英雄なきアイルランドの憂鬱 ラグビーオータムネーションズカップ イングランドに完敗
英雄のいないチームは、苦しい戦いを余儀なくされて、結果的に敗戦の憂き目にあう。
ラグビーオータムネーションズカップで、アイルランドはイングランドに挑んだが、7-18で得点差以上の敗戦を喫した。
英雄とは、司令塔のスタンドオフ、ジョナサン・セクストンのことだ。35歳。2018年にワールドラグビー年間最優秀選手に選ばれた。
2019年には、「天下無双」のニュージーランドを破って、アイルランドは世界ランキング1位になった。
しかし、「ミニワールドカップ」とも言われるオータムネーションズで、英雄を欠いたチームは、イングランドを前に、「攻めさせられた」。ボールを持ち込んでも、ここ一番の場面で得点を奪えず、カウンターからトライを一気に奪われるシーンもあった。結局。得点差以上に完敗のイメージだけが残った。
アイルランドは長く、英国の圧政下に苦しんだ歴史がある。ラグビーなどで歌われる応援歌「フィールド・オブ・アセンライ」は、穀物を盗んだ罪でオーストラリアに流罪となる男の悲哀を歌った曲だ。
圧政に反旗を翻すには、常に英雄を必要とする。しかし。英雄がいないと、どんなに勇敢な者たちが集おうと、結局、鎮圧されて終わる。
今年の欧州最強国を決める「シックスネーションズ」で優勝した王者イングランドに挑むには、やはり英雄の姿が不可欠なのだが、この日、けがで「救世主」セクストンはいなかった。
アイルランドは、スクラムやラインアウトのセットプレーで、劣勢を強いられ、密集でのボール争奪で、イングランドの豊富な運動力についていけなかった。
現在35歳のセクストンが、3年後に行われるフランスのワールドカップで活躍どころか出場することも厳しい状況だろう。
新たな英雄が現れない限り、アイルランドの悲願のワールドカップ制覇は難しい。アイルランドに輝かしい未来は訪れるのだろうか。憂鬱は続く。
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