人口問題_レポート※サンプル付き
どうも!
セイタです!!
北京大学社修士課程で社会学を学んでいます。
この記事では2023年春学期に受講した《人口問題(人口问题)》という授業の期末レポートについて書いていきます!!概略について興味のある方は以下の記事をご覧ください。
それでは、ご覧ください!!
期末レポート概略
期末レポートのルールは以下のものになります。
レポートの締め切りが8月15日だったので、比較的ゆとりをもってレポートに取り組めました。また、自分は7月18日~20日にかけて2023年中国人口学会にてポスターセッションを行っていたため、今回のレポートはその時の発表内容を一部流用しています。ポスターセッションの内容に興味がある人は下記の記事をご覧ください。
ポスターセッションでは人目を引くために「日本の少子化政策の失敗した原因」という物々しいテーマで行いました。
以下ポスターセッションの内容です。
そして、レポートのテーマは「過去30年に及ぶ少子化政策の合理化及び中国への応用」です。しっかりとトーンダウンさせてます(笑)
レポートの構成
レポートの構成としては、
・導入
・先行研究-人口学理論
・西洋の事例をそのまま日本に当てはめたことによる過ち
・中国の少子化の現状と出生行動の特徴
となっています。
以下ざっくり説明します。
導入
導入の箇所では、日本の現状を主に描写しています。
例えば、日本の総人口と合計特殊出生率の下降傾向について述べたり、
男女の未婚率が下降傾向であることを述べたりしています。
※そしてこの未婚率の上昇こそが少子化の最大の原因とした上で未婚率上昇の背景をさぐっています。
あとは、誰も期待していない現政権の「異次元の少子化政策」も時事ネタなので取り入れています。
こんな感じで導入を終えた後は、先行研究のまとめに入ります。
先行研究-人口学理論
先行研究のまとめとしては、日本のレポートならば実証研究だけをまとめていたかもしれませんが、ここでは人口学の出生理論をまとめることにしました。中国の社会学界隈では、アメリカ式の論文の書き方が日本以上に徹底されており、理論を踏まえた研究というのが求められるからです。
主要な出生理論として
・合理的選択理論
・相対的所得仮説
・リスク回避論
・価値観の変化と低出生率規範の伝播
・ジェンダー不均衡論
の5つを提示します。
レポートでは、その中でも合理的選択理論、リスク回避理論、ジェンダー不均衡論が日本の少子化現象をよく説明できる理論としています。
理論のまとめは以下の書籍を参考にしました。めちゃくちゃわかりやすいので、人口学学びたてのひとにはめちゃくちゃおすすめです。
なお、この授業は自分の指導教官が開講しているのですが、休み明けの研究室の飲み会で「○○君はまじめな学生だ。学部が社会学でもないにも関わらず、しっかりしている。人口問題の授業で書いたレポートは中国人の学生よりもよく書けている」と2回言われました。その要因が理論について理解しているということがレポートを通じて、伝えることができたからだと思っています。
西洋の事例をそのまま日本に当てはめたことによる過ち
この章では、欧州で主に行われている「出産奨励政策」を日本も採用しているのですが、それが過ちであったということを主張しています。日本が本来すべきことは「結婚推奨政策」でした。
以下の図は妻が45-49歳の夫婦の平均的な出生数の推移ですが、2005年まではほとんど変化していません。少子化はそれよりも早く始まっていたのにもかかわらずです。
日本がまだ救いがある点としては、平均予定出産数や平均希望出産数が人口置換水準である2.0前後であることです。
夫婦の平均理想出生数と予定出生数です。
独身男女の平均理想出生数です。
そして、欧州の出産育成政策が日本でうまくいかなかった点として、以下の文化的要因が日本には存在しなかったことを挙げています。
・子供の独立心
・仕事は女性にとっての自己実現
・恋人との恋愛感情の重視
・子供が成人した子育ては終了
この箇所の議論は著名な家族社会学者である山田氏が執筆した下記の本を大いに参考にしています。興味のある人はご覧ください。
ここまでの内容が、人口学会にてポスターセッションを行った範囲になります。ここから先は、新たに研究しています。
中国の少子化の現状と出生行動の特徴
この章では、「日本の少子化対策を中国で実施した場合にどうなるのか」といった観点から中国の人口問題を分析しています。今回のレポート執筆で時間がかかったパートになります。
まず、中国の合計特殊出生率ですが、一人っ子政策が功をなし、大いに減少傾向です。
そして、日本との比較して中国は
・両親との同居率がより高い
・就職率も高く、仕事に対する満足度も高い
・男性の経済状況を日本以上に重視する。
と分析しています。結果として、日本で効果が薄かった少子化対策が中国では機能する可能性が高いと結論を下しています。
そして、締めのパートでは、「人口政策に失敗すると数十年後の国民が苦労する。中国は日本の事例に学び、失敗しないようにしよう」という言葉で結んでいます。
参考文献
以下の文献を参考にしてこのレポートを書きました。
※なお引用の仕方は北京大学の社会学部の学生が主に使っている方法です。
・中国語
・日本語(中国語訳)
英語
レポート執筆にかかった時間
このレポートを書き終わるまでにはトータルでは17時間弱かかっています。
内訳としては、
・中国の現状調査:3時間
・レポート執筆:14時間
となっています。
※学会準備にはトータルで27時間かかっています。
このレポートは2023年の人口学会で発表した内容に「中国への応用」を付け加えただけなので、比較的少ない時間でそこそこのクオリティのものが書けました。
ということで、今回の記事は以上となります。
長い記事ですが最後まで読んでいただきありがとうございます。
また、人口問題の授業中で行ったグループプレゼンに関しては下記の記事にて書いているので、ご覧ください。
このマガジンでは引き続き、北京大学社会学修士の授業について執筆していきます。
また、人口学について興味のある方は以下のマガジンをご参照ください。
期末レポートのサンプル
今回の記事で紹介させていただいたレポートですが、さすがに無料公開というわけにはいきませんが公開させていただきます。もしよければご覧ください~~
中国語もすべてネイティブチェックしてもらっています。また、先生からも比較的良い評価をもらったレポートなので、そんなに質が低くはないと思います。
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