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風待ち日記

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水無月のほとりで風を待つ、いつかその日が来るまで
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2022年7月の記事一覧

ポロシャツのぬくもり

ポロシャツのぬくもり

私はプールがきらいな子どもだった。みんなは6月から始まるプールの授業をとても楽しみにしていたけど、私はいやでいやで仕方なかった。

私はとても痩せっぽちの女の子だったので、晴れの日はともかく、雨の日のプールの低い水温にはとても耐えられず、いつも唇を紫色にしてぶるぶる震えながら水に入っている小学生だった。友達に「大丈夫?」と心配されて「うん」と返しはするけれど、実は寒くてたまらず、しれっと親友の女の

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夏色のひかり

夏色のひかり

大学3回生の夏を迎えている。

3回生になってから演習の授業が圧倒的に増えたので、みんなひいひい言いながらレポートや発表資料を作成していて、それを見て私もなんとかがんばらなきゃと思えるのだから、仲間の存在はとても大切だと思う。

そして「卒論どうする~?」というような話もちらほら耳にするようになってきた。どの先生の研究室に所属するか、どんなことをテーマに卒論を書くかといったことを、みんな少しずつ考

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かわいそうなんかじゃないよ

かわいそうなんかじゃないよ

自慢話をする人は基本ご機嫌さんなのだから、出来るだけ話を聞いてあげなさいと、母は昔から私たちによく言っていた。

その人は自分が幸せであることを言いたいわけだから大抵ご機嫌さんでしょう、楽しい話なんだから深く考えずに聞いてあげればいいのよと。

けれど不幸自慢をする人の話は、聞き手のことも苦しくさせてしまうことがあるから難しいね、とも母は言っていた。その言葉は私の胸に宿っていて、ときどき顔を覗かせ

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