一からわかるウクライナ侵攻のすべて

最近、ニュースのほとんどがロシア軍によるウクライナ侵攻に関するものです。しかし、中にはウクライナの場所すら知らず、まったく関心を持たない人もいるようです。

この記事では、まったくウクライナ侵攻が分からない人向けに解説を行います。ウクライナ侵攻をより詳しく知りたい人はこちらの記事をご覧ください。

1 ウクライナとロシアについて

まずウクライナとロシアについて、大まかに解説を行います。
まず、ウクライナとロシアの場所についてです。Googleマップさんの地図をお借りします。

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これを見ていただいたらわかる通り、ウクライナの東側はロシアに面しています。とても地理的に近い関係にあるということです。
ですが、現在(2/27)は北南西の3方向から侵攻が起きているという状態です。なぜ、ロシアは国境を面していないところからも侵攻ができるのか、
下の写真をご覧ください。

クリミア ロシア ベラルーシ

赤の線がウクライナがロシアと直接、国境を接してる場所です。南の黄色で囲った場所。ここはクリミア半島と呼ばれる場所です。もともとはウクライナの土地でしたが2014年にロシアが侵攻し、現在もロシアに占領されています。
次に、茶色で囲んだベラルーシ。ここは親ロシア派の人が多くくらし、政治も親ロシア派です。先月にはロシアとの軍事練習も行っていました。つまりいざとなれば、ここもロシアの土地のように使用できるということです。
これにより、ウクライナは、ロシア・ベラルーシ・クリミア・黒海などの3方向から侵攻されてしまったのです。
では、そもそもなぜプーチン大統領はウクライナ侵攻を行ったのでしょうか

2 なぜウクライナに侵攻したのか

これには歴史が大きく関わっています。ウクライナとロシアはもともとはソビエト連邦(ソ連)という同じ国でした。

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Wikipediaから引用した画像です。ソビエト連邦が1991年に崩壊したのち、ロシアや、ベラルーシ、ウクライナなどを含む14の国が誕生しました。米ソ冷戦は終結したとはいえ、欧米諸国とロシアとの関係はあまり良いものではありませんでした。ヨーロッパが進んでロシアと戦争をする可能性は低いですが、万が一、ロシアと欧米諸国との戦争になった場合、領土が減っているため、ソ連の時代よりも容易く侵攻される可能性があるのです。
ロシアはそれをとても恐れていました。もしウクライナ(地図2番)が欧米諸国側についた場合、アメリカ軍やイギリス軍がウクライナに基地を持つかもしれません。そうなれば、ロシア版キューバ危機になってしまいます。
「何としても、ロシア周辺の国を親ロシア派にしなければ」
ロシアがそう考えていた矢先、欧米諸国がソ連に対抗するために作った
NATO(北大西洋条約機構)に参加する国がかつては欧米の一部だったのが、徐々に東の国々も参加していったのです。

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写真引用元 ヤフーニュース
NATOに参加した国同士は戦争や侵攻が発生した場合、助けるというルールがあります。
もしウクライナがNATOに参加した場合、ロシアがウクライナに侵攻すれば、欧米諸国の多国籍軍とロシアの全面戦争になります。そうなった場合、ロシアが負ける可能性が高いです。
ウクライナの大統領は、NATOに参加することに意欲を持っていました。また、2014年にロシアに侵攻された、クリミアの奪還を公約に掲げました。
ロシアからすると、ロシアと国境の大部分を接し、首都モスクワとも距離が近い、ウクライナが欧米諸国の仲間になることが徐々に現実味を帯びてきたのです。

プーチン大統領はかつてのソビエトのような巨大帝国を復活させたいう野望があります。ウクライナのNATO参加は、プーチン大統領の野望とは真逆の行動です。

そして、何としてもウクライナを親ロシア派にしておきたいプーチン大統領は、2月24日ロシアに軍事侵攻を行いました。

3 日本の危機

先日、安倍元総理大臣は日本の核保有も検討するべきと等の発言を行いました。また、憲法9条の改正の検討を行うべきという趣旨のツイートも多く見られました。
その理由は、中国が日本に侵攻した際、日本もウクライナのようになる可能性があるからです。

