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経済社会学研究_グループプレゼン※無料サンプル付き

どうも!
セイタです!!
北京大学社修士課程で社会学を学んでいます。


この記事では2023年春学期に受講した《経済社会学研究(经济社会学研究)》という授業のグループプレゼンについて書いていきます!!概略について興味のある方は以下の記事をご覧ください。


対象としている読者は
・社会学に興味がある
・モチベーション研究に興味がある
・企業のマネージメントに興味がある
方を想定しています。
もちろん当てはまらない方でも全く問題なく読める内容となっております。


この授業の進め方としては、最初の15分で学生がプレゼンを行い、残りの85分で先生と生徒がディスカッションを行うといったスタイルでした。自分が行ったのはこのプレゼンの部分です。また、記事の最後に自分が作成したパワポを掲載しておくので、ご参考までにご覧ください。



それでは、ご覧ください!!






自分が担当したプレゼン課題

まずはどのような流れでテーマが決まっていくのかについて簡単にまとめさせていただきます。



プレゼン課題の決定プロセス

まず、最初にグループ分けがあります。15人程度の学生を2人1組で8ペアほど作っていきます。自分は運がいいことに社会学部の班長と一緒になることができました。この子は快活な性格で、能力も高く非常にやりやすかったです。


それぞれのペアはセメスターの前半と後半で1回ずつプレゼンをする必要があります。ペアにもよりますが、僕たちのペアは前半が班長、後半が僕が担当しました。

僕たちのペアの課題は
・前半-動機づけに関する実証的証拠(1):利他主義、公平感、互恵性
・後半-非経済人モデル:インセンティブ、人間関係、財産権

でした。



課題の詳細

非経済人モデル:インセンティブ、人間関係、財産権」というのがざっくりとしたテーマなのですが、詳細な導入文も用意されてます。それが以下のものになります。

これまでの「企業論」の議論においては、コース、ウィリアムソン、ハートの3人はにより、行為者の動機を自己利益の最大化だけを考える経済人として捉えられてきた。 しかし、企業や組織内の経営問題に関する文献には、行為者の動機づけについてより複雑な見方が存在している。 例えば、いわゆる「Y理論」では行為者の動機づけをどのように捉えているのだろうか。 また、「Z理論」では行為者の動機づけをどのように捉えているのだろうか。 これらの理論で強調されている非利己的動機が客観的に存在するとすれば、企業や組織内のインセンティブについて、いかなる意味を持っているのだろうか?

制度という観点からは、コースとウィリアムソンは、経済活動を調整するための2つの基本的な制度的選択肢として「市場」と「ヒエラルキー」を挙げている。 しかし、大内のZ理論では、第三の制度的選択肢として「クラン(共同体)」を提唱している。 一方、パウエルは第三の制度的選択肢として「ネットワーク」を提唱した。 この2つの制度オプションは現実的かつ実現可能なのか? 彼らは経済人なのか?それとも道徳的動機を持つ社会的存在でなければならないのか?

経済活動を組織するために人間関係のネットワークが使われる場合、取引コストの点で市場よりも有利なのか、また階層的な垂直統合よりもインセンティブの点で有利なのか? おそらくこのことが、「関係所有権」という概念の利点であろう。つまり、取引コストを節約し、階層的システムに伴うインセンティブの低下を回避することである。関係所有権は完璧な制度的取り決めではないだろうか? 経済活動を調整するシステムとして人間関係を利用することにコストはあるのか?またその主なコストは何なのか?

ディスカッショントピック


ざっくり言えば、経済学者がモデルとする利益だけを追求する「経済人モデル」ではない人間のモチベーションとしてどのようなものがあるのかということを問いてます。



参考文献としては以下の6本の論文が用意されてました。2本が中国語で、4本が英語です。

[1] Douglas McGregor:《The Human Side of Enterprise》 Reflections 2000, 2(1) p6-15
[2] Ouchi and Price:《Hierarchies, Clans, and Theory Z: A New Perspective on Organizational Development》 Organizational Dynamics 1978 21(4) p62-70.
[3] Walter W. Powell.:《Neither Market Nor Hierarchy: Network Forms of Organization》 Organizational Behavior 1990 12 p295-336
[4] 周雪光:《关系产权:产权制度的一个社会学解释》 社会学研究 2005(2) p1-31.
[5] 刘世定:《嵌入性与关系合同》 社会学研究 1999(4) p75–88
[6] Adler, Paul S:《Market, Hierarchy, and Trust: The Knowledge Economy and the Future of Capitalism》 Organization Science 2001 12(2) p215–34.

