独立系ファンドの第3世代(後編)
A:前回、独立系ファンドの第3世代として、武士道アセットマネジメント、トライヴィスタ・キャピタル(TriVista Capital)、ありあけキャピタルについて教えてもらいました。今日は、その続きをお願いします。
T:今日は、ソラリス・マネージメント、パイ・ラディアン・キャピタル、日本橋バリューパートナーズの3社を取りあげたい。まず、ソラリス・マネージメント(SOLARIS FUND MANAGEMENT)。2019年11月設立。創業者は戸矢博明氏でCEO兼CIO。戸矢氏は産業革新投資機構(JIC)の発足当初にCIOに就いた方。同社は厳格なボトムアップ分析に基づいた日本株への集中投資(15~20銘柄)を行う。2021年6月の日経では「ESGの観点から、社会課題の解決につながる技術やサービスを持つ企業に投資し、経営陣との対話を通じて企業の成長を後押しする」とのこと。オフィスはFinGATE KABUTO。
A:一般的に15~20銘柄だとポートフォリオとはみなされず、相当な集中投資ですね。
T:次に、パイ・ラディアン・キャピタル(英語名はPi Radians Capital Inc.)。英国のヘッジファンド(Horizon Asset LLP)が2021年6月に閉鎖した日本拠点(Horizon Asset International)の元幹部たちが同年8月に設立したヘッジファンド。CEOは岸本達士氏。元同僚の木村直登氏や徳田優氏など、2023年8月の時点では6名が在籍。Horizon社はロング・ショート戦略を得意としていた。その戦略を引き継ぐ形。
A:Horizon社の日本拠点と言えば、伝説の投資家で、元Salomon Brothersで副会長を務めていた明神茂氏がCIOを務めていましたよね。
T:岸本氏は、東大を卒業後、1990年からSalomon Brothersで働き、明神氏のもとで腕を磨いたと言われている。パイ・ラディアン・キャピタルもFinGATE KABUTOを拠点としている。
A:それにしても、不思議な会社名ですね。
T:岸本氏によると「幅広く視野を持ち、大きく勝つという思いを、180度を表すパイ・ラディアンという社名に込めた」とのこと。2023年8月の時点で約300億円を運用。3名で中小型株を中心に2,000社を調査するらしく、オンラインを含めた1人当たりの年間面談件数は累計で1,200件とのことだよ。
A:ヘッジファンドはしっかりと調査しますから、中小型企業はもっとヘッジファンドを大切にしたほうがいいですね。
T:次は日本橋バリューパートナーズ。2021年9月設立。創業者で代表取締役社長は高柳健太郎。取締役の矢内伸介氏と共にポートフォリオ・マネージャー。高橋氏は1993年から創業直前まで野村アセットマネジメントで約27年間、日本株のアクティブファンドの運用に従事。グロースやバリューという言葉さえあまり知られていなかった時代から運用に従事されてきた方。そんな中「自分のスタイルはバリューだな」ということで、「ストラテジック・バリュー・オープン」というファンドを立ち上げた。このファンドはその後大きく成長。ピーク時には9,000億円を超えた。基本コンセプトは「評価されていない銘柄の中から、強い実力のある会社を選ぶ」。日本橋バリューパートナーズでも、同じ運用哲学、投資プロセスを踏襲する方針。
A:創業まで野村アセットマネジメントに在籍し続けてからの、新興運用会社の設立は凄いですね。
T:ある時、米国人の投資家(大手の寄贈基金)から、「われわれは、専門独立ブティックでなければ投資しない」と言われ、これが転機になったとのこと。サラリーマン運用者である限り米国では相手にされないことに衝撃を受け「世界に通用する運用品質を実現するには、独立しかない」と。
A:日本を代表する資産運用会社で30年近くもサラリーマンであった方が、米国の投資家の言葉でそこまで変化できるものでしょうか。凄すぎますね。
T:実力と志がある、第3世代の独立系の資産運用会社にも、さらに活躍してほしい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?