続・時代劇レヴュー㉔:八代将軍吉宗(1995年)、秀吉(1996年)

タイトル:①八代将軍吉宗 ②秀吉

放送時期:①1995年1月~12月(全四十八回) ②1996年1月~12月(全四十九回)

放送局など:①、②NHK

主演(役名):①西田敏行(徳川吉宗) ②竹中直人(豊臣秀吉)

原作:①なし ②堺屋太一

脚本:①ジェームス三木 ②竹山洋


NHKの所謂「大河ドラマ」は、五十年以上にわたって放送され、六十作近くの作品があるので、大ヒットした作品もあれば不評な作品もある。

そしてその長い歴史の中には、黄金期とも呼べるようなヒット作を連年に渡って生み出してきた時期があるのも確かだろう。

例えば、1987年の「独眼竜政宗」(「続・時代劇レヴュー⑫」参照)と1988年の「武田信玄」(「時代劇レヴュー㊷」参照)は記録的な大ヒットであったし、その直前の近代史路線になった時が不振の時期でもあったので、大河ドラマの劇的復活のような印象も受ける。

これに続く黄金期と個人的に思うのが、1995年~1996年にかけてで、やはりこの時も、その直前は放送枠を改変したり比較的マイナーな題材ばかり選んだせいか、思うように視聴率が伸びなかった時期であり、このあたりをリアルタイムで見ていた私としても劇的復活の印象はあった。

今回取り上げる二作品は、その時期の大河ドラマ作品であり、1995年の「八代将軍吉宗」と1996年に「秀吉」である。

この二作品はヒットしただけあって確かに面白い。

ただ、同様にいくつかの欠点もある作品であり、好きな大河ドラマベスト5を選んでくれと言われたら、おそらく両作品とも入らないであろう。

まず、①の「吉宗」であるが、これは「独眼竜政宗」の脚本を担当して大河ドラマ復権の立役者の一人となったジェームス三木を起用した作品であり、またこの作品がヒットしたのは「アイデア」の勝利みたいな所があるかも知れない。

徳川吉宗と言えば、長寿時代劇であるテレビ朝日の「暴れん坊将軍」で、松平健が颯爽とした吉宗を演じていることもあって、マツケンのイメージがお茶の間に浸透していたように思う。

そこを、まるで正反対のイメージのある西田敏行を抜擢した所に意外性があり、かつこれはこれで史実の吉宗にかなりはまっていて、番組が終わる頃には松平健がミスキャストと思えるほど良いキャストであった(同様に、「暴れん坊将軍」では中尾彬が演じていてアクの強いイメージがあった吉宗のライヴァル・徳川宗春を中井貴一が演じており、これまた「暴れん坊」のイメージを裏切るスマートで爽やかな宗春であった)。

ジェームス三木の脚本も華やかな元禄時代を描いていた前半はテンポが良く、多彩な登場人物の影響もあってストーリーも面白かったが、ただやはり吉宗のサクセスストーリーとしての面が強かったために、吉宗が将軍就任以後は山場を欠き、やや失速した感がある。

このあたりは題材の問題なので脚本やNHKのせいではないだろうが、キャラクタが減ったせいもあり、後半は徳川家重を演じた中村梅雀の熱演で何とか保っていた印象であった。


②の「秀吉」は、堺屋太一の複数の小説を原作とした作品で、何と言っても竹中直人の強烈なインパクトを持った秀吉が当時世間を席巻し、以降秀吉は彼の当たり役となった。

脇を固める面々も、市原悦子(大政所)、渡哲也(織田信長)、村上弘明(明智光秀)、野際陽子(光秀の母)、玉置浩二(足利義昭)、仲代達矢(千利休)と言った大物かつバラエティに飛んだ俳優陣を配したために、純粋に役者の演技を見ているだけで面白く、そう言う意味ではかなり成功した作品と言える(括弧内は役名)。

ただ、竹山洋の脚本は、歴史の流れを描くことよりも、人間臭い秀吉や、家族や夫婦の関係を描くことに重きが置かれており、そのため弟の秀長(演・高嶋政伸)にかつてないくらいスポットが当たった点は良かったが(原作の一つが秀長を主人公にした『豊臣秀長』であるせいもあるが)、大政所や義父の竹阿弥(演・財津一郎)との絡みが他の人物(織田家の重臣など)以上に重視され(竹阿弥がこれほど重視されている作品は、おそらく他にはないだろう)、一つ一つの歴史事件に描き方が雑になってしまっている(例えば、賤ヶ岳の戦いや小牧・長久手の戦いなどはかなり簡略化して一瞬で終わってしまっている)。

滝川一益(演・段田安則)や丹羽長秀(演・篠田三郎)などは、著名俳優を当てている割にほとんど見せ場がなく、秀吉とは親友の関係である前田利家(演・渡辺徹)すらともすれば忘れられがちであった。

このため、歴史ドラマとしてはかなり物足りないものになってしまっており、内容的にはかなり不満を感じる面もある。

このあたりの塩梅はなかなか難しく、ある意味秀吉のような誰でも知っている著名な物語であるから出来たことかも知れないが、キャストが良かっただけに、個人的にはいささか残念であった。


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