シチューしか作らない女(ひと)
うちの嫁は、ホワイトシチューしか作らない。
本人いわく作らないというか作れない、らしい。
でも、そんなことで俺は嫌いにならない。
聡明で理論的だし、その反面無邪気で人懐っこいところもあるし、なによりスケベだ。かなりの上物だ。
そう、非の打ち所がない。
料理でホワイトシチューしか作らないことなんてどうにだってなる。
パンや他の総菜ではなく、ご飯と一緒に食卓に並ぶが、別にまずくはない。
慣れればカレーライスの恋しさは遠のく。
2年かかったけど。
なぜ彼女はシチューしか作らないか聞いてみた。
母の教えを守っているらしい。
その母親は何度もあったことがあるし、お義母さんの家に行けば、カレーや肉じゃがやビーフストロガノフだってふるまわれる。
なのに、娘はシチューしか食べさせない、作らせない、買わせないという「シチュー三原則」を取ってきたのだ。
それに巻き込まれたのが俺だ。
しかし、毎日シチューと彼女の魅力を比べらたら、彼女になるのだ。
シチューは栄養もばっちりだから体調を崩したりもしないし、ご飯のおかわりも自由だ。シチューがあいがけされるけど。
おじいさんになっても、おばあさんになった嫁は俺にホワイトシチューを作り続けるのか。
正直ときどき怖くなるけど、今が楽しいし幸せだから、それでいい。
今日もシチュー曜日だ。
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