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子連れ鴨の外来風景

 子連れ狼なる時代劇の頃を思えば、昨今の情勢は昔より遥かに育児する父親も市民権を得てきたように感じます。

 守秘義務やらなんやらの問題もありますから、通常外来診療のスペースには必要十分な医療スタッフのみ同席することが許されます。

 ところが先日、のっぴきならない事情によって齢3歳の息子を朝から夕方まで同伴することになりました。3歳といえば、そう、子連れ狼こと拝一刀おがみいっとうの息子大五郎だいごろうも、放浪の旅の最中にはそれくらいの年頃でした。

 子連れ鴨の爆誕であります。

 その日は外来診療がありました。
 
 To be, or not to be, that is the question.連れて行こうか行くまいか、それが問題です。
 

 息子に訊ねると「みてる」と言います。
 外来を見学したいという明確な意思表示がありました。さらば然るべき段階を踏もうと事務方や外来スタッフに相談して、息子の初めての職場見学が実現いたしました。もちろん主体は患者さんにありますから、はじめに事情を説明して快諾いただけた方のみ、診療風景を見学させていただきました。

 偶々診療人数が少なく、それでもおよそ2時間半にの外来を、息子は椅子にちょこんと座って興味深そうに見ていました。持参した恐竜の図鑑を読んだりカルテに繋がっていないパソコンをカタカタしたり、息子も仕事をしている雰囲気を醸し出していたように思います。

 終わって一言、

「パパ、じつはおいしゃさんだったんだねぇ。」

 どうやら信じてもらえたようです。


 親の働く姿を子どもに見せることには、賛否両論あるかと思います。是非の判断はナンセンスというか、それはその子次第、親子関係次第としか言いようがないものと考えます。息子も医師を志してほしいかと問われれば、そうする必要はないしやりたいことをやればいいと思いますが、それはそれとして自分の仕事に興味を抱いてもらえるというのは、なんだか嬉しい心地がしました。

 その子の人生の主役はその子自身であって、親は脇役に過ぎません。しかしながらそれは主役の人格に色濃く影響を与えてしまう脇役です。そういう立場にあるからこそ、私は私の心の在り方を注意していきたいと思うのです。幼少期は言葉以上に背景の感情や心の様相を鋭く感じ取るものですから。


 帰宅して、一緒にお米を研いで炊飯を始め、夕飯の支度をしました。妻と娘の帰宅を待って、4人で食卓を囲みます。少し歪な形のハンバーグが愛しくて、あたたかい味噌汁が心を満たしてくれました。



 拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは貴方の大切な世界が、あたたかい光に守られますように。


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