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ハナシテモツウジナイ 49歳主夫の精神科入院日記(14)

主夫の薄衣です。

前回までの入院日記で、しんどかったシリーズを書きました。

思い返しても、確かにあの時はしんどかったんですよね。

しんどかったシリーズから。
ゆうちゃんにまつわるお話はこちら。

ゆうちゃんの件は、一生懸命あの手この手で説明しても、またお願いしても、まったく効果が得られない。話が通じないことに戸惑いました。

コレをどう考えたらいいのか。
そして、どうすれば打開出来るのか。

本当に多くの時間を費やして考えました。

実際に
きつめに言ってみる。

やんわり言ってみる。

短く言ってみる。

長めにキッチリ言ってみる。

フレンドリーに言ってみる。

などなど、色々試しました。

返ってくる相手の反応は
ケースバイケースで、

時にはちゃんと

「分かった」

と言ってくれることも何度もありました。

ようやく伝わった!と思ったのも束の間、
次の瞬間、ゆうちゃんを見つけて連れてくる・・・

なにしてんの!?
   分かったって言うてたやん!
   それよそれ!


なにが?

みたいなやりとりが何度も繰り返されました。


「話せばわかる」なんて大うそ!

こちらは、養老孟司さんのベストセラー『バカの壁』に付いていた帯から。
最近、養老さんの『なるようになる。』を読んでいた時、写真が載っていたのを見て思い出しました。

やっぱりそうだよなぁ・・・


また
その昔、5.15事件だったか。
当時の犬養毅首相が、自宅を襲撃してきた軍人に言った言葉も


話せば分かる


しかし直後に「問答無用」と射殺されました。
そんな話もあったなぁ・・・


死人に口なし

『なるようになる。』にはこんな話も。
東京大学医学部で、解剖をなさっていた養老さん。
その時のエピソードです。

献体時のトラブル対応にも当たり、遺族は献体に同意しているのに、地方に住んでいる兄弟から聞いてない、と抗議され、殴られたこともあります。大したことではありません。遺体は何も言わないけれど、生きている周りが先鋭化することはよくあることです。

養老孟司『なるようになる。』P121

私は、あの時、自分が死人と一緒だったんだろうと思いました。
ゆうちゃんを私に押しつけた2人にとって、私は死人と一緒。かといって死んでいるわけではないので、「死人に口なし」というより、

「他人に口なし」

といったところでしょうか。
もっとも、実際は彼女らの方が「聞く耳なし」なんですけど。

あの時も、当の私やゆうちゃんはさて置き、勝手に周りが先鋭化して騒いでいました。勝手に心配して、騒いで、押しつけあう。
波風を自分で作り出して、風向きを人に向けていたのです。
おかげで私はズブ濡れに。

しかしこのエピソード。ほかの本でも読んだ記憶があります。
「大したことない」と仰ってますが、養老さんのような方でも根に持つことってあるんだなぁ。これまたなぜか、ホッコリしました。


ストレスが生まれるとき

今回はゆうちゃんという人をめぐって生まれました。
みんな付きまとわれる恐怖があったのでしょうね。

フラッと近くに寄ってきては、ずっと同じ話の繰り返し。

いつか自分の身に降りかかるかもしれない!?
そんなところに恐怖が生まれ、ストレスに感じ、だから自分勝手な理屈をつけて、人に押しつける。
そうして自分のストレスをケアしたんでしょう。

そのために、ザルさんが全身が震えるほどのトラウマを受けようが、私がいくら文句や苦情を言い立てようが、そこは関係なかったんですね。
あの場の、あの人々にとっては。

あなたなら出来るでしょ?
あなたしかいません。

勝手な話です。
ご自身が立てた波風という自覚もなく、
断っても、断っても関係なく押しつける。
迷惑な話でもあります。

きっと放っておけば、波風ひとつ立たないのに。

向き合ってみる

私も、
本を読みたい時や1人で休みたい時など、
フラッと来て「ねぇねぇ・・」が延々と続くと疲れます。
ご飯のたび、私の隣が空いてないとグズる。
コレも困ります。

じゃぁ本当に困る時。その時は
私自身がはっきりと意思表示をすればいいんです。
そして本人に、「どうすればいい?」と問えばいいんです。
彼はちゃんと考えることが出来るのだから。

ゆうちゃんと向き合って、コミュニケーションをとれば、ほとんどのことは解決出来ました。
彼は「話せば分かる」男でした。
なにより、彼に悪気は全くないのです。

だからこっちも、彼には腹が立たなかったのかなぁ、とか思います。

私が部屋に戻ろうとすると、あとを付いてこられ、部屋の前でしばらく待ち伏せされることもありますが、気付けばいなくなってます。

そしてまたロビーで顔を合わせれば、
「おっちゃぁ~ん」
と笑顔で寄ってくる。

それでいいじゃない。
そう思います。




振り返ると

私は、誰とでも話せば分かる思い込んでいたので、随分と苦労し、遠回りをしました。

私自身その自覚が全くなかったのですが、話すことで、人様の主義主張を変えようなんて、とんでもないことでした。

自分が変わった方が手っ取り早かった。



しかし相変わらず、

私は


無駄な気苦労の多い男

でした。



最後までお読みくださり、
ありがとうございました。


続きます。


今回のタイトル画像は我が家の猫様。
私の時間をよく邪魔しに来ます。

でも、このコは話せば分かってくれるなぁ


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