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走り書き

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詩にもなりきれず、小説の一節にもなりきれなかった、フィクションなのかノンフィクションなのかもよく分からないかけらたちを置いておく場所
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#小説

竹下通り

朝から竹下通りのざわめきにうんざりする。クレープにコットンキャンディ、なぜか螺旋状のチップス。おこぼれを狙う鳥たち。
美容院に行くにはそこを抜けなくてはいけない。
たかが竹下通りの人混みでへこたれるなんて、まるでおのぼりさんかと思うが、こう見えて、もう20年近く東京で暮らしている。しかもこの竹下通りを抜けた美容室には8年ほど通っている。

美容院に行くのにどれくらい綺麗にしていくべきか、that

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シューゲイザー

真夏のビーチサイドで、君が業務連絡の電話に出ている間、僕はしゃがみ込んで足元の砂浜を見つめていた。

早くエアコンのあるメッセに行きたいと思いながら、君の電話が終わるのを待っている。後頭部にあたる日差しが暑い。体育の授業を度々貧血で離脱するくらい軟弱な僕の体力が果たしてトリ前のアヴリルまでもつのかさえ疑わしかった。

君の周りの色々が僕は憎い。こうやって休日を邪魔してくる電話はもちろんだが、研究室

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えくぼ

小さなバーカウンターに座る貴方を見つけ、胸が高鳴る。まさか会えると思わなかったタイミングで。貴方に会うのはどれくらいぶりだろうか。無策のまま、指先で肩に触れる。
振り返った貴方はいつものように、おお!という表情になる。

伝えたかったことは数多あれど、勢いに任せて声をかけてしまい言葉が出ない。震えそうな声でなんとか一言搾り出す。

お久しぶりです。

その後に続く言葉が見つからない。「そういえばさ

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マールボロ

The Great Rock 'n' Roll Swindleでシドヴィシャスが赤マルを吸っているのをみて、一度だけ赤マルを吸ったことがある。金魚の僕でさえ咳き込むタール12。それでもシドに近づきたくて、タバコのチョイスはいつもマルボロだった。

靖国通りのエクセルシオールでブラッドオレンジジュースを飲みながら金マルをふかしていると、不服そうな顔の君がいる。
「見なかったことにしとくけど、やめたほ

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金魚花火

金魚花火

夏になると大塚愛の金魚花火が聴きたくなる。そしていつも、金毘羅さん、祇園さん、摩利支天さんなどの地元のお祭りを思い出す。

世間一般的に祇園祭といえば京都だろう。ただ、僕にとっては地元のお祭りの印象が強い。子供の頃毎年通った祇園祭が1番最初に思い浮かぶ。

夏先の休日の夜、早めのお風呂に入り、テキトーな部屋着をまとい、ソファに寝転がって目的もなくTikTokを眺めていると、ダイニングから呼ばれる。

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by the way

by the wayは歌える?

渡したアコギを抱えて君が発した。いや、by the wayはむりだろ。あのラップみたいなパートあるし。歌の部分ほとんど同じ歌詞だから、歌えなくはないけど、あのラップがマジで無理。そんなのことを思いながら。

んーーーー。歌えないかも。