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流行り廃れた岩盤浴、やはり癒される話

 風呂が好きです。
 銭湯も好みますが、温泉は格別です。

 温泉研究所や温泉の理論などは眉唾モノが多く懐疑的ですが、それはそれとして温泉宿に泊まるというのは素敵なことです。有名どころは勿論のこと、秘境的な宿に行くことも楽しみます。個人用の露天風呂等を貸切にするものも良いですし、部屋に温泉露天風呂が付いていると大層テンションが上がります。

 2000年代頃に「岩盤浴」なるものが流行しました。サウナよりも低温な40度前後の室温に、ほどよく暖かい岩盤が敷かれ、専用のウェアを着て寝転がります。遠赤外線がどうとか、健康にどうとか、そんなことが持て囃されました。赤外線は皮膚のごく表層までしか届きませんし、いかにも効果のありそうな理論はやはり眉唾モノで私は懐疑的ですが、それはそれとして岩盤浴は素敵なものです。

 先日、思い立って意味もなくそういう宿に泊まってきました。

 外扉を開けます。
 室内からの熱気が内扉から滲みます。
 入りますと、数種のハーブを組み合わせた心地よい香りに包まれます。暖かい室内には間接照明が灯り、穏やかな時間を演出します。
 岩盤にタオルを敷き、横になります。じんわりと温かさを感じます。ここには何もありません。ただ暖かさと温かさに包まれて、体がほぐれていきます。次第に心が安らぎます。ここには何もありません。ただあたたかく、汗が滲みます。
 しばらくいると、全身がすっかり温かくなってほぐれていることに気づきます。ゆっくり起き上がり、汗を拭いて、温泉に向かいます。

 寂れた宿だったからか、大浴場には誰もいませんでした。
 内湯と外湯と十分に楽しみ、自然と自分の境界が曖昧になった頃、体を拭いて部屋に戻ります。懐石料理は春の訪れを告げ、良質な日本酒は私を夢に誘いました。


 高度情報化社会では、少し調べるだけで大量の情報が手に入ります。効果だとか、理論だとか、誰それの主張がどうだとか、そういうことが。
 すべて他者の主観であるはずのそうした情報が、純粋経験を邪魔します。

 私が、今、どう感じているのか。

 温泉の効果も岩盤浴の効果も、そんなことはどうでも良いのです。
 ただ私が心地よく感じ、癒されることが重要です。

 私は再び日常を歩み始めます。


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは貴方が世に溢れる情報に惑わされず、貴方の感性の灯火を明るく保ちますように。


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#自分が気に入ればそこはいつでも #至福の温泉
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#誰と行ったかってもちろん家族と行きました
#息子は露天風呂にテンション爆上がりで浮いていた羽虫を捕まえて嬉しそうに渡してくれました #子ども用の食事も用意してくれるのはありがたいですね
#はい
#よからぬことを考えた方は挙手

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