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どうも!
セイタです!!
北京大学社修士課程で社会学を学んでいます。


この記事では、自分が北京大学で
どのような授業を受講したのか
・どのような授業の進め方なのか
・課題をどのようにクリアしていったのか
について執筆していきたいと思います。


対象としている読者は
・中国の大学に興味がある。
・社会学修士に興味がある。
・統計学に興味がある
方を想定しています。
もちろん当てはまらない方でも全く問題なく読める内容となっております。


自分は2023年春学期に
・応用統計講座(2コマ)
・ビッグデータマイニングとアナリシス(2コマ)
・経済社会学研究(2コマ)
・人口問題(3コマ)
・応用社会統計講座(3コマ・聴講)
聴講を除いて、計9コマ分を履修していました。


中国人の学生は12,13コマくらいの子が多かったですが、それは卒業年度にインターンや就活をするから、早めに単位を取り終えるためです。僕はインターンも就活も何もないので、高いGPAのために少なめにとっています。

この記事ではその中でも《応用統計講座(高级统计专题)》という授業について書いていきたいと思います。この授業の先生は僕の指導教官と仲が良く、よく一緒に学会に出たり、講座を開いたりしているため、前から知っている先生でした。





授業概略

最初に授業の概略についてシラバスを参考に説明させていただきます。
以下、「授業開講の目的」になります。

講座と実践を通して、社会科学で一般的に用いられる高度な統計分析手法を習得;方法論に関する古典的文献の読解と議論及びグループプレゼンを通じて、社会科学の研究手法の視野を広げる;定量的な研究手法の応用と実践的な問題分析能力の向上
基礎的な統計学の知識と手法を身につけ、統計ソフトを使いこなせることが求められる。

以上がシラバスの内容です。


また、具体的な内容としては以下のものが学習内容として挙げられています。

(1) 二項ロジットモデル(BLM)
(2) 系列表と対数線形モデル
(3) 順序ロジットモデル(OLM)
(4) 多項ロジットモデル(MLM)、KARモデリング
(5) 時系列分析
(6) クラスター線形モデル、構造方程式モデル。
(7)固定効果モデル
(8)操作変数法、傾向値分析

※中国語をDeepLに翻訳して、明らかに日本語訳がおかしい単語だけ直しました。他にも間違っていそうなものがあれば教えていただきたいです。



この授業はすでに『線形回帰とその応用』の単位を取得していることが履修の条件となっているため、より発展した内容が授業で扱われます。





先生の経歴_李建新

次に先生の経歴について簡単に記述しておきます。この授業は李建新(Li JianXin)先生により、開講されています。




経歴は
・学部は新疆大学(数学)
・修士が人民大学(人口学)
・博士が北京大学人口研究所(人口学)
となっています。


確か出身が新疆だったはずです。僕の友達でこの先生の学生がいるのですが、「同郷だからこの先生を選んだ」と言っていました。



また、博士課程を北京大学人口学研究所で取得しています。日本だとあまりないかもしれませんが、中国だと研究所で修士号や博士号を取る方も一定数います。たとえば、「中国社会科学院」という研究所があるのですが、学歴を見ると、そこ出身の先生もたまにいます。



学歴や職歴以外に、この先生が特徴的なのは論文の多さです。

すでに60歳を超えているにもかかわらず、2年間でたくさんの論文を執筆しています。このように論文をたくさん投稿するための方法なのですが、自分の指導した学生と共同執筆という形で論文を刊行しています。例えば、上記の画像に何度か名前が出ている「盛禾」「秋丽雅」は博士の先輩です。


それ以外にも、この先生は他の大学から先生をまねいたりして、多くの講座を開いたりしています。北京大学では、毎週のように特別講座が開かれています。僕自身も人口学が専門なので、よくこの先生が主催する講座には参加しています。
※僕の指導教官からも参加するように促されています(笑)




講座の一例としては以下のものがあります。

『健康的な高齢化への中国の道』

预告 | 未名·健康论坛(2023·春)“中国道路·健康老龄化”研讨会


『中国高齢人口健康理論の振り返りと実践』
シンガポール国立大学の先生が話をしてくれています。

预告 | 方法与应用论坛(十五):中国老年人口健康理论的反思与实践


なお、この二つの講座にともに参加している「陆杰华」というのが僕の指導教官で、李建新先生とは仲良しです。陆杰华は「人口問題」という講座を開いているので興味のある人は下記リンクからご覧ください。




授業の進め方

次にどのように授業を進めていったのかについて説明させていただきます。


授業が14回あるのですが、
・8回が先生の授業
・4回が中間発表
・2回が期末発表

となっています。


中間発表と期末発表については後述するとして、先生が授業で教える内容としては、前述の通り発展した統計学の手法になります。モノトーンのパワーポイントにちょっとした統計手法の説明と数式、統計結果の出力だけが書かれているというハイカラな授業形式がとられています。


