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金魚花火
夏になると大塚愛の金魚花火が聴きたくなる。そしていつも、金毘羅さん、祇園さん、摩利支天さんなどの地元のお祭りを思い出す。
世間一般的に祇園祭といえば京都だろう。ただ、僕にとっては地元のお祭りの印象が強い。子供の頃毎年通った祇園祭が1番最初に思い浮かぶ。
夏先の休日の夜、早めのお風呂に入り、テキトーな部屋着をまとい、ソファに寝転がって目的もなくTikTokを眺めていると、ダイニングから呼ばれる。
「今年は花火でも行く?」
ダイニングテーブルでパソコンと睨み合っていた君は、論文作成に飽きたのか、話しかけるなの言いつけを自ら破ってきた。
「そうだねぇ」と生返事で返すと、よほどお祭りに行きたいのか、次の質問が飛んできた。
「花火じゃなくてもいいけど、お祭り行こうよ。論文そろそろ終わるし」
「祇園さんがいい」
少し間をおいて答える。地元の祇園祭には赤ん坊の頃から行っていた。子供の頃は白地でりんご柄の浴衣にふわふわしたカラフルな兵児帯を巻いて、セーラーチビムーンみたいなシニヨンを結ってもらい、カラカラと下駄を鳴らしながらお祭りに行ったのを覚えている。
狭い通りいっぱいのおっきくて高さのあるお神輿をみるのが好きだった。お神輿のてっぺんにはいつも子供が乗っていて、高所恐怖症にも関わらず、自分も乗ってみたいと思ったこともあった。
アイドルグッズのくじとか、腕に巻くサイリウムとか、空気人形のだっこちゃんとか色々思い出はあるけれど、1番の思い出は昔ながらのかき氷屋さんで食べるいちご練乳のかき氷だ。
「中央通りのかき氷屋さんのかき氷食べたい」
ソファから顔を覗かせてワガママを言うと、困ったように君が笑う。
「その祇園さんならガキの頃毎年行ってたよ」
その言葉を聞いてふと脳裏に、祖父に手を引かれてスーパーボールをねだる幼い僕と、その横を友人たちとかけてゆくまだあどけないガキの頃の君が思い浮かんだ。
それを伝えると君は「いいねそれ、なんか情緒あって好き」と笑いながら言った。
英語を勉強したり、広報したり、民俗学を学んだりしています。