12:三浦しをんの「冬の一等星」を読んで思ったこと

国文学の授業課題として三浦しをんの「冬の一等星」を読んだ。苦しかった。あんなに純粋に誰かをまっすぐ信じることができたらどんなに幸せだろうかと、想像するだけで息が上手くできなかった。誰かと星を見るなんて無意味じゃないかと思う。どれだけ指で示しても、その指の先に同じ星が映っているとは限らない。それを確かめる術なんて私たちにはないのに、あの時たしかに同じ星が2人の眼に映っていると思っていた。そう信じたかっただけなのかもしれない。違う世界に住む2人が同じ煌めきを見つめていることを願っていた。あまりにもまばゆい僅かな時間で、たったこれだけの出来事がその先もずっとわたしを縛るなんて。囚われてしまった。おなじ世界に連れて行って欲しかった。残酷な優しさでわたしをこんなつまらない世界において行かないで。わたしにそれを教えたのはあなたなんだから、あなたと同じあの血の花畑の夢に連れて行って。真夜中、車の後部座席で、あなたとみたうさぎ座だけが光っていた。


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