雨が降る前と雨上がりの匂い

今はまだ曇り。これから雨が降る、そんなとき。

「あ、きそう」

空を見上げる。
そして肌でまだこない雨を感じる。

雨が降る前の静まり

雨が降り出す前には独特の空気がある。
滴はまだ落ちてこないけれど、空気中の湿度だけは先に高まってくるのか
こもった部屋の空気を一気に入れ替えたときのように、一瞬にしてガラリと風が変わり湿っぽい肌感覚がする。

空はどんよりと暗くなり、
鳥がバサバサっと飛び去る。
虫の声もしなくなり、生き物たちは一斉に姿を消す。
そうして、街がシーンと静まり返る瞬間がある。

実際にしとしと雨に濡れると、湿度で髪もメイクも崩れるし汗はベタつくし、体感的には不快なことが多いけれど
あの一瞬、空気が変わる瞬間が好きだ。

雨のち軽やか

そして降り続いた雨が止んだときにもまた、独特の空気がある。
雨が降る前とは違い今度は心がすっきりと、気分が浮き立つ感覚がある。

人は空を見上げて傘を閉じ、足取り軽やかに動き出す。
どこかに行ってた生き物たちは元居た場所にそろそろと戻ってくる。少しずつ声が聞こえるようになる。

雨に重たいものが全部流されて空気全体が軽くなったような、そんな感覚。

運が良ければ虹が出て、さらに気持ちは浮き立つ。
さっきまでのどんよりした空気は嘘みたいに無くなって、自然と笑みが溢れる。

雨が悪者なわけではない。
ただ、雨が降る前と雨上がりの空気が、私は特別に好きなのだ。

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