演技をしてでも、人に意識されたい節
なんだか、これは偏見かもしれないが、男の子というのは、人と違うことに、なぜかカッコよさを覚えてしまう生き物だ、と思う。
その「人と違うこと」というのはいろいろあって、例を挙げてもキリがないだろう。珍しい名字、珍しい血液型(AB型)、高い時計、まだ未成年なのに父親とビール飲んでるアピール、読書時間に洋書読んでるアピール、などなど。
しかし、珍しい名字や血液型が話題になるのは数秒だけだし、高い時計なんて誰も興味ないし、どうせビールなんて一口しか飲んでないし、読んでいる洋書は一向にページが進んでいないのだ。そんなもの知っている。
だが、男の子というのは、なんか変にかっこいいと自負している節がある、気がする。
体育の時間に、別にそんなに痛くもないのに「うわ~~足いてぇ~~」とか言って、周りの注目を集めようとする(大体は集まっていない)し、たいして使いもしないクレジットカードを財布から何度も出し入れして、誰かに「それなに?」と聞かれるのを待っている生き物なのだ、と思う。
そして、何より意味不明なのは、別に「女子にカッコよく思われたい」だけじゃなくて、そこに男しかいなくても必要以上にその珍しさを強調することが多いということだ。なんなん。
しかし、僕はこれを「ダッサwww」と思っているわけではない。だって僕自身もかつてはそういう意識があったわけだから。今となっては意味が分からないことを「かっこよくね?」と思い込み、それをやっていたのだから。
うーん、「かつては」というか、、、
今も若干、そういう意識がないとは言えないぞ!
例えば、僕はけっこうひどめの鼻炎持ちで、外出には点鼻薬がないと死んでしまう。数時間に1回のペース、内服量の限界擦れ擦れで勝負する、そんな男だ。この生活をもう3年ほど過ごしてきたのだが、未だに人前で点鼻薬を使うことを若干ためらっている。
それにはいろんな理由があって、まず「鼻になにかをつっこむ、という仕草があまりに滑稽だから」、というのが一つ。そして「みんなやっているわけではないから」というのも正直ある。点鼻薬だって薬だし、別に誰も好奇な目で見るわけがないとは知っていながらも、なぜかそんな意識に苛まれている。
これには間違いなく、過去に起きた何かが絡んでいると思い、先日、必死にその理由を脳内詮索してみた。
そしてある一つの答えにたどり着いた。
それは、間違いなく、
そう、喘息吸入器だ。
僕は幼少期(小学校低学年ぐらいまで)、喘息持ちで走るときもすぐ息が切れるし、咳も止まらなくなったり、けっこうひどい目に遭っていた。
自分のこの症状がすごく嫌でなんとか治したいと思っていた。
しかし、この願望はとある一つの出会いによって打ち消されることになる。
それは、映画『グーニーズ』との遭遇だ。
この『グーニーズ』の主人公格のキャラクター、マイキーが喘息持ちだった。彼は映画のほとんどで喘息の吸入器を携行していて、めちゃくちゃかっこいいタイミングで、「シュ!!」とするのである。
僕はこれを見た瞬間に、
おいおい、、喘息持ちかっけぇな、、、
となったのである。
もちろん病気がかっこいいなんてことはない。ないけど、憧れのマイキーがやってるし、学校じゃ誰もやってなかった。俺だけの特権だったのだ。
これに似たものとして、松葉杖が挙げられる。松葉杖を持つことになった男子はケガ以前よりも元気にはしゃいでいることが多いはずだ。
そして、その翌日から僕は友達の前で、「シュ!!」とするようになった。一日数回でいいのに、あえて人前で、多めに、「シュ!!」とするようになった。
地下鉄でもつり革に掴まりつつ「シュ!!」、授業で当てられた時もあえて黒板の前で「シュ!!」、みんなで公園で遊ぶ時も鬼ごっこの鬼を決める会議の時に「シュ!!」とした。
しかし、だんだんとそういうパフォーマンス(?)もしなくなり、喘息もほとんど収まった。そしてある時、突然神が自分の中に入り込んだように、「え、あの時の俺、イタくない、、、?」という自覚をするようになったのは、また別の話である。
こんなことが過去にあったから、今でも点鼻薬を人前で使うのが少し恥ずかしいのだ。ほぼトラウマよ、トラウマ。
だから早く名作映画とか大ヒット映画で、点鼻薬を鼻につっこんで定期的に「シュ!!」とする、超かっこいい主人公が出てくれば、また僕も堂々と人前で点鼻薬を鼻につっこめるはずなのだ。
ワーナー・ブラザーズ様、パラマウント様、関係各社の皆様、
どうぞよろしくお願いいたします。
また明日。
小金持ちの皆さん!恵んで恵んで!