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経済社会学研究_概略

どうも!
セイタです!!
北京大学社修士課程で社会学を学んでいます。

この一連のマガジンでは、自分が北京大学で「どのような授業を受講したのか」、「どのような授業の進め方なのか」、「課題をどのようにクリアしていったのか」について執筆していきたいと思います。


対象としている読者は
・中国の大学に興味がある。
・社会学修士に興味がある。
・海外の大学院に興味がある。
方を想定しています。
もちろん当てはまらない方でも全く問題なく読める内容となっております。


自分は2023年春学期に
・応用統計講座(2コマ)
・ビッグデータマイニングとアナリシス(2コマ)
・経済社会学研究(2コマ)
・人口問題(3コマ)
・応用社会統計講座(3コマ・聴講)
聴講を除いて、計9コマ分を履修していました。


中国人の学生は12,13コマくらいの子が多かったですが、それは卒業年度にインターンや就活をするから、早めに単位を取り終えるためです。僕はインターンも就活も何もないので、高いGPAのために少なめにとっています。

この記事ではその中でも《経済社会学研究(经济社会学研究)》という授業について書いていきたいと思います。




授業概略

最初に授業の概略についてシラバスを参考に説明させていただきます。

人間は本来「利己的」なのか?
経済社会システムは、人間の利己的な動機に基づいて構築されるべきなのだろうか?
アダム・スミスは、人間は基本的な性質として思いやりと博愛を兼ね備えていると考えていたのに、なぜ新古典派経済学は、完全に利己的な「経済人」を前提として市場理論を構築したのか?
現実の市場における行為者は、「原子化された」経済的存在なのか、それとも社会的関係に「埋め込まれた」社会的存在なのか?
この埋め込まれた関係は「ソーシャル・キャピタル」と呼ばれることもあり、ソーシャル・キャピタルが多ければ多いほど良いのだろうか?
市場が経済行動と資源配分を規制するための最も効率的な制度的配置であるならば、なぜ企業は階層的で非市場的なシステムとして存在するのか?
市場、階層、関係ネットワークは、並置された3つの制度として比較できるのか?
普遍主義的な制度としての市場の道徳的意義はどのように理解できるのか。つまり、それは普遍化のために愛と思いやりを犠牲にしているのか、それとも愛の普遍化へ向けた重要な一歩なのか?
それと関連して、現代とは何を意味するのか?それは「ヒューマニズム革命」をもたらすのか?それとも「ニヒリズム」をもたらすのか?

このコースでは、文献を読み、議論することを通して、経済社会学の視点から、個人の動機及び制度、現代性ついて考察を行う。

シラバスの一番上の内容を翻訳したものですが、ものすごくくどいです(笑)いろいろな問いを問いかけるというスタイルです。経済社会学という授業名ですが、授業そのものは割と哲学的な内容を多く含んでいます。




先生の経歴_陶林

次に先生の経歴について簡単に記述しておきます。この授業は陶林(Tao Lin)先生によって開講されています。


北京大学社会学系



経歴は
・学部は北京大学(Times Higher Education 2024 14位)
・修士がハーバード大学(Times Higher Education 2024 4位)
・博士がハーバード大学(Times Higher Education 2024 4位)
となっています。

素晴らしい経歴ですね。北京大学の先生は修士や博士を海外の名門校で過ごした方が多いのですが、さすがにハーバードクラスの大学はそこまで多くありません!!
※ただし博士号取得に7年かかっています、、


ただ、経歴を見ていても気になることが二つあります。


1つが、年齢が50前後なのに准教授である点です。この年齢の先生だと、教授の人が多いイメージです。


もう1つ気になるのが、研究成果が異常に少ないことです。20年で7本の論文しか出していません。。しかもすべての論文がトップジャーナルというわけでもありません。

これらが要因となって、准教授にとどまっているのかもしれませんね。。





授業の進め方

次にどのように授業を進めていったのかについて説明させていただきます。


授業の進め方としては、最初の15分で学生がプレゼンを行い、残りの85分で先生と生徒がディスカッションを行うといったスタイルでした。また、この時の発言の回数がメモされており、成績にの一部となります。


授業のトピックは以下のものになります。

前半の7つ
・人はもともと利己的なのか-理論的な議論
・制度設計と人間のモチベーション
・動機づけに関する実証的証拠(1):利他主義、公平感、互恵性
・動機づけに関する実証的証拠(2):絆、結束力とアイデンティティ、道徳的動機の源
・ソーシャル・キャピタル:個人レベル
・ソーシャル・キャピタル:社会的レベル

