尊厳と脱糞
大真面目な話です。皆さんは出すべきでない時に出てしまった経験があるでしょうか。
いやいやいきなり何言ってるの?
なんかこのページ臭くない?
そんな貴方は回れ右、プラウザバックでどうぞお帰りなさいませ。リアルな表現、汚い表現もあるかと思いますので閲覧は※自己責任で※お願いします。私ですか?
私はあります。
思い出したくもない思い出ですが、 #眠れない夜に 思い出してしまったので仕方ない。正直に話しましょう。
あれは、大学生の夏でした。部活に明け暮れ、公式戦を経て、長い夏休みの終わりに差し掛かる、そうひぐらしのなく頃だったと思います。
当時、激安な浜焼き居酒屋が流行っていました。お金のない大学生だって、たまには居酒屋で飲みたいじゃないですか。そこのメニューに牡蠣なんてあったら、そりゃあ食べたいじゃないですか。誰だってそうする。私もそうした。
そりゃあ美味しかったですよ。牡蠣なんてそうそう食べられませんからね。海鮮をたらふく食べて、飲んで飲んでお開きになって、家に帰ります。一人暮らしのワンルーム。あぁ美味かった、って幸せでした。その時は。
惨劇は次の日の夜に始まりました。
初めは違和感です。なーんか胃のあたりがムカムカするなぁ、なんて呑気なことを思いながら床につきます。ゾクゾク寒気がするぞ、風邪の引き始めかもしれないと布団をかけて眠ろうとします。うとうとし始めた次の瞬間、
込み上げる嘔吐感で私は飛び起きました。
なんだこれ?なんだこれ?現実を脳が処理できません。もうとにかく吐きそうなのでトイレに向かいます。が、手前で口の中がいっぱいになってやむを得ず洗面台にぶち撒けます。今日は飲んでないのに、なんで?
吐いたら少し楽になりました。なんだったんだろう。寒気はなくなりましたが、頭はぼうっとしています。布団に戻ろうとした矢先、今度は腹が痛み出しました。まさか、これは。極端に狭くなった歩幅でトイレに入ります。座るや否や、大洪水です。色のついた水です。絶望感に苛まれながら水を流します。私の身体はどうしてしまったのでしょう。フラフラと布団に戻る私ですが、横になるとまた込み上げるものがあります。涙ではありません。いえ、涙も出ましたけど。
結局、その日は #眠れない夜に なったわけですが、トイレの便座に尻と顔を交互に近づけて出し続ける経験は、中々強烈なものでした。私は知っています。どう考えてもあの牡蠣のせいです。ノロウイルス感染症。なんて恐ろしい胃腸炎でしょう。私は知っています。病院を受診しても大した治療はありません。脱水なら点滴しますし、(特に小児や高齢者などで)重症なら入院を要しますが、概ね水分がとれていれば入院適応はありません。吐きますが、飲めます。私は医学生でしたから、これは家で粘るしかないことを確信していました。
しかし、本当の悲劇はこの先にありました。
その翌日、恋人が見舞いに来てくれたのです。なんと泣ける話でしょう。大量のスポーツドリンクやらインスタントのおかゆやら、そういったものを届けてくれました。
泣きそうになりながら玄関に向かいます。涙になるはずの水分は全て消化管にいってしまっておりますが。ああ、女神はいたのだと、
ブプッ、ブリュリ…ッ!!
なんということでしょう。私の番人はあっけなくその門を開き、たちまちジャージの中の右足が温かくなっていきます。あ、半秒遅れて左足もぬるくなってきました。彼女の表情も固まります。
その後のことはよく覚えていません。
恋人は支援物資を届けた後、なにか優しい言葉をかけて立ち去っていったようです。彼女の対応に何も問題ありませんし、むしろパーフェクトです。感染予防の観点からも、不用意に近づくべきではありません。しかし私の中の尊厳が、音を立てて崩れていくのを感じました。
そのジャージは捨てました。その日を思い出すからです。思い出したくもないのに、私は今、何故こんなことを書いているのでしょう。それもこれも #眠れない夜に スマホを眺めてしまったせいです。
私がその胃腸炎から回復するのに、1週間はかかりました。恋人との心の距離の回復には、どれほどの時間が必要だったことでしょう。
さて。
私たちは胃腸炎に無力なのでしょうか。
尊厳を守ることは不可能なのでしょうか。
私は勉強しました。医師になり、臨床経験を積みました。そして遂に、ひとつの結論に辿り着いたのです。
ジャジャーン、これ。
「桂枝人参湯 (ケイシニンジントウ) 」
ひどい胃腸炎になったら、これを飲みます。吐いても飲みます。吐くので多めに飲みます。すると早く回復します。理論は色々ありますし、別にコレ急性胃腸炎専用の薬ってわけでもないんですが、普通くらいの体質の人がノロウイルスに感染して、発熱したり頭痛もあったりして激しい嘔吐と下痢があるような場合には結構ピッタリ合うように思います。次点で「五苓散 (ゴレイサン)」も良いでしょう。こちらは二日酔いにも効きます。うーん、一石二鳥。どちらも自分で試した際にも非常によく効きました。(人は過ちを繰り返す生き物ですから、私は牡蠣を食べ続けます。)
病院を受診しても大した治療はしてもらえず、せいぜい点滴と整腸剤が処方されるかどうかという胃腸炎。もちろん基本は腸管安静と十分な補液であることは事実ですが、時に漢方治療が劇的に効く症例を経験しますので、頭の片隅に置いておくのも一興です。
薬局で手に入り、病名がつけば保険診療で処方できる薬ですが、個人で使う場合にはご注意を。医療機関を受診した場合には医師の指示にしたがってくださいね。あしからず。
※この記事は特定の医薬品を強く推奨するものではありません。
※医薬品は正しい処方の下、用法用量を守って安全に使用してください。
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