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余韻沁沁|ダウ90000『30000』

 頭の中で思い描いていた下北沢は、古着と劇場と香辛料の街でした。

 初めて訪れた下北沢は、想像以上に古着と劇場と香辛料の街でした。


 3/30(土)。ダウ90000さんのコント単独『30000』を見てきました。

 ダウ90000さんのコントはテレビやYouTubeで観たことはあるものの、劇場で観るのは初めて。公演中はネタバレを避けるべく感想を書いたりするのは控えていたのですが、千秋楽を迎えた今、少しだけあの一日のことを呟かせてください。

 『30000』がある一日は、公演の100分以上に、味わい深い一日でした。

余韻。

 公演の前日の夜、私は、梅田で夜行バスに乗り込みました。夜行バスに乗るのは久々で、初めて友達と東京に行った18歳の夜を思い出しました。胸が高鳴るワクワクはあの頃と同じですが、当時と違ってすぐに眠りにつくことはできず、若さの喪失を実感します。

 新宿に降り立ち、一緒に公演に行く友人に連絡を入れました。友人は特にお笑いファンというわけではなく、劇場でお笑いを観たことはないと言っていました。一発目を吉本の寄席ではなく、若手の単独ライブにしたのはやりすぎたかと思った瞬間もありました。が、ダウ90000さんを信じて、友人には「絶対おもしろいから安心して!」と伝えてチケットを取りました。

 今さら東京にはしゃぐような年齢でもないので、寄り道することなく下北沢へ直行。私たちが観るのは14:00開演の昼公演なので、まだまだ時間はありました。下北沢でカレーを食べるのは、私の2024年の目標の一つです。大げさではありません。新宿から下北沢までの道すがら、今日行くべき渾身のカレー屋さんをリサーチしていました。

 初めて降り立った下北沢があまりにもイメージ通りの街で、思わずニヤけ顔。駅前では古着のフリーマーケットなんかがやっていて、少し歩くとたくさんの劇場が立ち並んでいました。その中でも、本日の目的地である「本多劇場」は、まるで劇場の中のドンのような堂々たる佇まい。人がいっぱいになる前にサッと記念写真を撮って、そそくさと向かいのカフェに入りました。

 「BROOKLYN ROASTING COMPANY SHIMOKITAZAWA」にて、アイスコーヒーを1杯注文。大阪から来たおのぼりさんな私からしたら、たかがカフェでも場違いな気がしてなりません。下北沢のオシャレさんたちの目が怖くて、お気に入りの詩集を開いて防御の構え。私のような一般人が無防備に踏み入ってはいけないエリアなのだと、身に染みて理解しました。そして意外にも、外国人のお客さんがけっこうたくさん。これは下北沢がそうなのか、東京がそうなのか。周りをキョロキョロしつつ、最果タヒさんの詩とカレーを食べる妄想で頭の中を満たしました。

 友人から昼すぎに下北沢に着くと連絡があったので、少し散歩することにしました。劇場の周辺に芸人さんの影を感じて、こういう時、東京に住みたい欲が強烈に湧いてきます。フラフラとしながら、カレー屋さんの下見もできたので、駅前の古着フリマで時間を潰していました。

 12:30頃に友人と合流。友人には事前にダウ90000さんのネタ動画(公式のYouTubeに載っている)を送っていたのですが、忙しくて見れなかったと言われました。私は、友人のこういうところが好きです。私たちは「E-itou Curry」にてパキスタン風無水カレーを注文しました。嘘なしで、今まで食べたカレー史上、一番のおいしさでした。

 13:30の開場とともに、本多劇場に入りました。ロビー(というのかな?)には、単独ライブらしいお花が置いてあり、真ん中にはグッズの販売列。「単独に来た!」という空気に、すでに腹三分目くらいは満足していたかもしれません。お花の中で、やけに人が集まっているところがあるなと思っていたら、ウエストランド井口さんからのお花でした。井口さんが蓮見さんに「お花を届けたぞ!」と言っているところを想像して、再びニヤけ顔。きっと、私だけではなかったと思います。

