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何度目かの恋も同じデートコースばかり

アプリで破れた恋はアプリで取り返しべし。

そう言って、タケシはマッチングアプリを利用して無事に長い独身生活から抜け出した。
式では満面の笑みを浮かべながら新郎新婦入場を果たし、アナウンスでは「友人の紹介で~」と謳われていた。

羨ましくはなかったが、なぜか悔しい気持ちがこみあげてきた俺は、それに続こうとしてマッチングアプリを2つ登録した。

会社の同期たちが自分以外結婚して、正直追い込まれていた。

イマドキ結婚なんてね。
自由でいいでしょ。
男は嫁がいないと出世〜。

どれも本当であり、嘘で、その言葉が胸を締め付けて俺を苦しめていた。
月額4700円で何かが変われば安いものだ。
しかし、そうもうまくいかない。

何度かデートしても2度目がない。
あるあるだとタケシは言ってくれるが、心は折れる。ちゃんと。

もちろんダメな理由も、わかってるつもりだ。俺が口下手で趣味がないから。モテるために趣味を作るのが嫌だと思うひねくれた性格もそうだろう。
昔はこんなやつじゃなかった、俺も。とほほ。

デートコースを決めるのも面倒になった。
なぜか豪快にフラれた店に、もう一度足を運ぶ。
恵比寿で星4つの安めのおしゃれ居酒屋はそう多くない。
で、案の定フラれる。

ガーデンプレイスを見て帰ろう。
と、次の店への口実を作るルートを辿った。
それも過去の「ダメ! 絶対失敗ルート」だ。

動く歩道を2列で乗る俺とマッチング女子。無言のまま、ひらっべたいエスカレーターは進んでいく。

やんわり断れて一人きりに。駅近くのマクドナルドでうちひしがれていると、見たことのある男性がいた。
決して知り合いではない。
しかし、同じ居酒屋を利用し、同じ時刻にガーデンプレイス(意外と何もない)にいて、今ここに一人でいるところまで一緒だったことを、横目でお互いに見ていた。
「……」
「……」
無言で見つめ合い、俺たちはそっと目をそらした。

まさか、3日後。
彼と人生最大のスリルとエロスを味わうとは思ってもみなかった。





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