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「夜と霧」と「エアスイミング」

公演を約2か月後に控えた、初めての企画公演「エアスイミング」

作者のシャーロット・ジョーンズさんは、オリジナル版の台本の前書きで、世代を超えて世界中の人々に読み継がれてきたヴィクトール・フランクルの「夜と霧」からあることばを引いています。

"Everything can be taken from a man but one thing: the last of the human freedoms - to choose one's attitude in any given set of circumstances, to choose one's own way."

"Man's Search for Meaning"-Viktor Frankl

"自分自身のままでいた"というだけで精神病棟に収監され、生きる自由を奪われたイギリス人女性二人の実話をもとに書かれた「エアスイミング」に取り組むにあたり、アウシュビッツを始めナチスドイツの強制収容所での経験を綴ったフランクルの「夜と霧」から得られるヒントは少なくないと思っています。"収容所のユーモア"という項目にこう書いてあります。

「ユーモアへの意思、ものごとをなんとか洒落のめそうとする試みは、いわばまやかしだ。だとしても、それは生きるためのまやかしだ。(中略)生きるためにはこのような姿勢もありうるのだ。」

V・フランクル「夜と霧」より

"精神の自由"という項目にはこうあります。

「おおかたの被収容者の心を悩ませていたのは、収容所を生きしのぐことができるか、という問いだった。生きしのげないのなら、この苦しみのすべてには意味がない、というわけだ。しかし、わたしの心をさいなんでいたのは、これとは逆の問いだった。すなわち、わたしたちを取り巻くこのすべての苦しみや死には意味があるのか、という問いだ。もしも無意味だとしたら、収容所を生きしのぐことに意味などない。抜け出せるかどうかに意味がある生など、その意味は偶然の僥倖に左右されるわけで、そんな生はもともと生きるに値しないのだから。」

V・フランクル「夜と霧」より

これは全体のなかで今のじぶんのもっとも胸にひっかかった部分です。解せるような、解せてなどいないような。わたしの中身は言葉にまだ追いついていないけど、言葉の裏にある何かには猛烈に反応しているような感じがします。そして、思った。

わたしが生きることに何かを期待するのではなく、生きることがわたしに何かを期待しているのだ、と。
同じくわたしが未来に何かを期待するのではなく、未来がわたしに何かを期待している。わたしが他者に何かを期待するのではなく、他者がわたしに何かを期待している。

そう気づきなさい、人生は一辺倒ではない、表は裏だよと。そう、みえない何かからささやかれているような気がしています。

戯曲や演じる役柄を理解する上での重要な助けになることはもちろん、一つのことをやり遂げようとする中で遭遇する困難に対してどのような姿勢を取っていくべきか、一瞬一瞬が決断の時であり、それを試されている今のじぶん自身にもフランクルの綴る言葉はまっすぐに突き刺さります。

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公演にあたり、クラウドファンディングを継続させていただいております。
こちらからサイトへ飛ぶことができます。相変わらずMotion Galleryさんのトップページにて【注目のプロジェクト】として一面に載せていただいております。開始間もない頃に沢山の方がご注目してくださったお陰です。本当にありがとうございます。

現在、目標達成まであと18万円ほどのご支援を必要としております。連日、気にかけて下さる方がいて、おかげさまで少しずつ目標まで近づくことができました。これまでサポートくださった皆さま、温かい励ましをくださった皆さま、心よりお礼を申し上げます。引き続き、応援をいただけましたらとても嬉しいです。

観劇をご検討くださっている方がいらっしゃいましたら、今回のクラウドファンディングでは先行予約のような形として、ご支援いただくことで公演チケットがそれぞれ1〜6枚ついている特典プランがございます。この機会にぜひ、チェックしていただけたらと思います。

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尚、公演の一般チケット発売は10/20を予定しております。あと2週間と少し!ぜひお見知り置きください。どうぞよろしくお願いいたします。

日本初演「エアスイミング」by シャーロット・ジョーンズ

1920年代イギリス。女らしくない、未婚で妊娠したなどの理由で「犯罪的精神異常者」のレッテルを貼られ、二人の女性が強制的に精神病院に監禁された。家族からも社会からも葬り去られたドーラとペルセポネーは〈アルターエゴ〉ーもう一人の自分自身を創造し、そこから生まれるファンタジーを通して〈監禁〉という沈黙の世界を力づよく生き延びていく。イギリスで実際に起こった出来事に基づき、現実を超えて生きようとする二人のサバイバルを渾身のユーモアで描き切った「絶望についての喜劇」。

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2018年度東京都教育委員会
「チャレンジ・アシスト・プログラム」
一部助成作品
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■翻訳戯曲「エアスイミング」出版決定!■
訳者:小川公代/出版:幻戯書房
2018年12月(上演と同時期)刊行予定
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仮チラシ


お読みいただきありがとうございました。 日記やエッセイの内容をまとめて書籍化する予定です。 サポートいただいた金額はそのための費用にさせていただきます。