米国のバイデン大統領は、NATOに加盟していないウクライナを防衛する義務はないとして、ウクライナにロシアが侵攻しても米軍を派遣しないと判断しました。イギリス、日本なども同様にウクライナに軍を送っていません。

皆様は、ブダペスト覚書というものをご存じでしょうか。かつてウクライナはソ連時代の核兵器を大量に保有していました。もし、核兵器を保有しなくなれば、どこかの国から侵攻された際に、ウクライナが植民地になってしまうからです。しかし、欧米諸国からすれば、核兵器を持つ国が大量にあることは都合が悪いですし、平和とは真逆です。
そこで、欧米などはウクライナ侵攻が発生した場合、安全保障理事会(安保理)を開き、ウクライナの支援をする代わりに、核兵器を捨ててくれという内容の覚書、通称ブダペスト覚書を締結したのです。安全保障理事会で決議ができれば、国連加盟国の場合、拘束力のある決議を採択できます。つまり、ロシアに侵攻をやめるように、警告ではなく、命令をすることができるのです。

ウクライナはこのブダペスト覚書の代わりに、核兵器をすべて捨てました。
しかし現在、ロシアがウクライナに侵攻しているのに、欧米などは軍を送らずに、経済制裁を行っているだけです。なぜなのでしょうか。

それには、現在の国連の常任理事国の制度が関わっています。現在の国連の常任理事国は、アメリカ・イギリス・フランス・中国・ロシアです。安保理が決議を採択するには、この5か国すべてが、決議に賛成をしなければなりません。常任理事国は拒否権があり、一か国が拒否をすると採択ができません。つまり、常任理事国のロシアが反対をしている限り、命令を行うことはできません。

ですが、「安保理が採択しなくても、米英が軍を派遣することはできるのではないか」
これは可能です。かつでベトナム戦争や、朝鮮戦争などアメリカが全く関わっていないのに、米軍が参加するということは何度もありました。しかしここ10年で世界の警察とまで言われた米軍の勢いは落ちています。
トランプ氏が大統領になる際、彼はこう発言をしています。「北朝鮮が核兵器を持っているなら、日本も持ったほうがいいのではないか。日本には防衛だけでなく、北朝鮮に対する攻撃力ももってほしい」
また、トランプ氏は米国の財政赤字を触れたうえで、アメリカは他国を守る余裕はないと語りました。昨年8月には、バイデン大統領は、アフガニスタンのアメリカ軍を完全撤廃したうえで、米軍は世界の警察ではないと発言をしています。つまり、米軍はできる限り、戦争などには参加しないように方向転換をしたと思われます。

このウクライナで起きている危機は、日本の危機の際も同様になる可能性があるのです。

例えば、これを日本と中国に置き換えてみましょう。仮に、中国が尖閣諸島に人民解放軍(中国の軍の名前)を駐在させ、日本への侵攻を開始したとします。国連安保理が開催されますが、中国には拒否権があるため国連や安保理は警告を行うことしかできません。米軍も、他国を守る余裕がないため、必要最低限(在日アメリカ人の避難や米軍基地の防衛)などしか行わず、中国人民解放軍vs自衛隊の戦いになる可能性があります。米国の手助けが受けられない中で、中国に勝つことはできるのでしょうか。

今の話はあくまでも最悪の場合ですが、起こりうる可能性は十分あります。
日本の憲法9条のことを海外の人は「平和ボケ」と揶揄することがあります。確かに憲法9条があったおかげで、日本は朝鮮戦争やベトナム戦争などに巻き込まれることはありませんでした。
ですが、憲法9条があると、先ほどのようなことになるやもしれません。

遠く離れたウクライナのことに興味を持つ人はかなり少ないですが、これは日本の危機でもあることを知っておいてください。


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