黄色い月 《詩》
「黄色い月」
春が終わりに近づいた夜
空気は漠然とした湿り気を帯び
薄靄に包まれた
黄色い月がふたりを見ていた
僕の隣りで不規則に美しく揺れる
君のスカートの裾
僕は自分を失ってしまうほど
激しく君を求めていた
はぐらかす様に微笑む君の唇に
静かに指先で触れた
少しの間の沈黙
其れは彼女の同意を意味している
全てが再び現実の位相に服すまで
彼女の長い睫毛が
僕の心の均衡を突き崩す
唇から漏れ出る無音の熱い吐息
其れは僕を深く濃密に凝視し続ける
自己完結的な邪な欲望で慰める
其れすら既に見抜かれている
僕は想いを
現実の言葉に転換する事が出来ない
夢の中で今夜も目を覚まし
君を抱き愛し合う
頭上には真夜中の闇に静止した
黄色い月がある
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