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#小説
【短編小説】東京ネロ戦記① 律子
1998年6月。太平洋フィリピン海沖。
数週間前に港を出た台湾船籍の遠洋漁船、漁神号は見渡す限りの海と空の中を進んでいた。
昨夜の嵐をなんとかやり過ごし、船はつかの間の安息を得て、船員も各々甲板で煙草をふかしたり船室に戻り雑魚寝をしている。
そんな朝もやの中、船長の黃家豪はひとり悩んでいた。
この界隈を漁場に定めて2日間。全くと言っていいほど釣果が上がらない。
もう少し東側に移れば、ク
東京ネロ戦記② 倫太郎
それはまさに偶然だった。新海誠的なボーイミーツガールに少し興奮したことをおぼえている。
僕はもう何年も前に終わって、2クール目は絶望だろうと言われているアニメのファンサイトを管理しており、
その側面だけをピックアップし、誰かに僕を紹介するごとに「あいつオタクだから」と吹聴する姉を、心から軽蔑していた。なぜならそのサイトにも多分女の子はいるし、いまどきアニメ好き→オタクってちょっと前時代的すぎて
東京ネロ戦記⑪Team Voorhees(ボーヒーズ)
タイコは右手で律子を担ぎあげた。そしてビルの中に入り階段を登り始めた。
目に付いたドアを開け、部屋の中に入る。
丁度よく何かの倉庫らしく、身を隠すのにはもってこいの場所だった。
律子はまださっきの爆風で一時的に気を失っている。タイコは律子を床に雑に寝かせた。
自分の左腕の状態を確認しようと腰を下ろすと 、間もなく、外に人の気配がする。
無遠慮にドアが空いたと同時にタイコは、そ
東京ネロ戦記⑫ダンサーインザダーク
突然全てが闇の中に落ちた。
ドームの電源が一斉に落ち、全ての電気系統にエラーが出て、カメラも防犯センサーも機能停止となった。
「非常用電源に切り替わるまでだ。
多分3分もない。」
タイコはそう言った倫太郎の声を思い出していた。
3分もありゃ充分だろ。
タイコの目は既に闇になれていた。
ドームの正面入口へは階段で上がる道しかない。警戒度は高いだろう。
少し遠回りになるが、地下の倉庫らしき施設