているのだろうか。わたしのことでしかないのに、わたしにも全くわからないものだから、人生はまだギリギリおもしろい。



先月の日記



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