後半の7つ
・企業の理論、取引コストと財産権
・ハート:財産権、インセンティブ、企業の所有制
・ハンスマンの所有制理論
・非経済人モデル:インセンティブ、人間関係、財産権
・市場システムと経済発展
・フォーマルな制度とインフォーマルな制度
・現代と普遍主義-普遍主義の台頭

基本的に2人1組になって、前半から1つ、後半から1つのテーマについてプレゼンを行います。自分は社会学部の班長の子と一緒になりました。




課題

最後に課題について簡単にお話しさせていただきます。


この授業の成績は
- ディスカッション:20%
- プレゼンテーション:20%
- 期末レポート:60%

によって成績が決まります。


期末レポートの配分が多く、その分重要度が高いです。その一方で、授業での発言も20%のウェイトを占めるので無視できません。授業中に発言しないと、そこの点数を失ってしまうからです。


ただ、僕ともう一人の華人の留学生はこの授業中1回も発言していません、、
あんまり授業中に発言するとか得意ではないのです、、




プレゼンテーション

僕たちのペアは
・動機づけに関する実証的証拠(1):利他主義、公平感、互恵性
・非経済人モデル:インセンティブ、人間関係、財産権

の担当となりました。


ここの割り振りは完全にランダムです。なお、前半の部分は自分のペアの子がプレゼンを行い、後半の部分は自分がプレゼンしました。


このグループプレゼンに関しては、別途記事を書いているので、興味があればご覧ください。




期末レポート

この授業では期末レポートに関してかなり詳細な要求が課されています。


まず、文字数は8,000-10,000字程度で15,000字を超えないようにとのことです。日本語にするとだいたい1.3-1.4倍くらいになります。学部生の卒論並みですね( ;∀;)


テーマの設定に関しては、以下のように比較的自由度が高くてやりやすいです。

関心のある経済現象を選び、経済社会学の適切な理論的観点から分析・説明する。
分析する現象ははミクロ、メゾ、マクロレベルのどれでもよい。 学術文献、自身の生活からの情報、メディアの報道など、使用する情報源に制限はない。
理論や視点は、授業で取り上げた既存の理論や研究から得たものでも、自身の考えに基づいているものでもかまわない。また、既存の理論を改良したり、自分の考えに基づいて新しい理論を構築してもよい。


ただ、レポートの構成や内容に関しては詳細に書き方が決められています。その一部として分析や解釈方法について書かれた箇所を紹介させていただきます。

1. 分析は、理論的及び論理的に明確で、合理的で、説得力を持たせる必要がある。

2. 理論的分析と説明を、実証研究で裏付けさせる必要がある。実証研究は、現象そのものから得られることもあれば、現象に関連する経験的事実から得られることもある。 状況に応じて、生活観察、メディア報道、文献、統計データなど、さまざまな情報源や形式から得られる。

3.その現象に関する代替可能な解釈を検討し、自信の解釈と比較する。そして、 自信の分析や解釈がより確からしいことを説得力をもって論証する。 例えば、あなたの理論的分析が、次のようなことが可能であることを示す。
例えば、あなたの理論的分析が、代替的分析では説明が困難な現象の経験的特徴や関連する経験的事実を説明できることを示す。

以上のような書き方のルールがあります。ちなみに、上記文章は全体の3分の1程度です。



自分は『地縁と血縁の重要性:現代華人社会の関係ネットワーク』というテーマで書きました。期末レポートに関しても別途記事を書こうと思います。



この授業に使った時間

自分は以下のアプリを用いて、分単位で勉強時間を計測しています。なので、この授業にどの程度の時間を使ったのかを最後に紹介させていただきます。
※タスク管理とボモドーロ技術を使った時間管理が一体となったアプリで愛用しています。



・授業時間:100分×15回=25時間
・前半のプレゼン:15時間強
・後半のプレゼン:33時間強
・3回目の課題(プレゼン):37時間弱
・予習及び復習:13時間半
合計:約123時間


この授業は今期で最もコミットした時間が多い授業となっています。期末レポートの内容を基に論文を書こうと思っていたので、たっぷり先行研究を読みました。また、プレゼンも英語の文献が多く、読むのに時間がかかりました。


あと、この授業の成績は「B+」でした!
北京大学では「B+」はGPAで3.3に相当します。全体の20%を占めるディスカッションで一度も発言をしていない割には良い成績かなと思います(笑)



なんなら「B」でも文句言えません。
皮肉なことに、今期で最も時間をかけたこの授業が最も成績が悪く、最も楽をした『ビッグデータマイニングとアナリシス』の授業が「A+」で最高の成績でした。。やはり授業の選択は大事ということです。


ということで、今回の記事は以上となります。
長い記事ですが最後まで読んでいただきありがとうございます。



このマガジンでは引き続き、北京大学社会学修士の授業について執筆していきます。


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