女社長と統領　～パジャマみたいな恰好で

感じ悪い女だったと思う。物心ついたときから騒がしい男子だとか、皮肉っぽくて差別主義の教師に盾をついていた。
そのおかげでアタシは、IT企業のベンチャー社長になれた。サンキューベリーマッチ。

でも、女社長なんて孤独なモンだ。クールぶってるけど寂しがりだし、小難しい本を読むと眠くなる。
場末の居酒屋にパジャマみたいな恰好で行きたくなることもある。
いきつけは小岩にある「統領」という居酒屋だ。いわゆる赤ちょうちん系。最近はサブカルぶったイイ感じの若いカップルもいるから居心地がわるいときもあるけど、平日は天国のような場所だ。
生ぬるい瓶ビールと硬くなったモツ煮。アタシは仕事のことを全部忘れて時間を費やす。スマホなんて見るわけもなく。

でも、何より「統領」に行く理由がある。店長のおじさんが好きだからだ。
愛している、ラブ、とかのほう好きという意味。
パジャマみたい格好だから、社長オーラはない。おじさんはアタシの谷間をちらちらと見ようとしてくる。
あたしもこれ見よがしに見せようとして見せないクネクネした動きでもてあそぶ。

でも、一途じゃない。
週２で年下の大学生とも遊んでいる。部下の男とも寝ている。20代最後、ちょっとくらい謳歌したい。

ホントは、本気で恋をできないだけなんだよ。