式変形や式の解釈がほぼすべて口頭だったので、キャッチアップが大変でした。ただ、授業の最後にその統計手法を使用した実際の論文が必ず紹介されるので、学んだことをどう活かすかがイメージし易くてためになりました。




課題

次に、課題について簡単にお話しさせていただきます。


この授業の成績は
・出席及び授業での表現(発言、ディスカッション) 30%
・中間レポート 30%
・期末レポート 40%

となっています。


中間と期末で2回あるグループプレゼンは「出席及び授業態度」に含まれるはずなので、ならすとそれぞれ全体の10%程度の配分になります。如何にレポートに偏っているか僕もこの記事を書いていて気づきました(笑)



中間発表

中間発表は学期中に4回あり、それぞれ以下のテーマが割り当てられます。
・1回目:方法論、因果推論
・2回目:(定量調査と定性調査の)混合研究、定量調査の規範
・3回目:内生性と異質性(人口学、社会学)
・4回目:内生性と異質性(経済学)

内容を見て僕も感じたうえに、先生も明言していたことなのですが、後に行けば行くほど難しくなっています。


なお、「内生性」とは、あるモデルの誤差項とモデル内の変数が相関を持つため、因果推論にバイアスが発生することです。「異質性」とは、本来であれば同質でなければならない比較群と対照群で属性が異なるため、因果推論にバイアスが発生することです。


多分、社会科学になじみのない人だとあんまりピンとこないと思いますが、社会科学(特に経済学)の定量調査の歩みはある意味、内生性や異質性を如何に解決するかの歴史と言えるかもしれません。この分野は特に経済学で発展してきたため、一番難しい第4回目のグループプレゼンは経済学が扱われています。


なお、自分のグループは第2回目の『(定量調査と定性調査の)混合研究、定量調査の規範』を担当しました(笑)



このグループプレゼンに関しては以下の記事で紹介しています。なお、自分は社会科学における定性調査の手法についてプレゼンしました。





中間レポート

中間レポートの課題は実際の定量調査を真似してみるといった内容です。先生曰く、「統計の一番の方法はまねること」だそうです。なので、実際の研究をまねてみることがこの授業では求められました。


レギュレーションとしては
・真似した論文の典拠を示すこと
・どのような過程でデータを算出したかを示すこと
・自分の出力結果と元のデータで違いが生じた場合は、原因を探ること
・研究内容に評価を下すこと

です。



自分は発展途上国における希望出生数と合計特殊出生率の関係性を示した下記の論文を題材にしました。

Lant H. Pritchett:《Desired Fertility and the Impact of Population Policies》 Population and Development Review 1994年 20卷 1号 p1-55

理由は簡単な統計手法しか使っていないのと国別データという非常に入所し易いデータが使われていたからです(笑)


テーマの決定から実際にどのように分析したかについては以下の記事にて書いています。





期末発表と期末レポート

期末発表は1人から3人で定量調査を行い、10分程度で発表するといった内容になります。そして、期末レポートはその内容をレポートにするといった内容です。


自分は、この先生の学生である修士と博士の人のペアに入れてもらいました。テーマは「職業分類が出生希望に与える影響」です。全員人口学かつ定量調査が専門なので、かなり楽できると思いましたが、なんやかんやで結構苦労しました、、


正直期末発表は悲惨でした、、
ただ、期末レポートはなんとかある程度は形にしたかなとおもいます。



その辺の苦労に関しても別途記事を書いていこうと思います。




この授業に使った時間

自分は以下のアプリを用いて、分単位で勉強時間を計測しています。なので、この授業にどの程度の時間を使ったのかを最後に紹介させていただきます。
※タスク管理とボモドーロ技術を使った時間管理が一体となったアプリで愛用しています。



・授業時間:100分×14回=23時間強
・中間発表:22時間弱
・中間レポート:12時間
・期末発表:6.5時間
・期末レポート:13.5時間
・その他、予習復習:14時間
合計:87時間

成績評価の配分を鑑みると、中間発表に少し時間をかけすぎな気はします。ただ、他に課題のない時期だったので、まあいいかなと思います。逆に期末は他の授業の課題や学会準備に追われて、あまりこの課題にコミットできませんでした、、


なおこの授業の成績は「A」でした!
北京大学の「A」はGPAで4.0に相当します。しっかりといい成績がとれてよかったです。この授業は社会学部の中でも専門修士の授業なので比較的成績のつけ方が甘かったように感じます。


専門修士と僕が所属する学術修士の違いに関しては以下の記事を参考にしてください。



ということで、今回の記事は以上となります。
長い記事ですが最後まで読んでいただきありがとうございます。



このマガジンでは引き続き、北京大学社会学修士の授業について執筆していきます。



また、人口学について興味のある方は以下のマガジンをご参照ください。



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