時代劇レヴュー㉒:柳生一族の陰謀(1978年)、真田幸村の謀略(1979年)

タイトル:①柳生一族の陰謀 ②真田幸村の謀略

放送時期:①1978年 ②1979年

製作会社・配給:東映

主演(役名):①萬屋錦之介(柳生宗矩)、千葉真一(柳生十兵衛) 

       ②松方弘樹(真田幸村=信繁)

脚本:① 野上龍雄、松田寛夫、深作欣二 

   ②笠原和夫、松本功、田中陽造、中島貞夫


両作品ともに東映が製作した映画で、東映の位置づけとしては東映大型時代劇の第一弾が①、第三弾が②と言うことである(第二弾は1978年の映画「赤穂城断絶」であり、これについてもいつか書くかも知れない)。

「柳生一族の陰謀」は、東映が時代劇復興を目指し、同社の威信をかけて製作した大型映画で、これが大ヒットとなったことでその後第二弾、第三弾が製作された。

この「柳生一族」はかなりのヒット作品となり、同時期にフジテレビ系列の関西テレビの製作で、一部のキャストを共通させて映画のストーリーにオリジナルエピソードを追加した連続ドラマ化されており、さらにその後も度々リメイクされている。

オールスターキャストによる徹底したエンターテイメントと言う点では、東映の昔ながらの時代劇と言う感じであるが、政争を物語に中心に据えて主人公の柳生宗矩をダークヒーローとして描く点など斬新な部分もあり(従来型の主人公キャラは、今ひとりの主人公と言うべき柳生十兵衛が担当している)、史実は破茶滅茶であるが時代劇作品として見た場合は確かな面白さがある。

ただ、私は連続ドラマの方を先に見てしまったせいで、どうしても映画版にはややあっさりとした印象を受けてしまい(特に成田三樹夫演じる烏丸少将が、インパクトの割に映画版だとあっさりやられてしまうので)その点は見る順番を間違えたかとも思う(これから見る方は映画版を先に見た方が良いかも)。

オールスターキャストと呼ぶに相応しい豪華な顔ぶれの映画であるが、個人的にキャストで注目したのは、家光のライヴァル・駿河大納言忠長を演じる若かりし頃の西郷輝彦で、これが本当に目のさめるような美男子で悲劇の貴公子・忠長によくはまっている。

と言うか、過去に忠長を演じた配役の中では彼が私のイメージに一番近かった(前に書いたかも知れないが、私は忠長贔屓なのである)。

後、人物設定で面白かったのが、土井利勝を忠長派の中心人物としている点で、このあたりはかつて永井路子が注目した忠長の乳母が利勝の妹に当たる女性であったと言うことを踏まえた設定なのであろうか(ちなみに、土井利勝役は芦田伸介)。


「真田幸村の謀略」の方は、「柳生一族」をさらに上回る巨額の制作費を投入し、大坂の役に至るまでの真田幸村(史実では「信繁」であるが、以下は作中の名称に統一して「幸村」)と徳川家康の暗闘を描き、こちらもかなりエンターテイメント性に富んだ作品である。

物語自体ユニークと言えばユニークなのであるが、こちらの方はちょっと「遊び」が過ぎたと言う感じで、面白いことは面白いが作品としての精度は「柳生一族」に劣る印象がある。

実は、単純に史実の面で見た場合、①よりも②の方が史実には忠実なのであるが(両作品ともにラストはかなり史実と変えているのでその点はさておくにしても、例えば①は徳川秀忠が元和九年に跡継ぎを決めずに死んだことから始まるなど、そもそもの基本設定が史実と違う部分が多い)、そう言うことを忘れてしまうくらい無茶苦茶な展開が多く、猿飛佐助がエイリアンだったり、加藤清正が大坂の屋敷で虎を飼っていたり、やたらと無意味なヌードが出てきたりと、何となくチープな感が否めない(もっとも、登場人物の多くが官職名で呼ばれていたり、家康が秀忠を「大樹」と呼んでいたり、妙にこだわっている部分もあった)。

ただ、配役は結構面白くて、個人的には穴山小助役の火野正平と、林羅山役の金子信雄の演技が好きである(特に、金子信雄の独特の台詞回しには思わず笑ってしまう)。

後、幸村が松方弘樹で、実兄の真田信之が先日物故した梅宮辰夫なあたりは何だか狙った配役で、この辺もおかしかった。

余談であるが、松方弘樹は1998年の1月2日に放送された、テレビ東京の「12時間超ワイドドラマ」の一作「家康が最も恐れた男・真田幸村」でも幸村役を演じている(この作品は、幸村と淀殿が恋仲であったと言う珍しい設定の作品で、2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」に影響を与えているのではないかと私は勝手に思っている)。

また本編とは関係ないかも知れないが、合戦シーンはもちろん、それ以外でやたら火薬を爆発させている点も印象的で、確かに迫力があるかも知れないが、当時の合戦としてはあり得ないような特撮ヒーローばりの爆発の仕方なのでこちらも見ていて笑ってしまった。

あれこれ書いたが、総じてどちらの作品も開き直って見る分には非常に面白い作品だと思うので、あまり深く考えずに見ることをお勧めしたい。


追記(2022年2月)

本作で取り上げた「柳生一族の陰謀」以外でも、千葉真一は複数回柳生十兵衛を演じており、彼の生涯を通じての当たり役の一つとなった。

その中でも代表的作品である、1980年から1983年にテレビ朝日で放送された「柳生あばれ旅」、および「柳生十兵衛あばれ旅」は、千葉真一以外にも山村聰を柳生宗矩、志穂美悦子を十兵衛の妹・茜(架空の人物)にキャスティングするなど、テレビドラマ版「柳生一族の陰謀」を意識した配役となっている(山村、志穂美ともに「柳生一族の陰謀」には同役で出演)。

その千葉が、自らも出演しながら十兵衛役を他者に「譲った」形になった作品に、1992年にテレビ東京で放送された「徳川無頼帳」がある。

この作品は江戸時代初期の吉原を舞台に、将軍家光の不興を買って幕府を追放された柳生十兵衛と、「郭幻之介」と名乗って密かに配所を抜け出した松平忠輝(徳川家康の六子で、この当時は改易されて信州諏訪に配流となっていた)が、用心棒として吉原で起こった様々な事件を解決すると言うストーリーで、当時日光江戸村に買収されて新体制となったジャパンアクションクラブが制作に関わっている。

実在する人物や事件なども随所で登場するが、特に序盤は当時のテレ東の時代劇らしく、雑な展開が目立ちドラマとしてはあまり面白くないのであるが、十兵衛役の西城秀樹と、忠輝役の千葉真一が毎回派手な殺陣を見せており、その点においては見応えがある。

後、個人的には音楽が印象的な作品で、ミュージシャンとしても活躍する朝倉紀幸(現・ 朝倉紀行)が音楽を担当し、テーマ曲も殺陣の際の音楽も時代劇らしからぬポップな感じであるが、これが意外とマッチしていて好きである。


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