テーマ的にはあまりなじみがなかったので読みにくさはありましたが、総じて論文のページ数が少ないのが救いでした。




プレゼン内容

この章では、自分がどのようなプレゼンを行ったかのについて書いていきます。



プレゼンの大枠

プレゼンの大枠としては以下の4つになります。

⑴理論X、理論Y、理論Z:企業や組織内のインセンティブに対する見方
⑵組織におけるネットワークと信頼の役割
⑶関係所有権と関係契約の利点と欠点
⑷ディスカッショントピック



⑴理論X、理論Y、理論Z:企業や組織内のインセンティブに対する見方

このパートでは従業員のモチベーションモデルである理論X、理論Y、理論Zといった三つの理論と市場やヒエラルキーが果たす役割を説明しています。



X理論で考えられる従業員は「怠け者で、責任を負いたがらず、自己中で、変化を好まず、愚かである」と想定されています。



Y理論においては、X理論で考えられているような仮定を置かず、従業員の目標達成のためにマネジメント層の役割や方法論が研究されています。



Z理論は日本の終身雇用制度的な制度が念頭に置かれています。





⑵組織におけるネットワークと信頼の役割

このパートは、企業組織におけるネットワークや信頼のもたらす役割を紹介しています。



ここはPowellの論文を参考に、関係ネットワークが市場やヒエラルキーと比較してどのような特徴を持っているのかを述べています。例えば、効率がよかったり情報の信用度が高かったりする点が挙げられています。



ここでは、市場、ヒエラルキー、信頼といったタイプが情報の伝播という観点から見て、どのような特徴を持っているのかについて類型化しています。





⑶関係所有権と関係契約の利点と欠点

このパートは所有権といった法律上で定められているはずの「おかたい」制度的枠組みが、社会学的な「やわらかい」文脈の中でどのように作用しているのかを説明しています。


自分が関係所有権(关系产权)といったは内容がなじみがなくて、中国語にもかかわらず非常に読解に苦労しました、、


関係所有権は経済学の分野で扱われることの多い概念ということからこのパートが始まります。つまり、「関係所有権はある種の権利であり、資産の所有やそこからの収入に対する権利」ということです。一方、社会学の分野では、「関係所有権はある種の関係であり、組織内部の安定した関係をもたらす」ものと考えられています。


関係契約のところもパワポは作ったのですが、内容が難しく、きれいにまとめられないので、割愛させていただきます。記事最後のパワポには中国語ではございますが、掲載しているのでもしよければご覧ください。





⑷ディスカッショントピック

ここでは、前述のディスカッショントピックをざっくりと以下の三つにまとめてそれに返答する形をとっています。
⑴Y理論とZ理論はどのように行為者のモチベーションを捉えているか?
⑵「関係ネットワーク」と「クラン」ではどのようなモチベーションが必要となるのか?
⑶「関係所有権」のメリットとデメリットは何か?


この三つの質問に自分なりに回答するという方法を取りました。すると、先生から「関係ネットワークやクランといった制度的枠組みは経済人モデルで解釈できるのか?」という質問を受けて、回答に窮していたところをペアの子に助けられました(笑)



最後にペアの子が用意していたクエスションを問いかけてプレゼンはおしまいです。それが下記の二つの質問になります。
⑴人間関係/人間関係のネットワークは、市場やヒエラルキー(特に市場)からどの程度離れた第3の選択肢なのか?
⑵関係/関係ネットワークと契約上の統治構造/企業行動との間の適合性はどの程度あるのか?



以上が自分が行ったプレゼンの概略になります。そもそもの内容が割と難しい上に、かなり省略して記事を書いたので、よくわからない箇所も多々あるとは思いますが、気になる点があればコメントいただければと思います。





プレゼン準備にかかった時間

プレゼン準備トータルでは33時間強かかっています。
内訳としては、
・参考文献:20時間前後
・パワポ作成:8時間弱
・パワポ練習:6時間弱

となっています。


ページ数こそ少なかったのですが、内容がなじみがなかったのと、英語の論文がメインだったので、参考文献を読むのに苦労しました。。。


ということで、今回の記事は以上となります。
長い記事ですが最後まで読んでいただきありがとうございます。



今回のプレゼンで使用したパワポですが、以下のリンクからダウンロードできますので、パワポの構成や中国語などご参考にしていただければと思います。




また、経済社会学研究の授業中で課題として課された期末レポートに関しても別途記事を書いていきます。





このマガジンでは引き続き、北京大学社会学修士の授業について執筆していきます。




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