ウクライナの服
物語をゼロから作っていいとき、
何か一つの象徴となるようなイメージを持つようにしている。
一枚の絵だったり、一皿の料理だったり、
『瀬戸内マトリョーシカ』というラジオドラマを書いたとき、
ずっとイメージしていたのは、ウクライナのワンピースだった。
vitakinというウクライナのブランドが好きだ。
数年前にその存在を知ったのだけれど、当時日本では取り扱っているところが限られていて、ソウルに行った時あのBIGBANG,G-Dragonのお姉さんがやっているレアマーケットというセレクトショップにあるときいた。
欲しかったワンピースがなく諦めて、色々探して結局オンラインショップで直接買ったのだけど、着てみると子供の頃なりたかった物語の中の登場人物になれる気がした。
この手刺繍がふんだんに施されたワンピースを着ると
もしかしたら自分はこの場所に何か所縁があるのかもしれないと思うほどに
しっくりと気持ちが馴染む。
そういえば、昔からロシアのものに惹かれることが多いな、と思った。
まだ行ったことのない国だけれど、いつか行ってみたい。
本当はこの6月、バルト三国と一緒に行く予定だった。
少し先になってしまうけれど、いつか行くことができるだろうか。
最近、いつか行ってみたい。行くことができるだろうか・・・と
どこかの国に思いをはせる気持ちを、取り戻した感じがする。
いつの頃からか「行きたきゃいつでも行ける」と思っていたのが嘘のよう。
今、世界はまた少し離れていってしまった。
だからこそ、目を瞑り思いをはせるとふわふわと遠くにある世界が湧き上がる。
浮かべたウクライナの青に、すーっと吸い込まれていく。
いつかその青の下に、立つことができますように。