 販売されていたグッズは、Tシャツが2種類。メンバーの撮った写真がプリントされた「30000-TEE」と、メンバーが"好きな食べ物を食べている姿"を収めた「FOODS-TEE」。どちらにするかギリギリまで迷ったのですが、中島さんの顔ファンと思われたくなくて、「30000-TEE」を選びました。

 さて、ここまで書いて、やっと劇場の席についたところです。それくらい、充実した一日だったということです。

 『30000』が始まりました。

 まずは感想として、全コントめちゃくちゃおもしろかったです。

 お笑いお笑いしているポップなコントもあれば、見ごたえのあるコントもあれば、メタのおもしろさのコントもあって。飽きなんて微塵も感じさせることなく、全てのコントがそれより前のネタを超えて暫定一位になるような、常に新鮮なおもしろさがありました。どのコントも甲乙つけがたいのですが、私は上原さんのツッコミも好きなので、『ランチ後』はけっこう好みのコントでした。『磯丸水産』や『リベンジ』なんかは、年齢的にも共感できる部分も多くてぶっ刺さり。もはやしんどいくらいです。

 最後のネタ『メタの夜』だけ、私は大爆笑したのですが、同時に、予習してない友人に対して「申し訳ない!」と思っていました。ダウ90000さんの事前知識がないと、メタ的なおもしろさはわからないだろう、という心配からくる申し訳なさだったのですが、ふと横を見たら、友人も同じところで笑っていました。私は、友人のこういうところが好きです。

 コントだけでなく、幕間のVもハズレなし。メンバーそれぞれの個性・良さが出ていて、単体でも面白いし、ネタにも還元されるようになっているし。個人的に、ご飯のVTRはYouTubeなどで何度も見たいくらい好きでした。予習してこなかった友人も「間に流れた映像で、何となくそれぞれのキャラクターがわかった気がする」と言っていました。

 最後のコントが終わって、カーテンコールでのトークを聞きながら、ダウ90000さん(特に蓮見さん)と近い世代に生まれてよかった、なんてことを考えていました。もちろん、老若男女が楽しめる公演だったとは思いますが、やっぱり細かいあるあるがわかるのは同世代だからこそ。磯丸水産のバイト、ミュウツーの逆襲、インスタの裏垢。蓮見さんと一緒に年を取っていく限り、ずっとダウ90000さんのコントで大爆笑できる自信があります。

 公演終わり、全てのコントのタイトルがセットに投影されました。タイトルを知れるのは、素直にありがたいです。そして、タイトルのつけ方まで、好き。そっち行くんだっていう、そこが主題なんだっていう驚きがありました。特に『ワンオペ』と『磯丸水産』。順当にいくと『マリオ』とか『広告代理店』なんてタイトルになりそうなのに。まるで、『千と千尋の神隠し』に『引っ越し中』というタイトルをつけているみたい。『10人用』については、タイトルがオチのようになっいて、ほんと、最後な最後にやられたなと思いました。

 公演中に聴いた音楽も素敵だったので帰りに調べてみたところ、少年キッズボウイさんというバンドとのタイアップでした。なんとなく、ダウ90000さんと近しい雰囲気を感じます(8人組だし)。すぐさま出囃子で使われていた『ぼくらのラプソディー』と、タイトルが気になった『最終兵器ディスコ』をプレイリストに追加。この曲を聴くたびに『30000』の公演を思い出して、あれこれ考えてしまいます。(追記:その後配信された『ダイムバッグ・ヒーロー』も、もちろんプレイリストに追加。)

 単独ライブ自体あまり行ったことがなかったのですが、公演中だけでなく、その前後も合わせて一日中が楽しみに包まれる、そんなパワーのあるイベントなんだなと思います。公演の100分はほんとにあっという間で、その後深くて長い余韻に浸って、沁みる時間までが単独ライブです。

 次は、誰のライブに行こうかな。



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