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晴牧アヤ
2024年8月29日 17:11
同居人の月が死んだ。 キッチンで倒れてるのを見て、最初は嘘だと信じたかった。けれど、生きてるとは思えないほどの体温を感じて、脈も鼓動もない体を見て、虚ろな目をした同居人の死を認めざるを得なかった。通報することも忘れて、亡骸を抱いて気付けば涙が流れていた。 だから、いつの間にか家に入り込んでいた猫に気付きすらしなかった。≪≫ 又木月は、私こと菊花七恵と共に、大学を卒業してからシェアハウ
國文學研究会大東文化大学
2024年7月6日 06:21
ブラックコーヒーというものを、わたしは美味しく飲めたことがない。 初めは、わたしが子供舌なのが原因かと思っていた。けど毎日飲んで慣らそうとしたって、安いものだから不味いのだと品質を上げてみたって、ただ苦いだけだった。砂糖やミルクを入れても、苦味を誤魔化しただけに過ぎない。というか、それをしたって苦いことは変わりなかった。多少マシになっただけだ。 どうしても、わたしはブラックコーヒーを味わうこ
2024年4月30日 17:25
「ねぇ、君、そこ危ないですよ!!」 その声で、目が覚めた。 私は何故か踏切の真ん中に立っていた。辺りは真っ暗。周りにはその声をかけてくれた人と、あと猫ぐらいしかおらず、しんと静まり返っている。幸い電車はまだ来てないようだけど、私はどうやらそんなところで呆けていたらしい。 とりあえずここにいるのも危ないので、声が聞こえた方に向かう。声をかけてくれたのは小柄な女の子で、少々幼い雰囲気があった
2024年4月29日 13:06
「お花見をしよう!」 私の隣を歩く友人、梅朱ルアが唐突に叫ぶ。相変わらず突拍子もない提案をする彼女だが、一応続きを聞いてみる。「で、なんで急に?」「だって、桜が満開なの見ちゃったから!」「ああ、まあ確かに咲いてるな……」 3月の終わり。一年を締め括って、また新たな一年が始まろうという頃。それを出迎えるように、桜も咲く頃だ。 しかし私、桜葉マキは花見をする気にはなっていなかった。そ
2024年3月24日 18:59
いつだったか、私は夢を見た。死んだ親友が目の前に現れる夢だ。 まあ、もうまともに覚えてはいないのだけど。 彼女が亡くなったのは、高校二年の秋だった。彼女は元々体が弱く、私はいつも彼女の隣にいて、支えていた。だからこそ彼女がいなくなった後は随分塞ぎ込んでいて、しばらく不登校になっていた程だ。 彼女が再び現れたのは、その年の冬のこと。その夢の中で、未だに朝日が昇っても起きる余裕が無かった私は
2023年7月9日 08:55
「圭、もう別れないか?」 大事な話だと彼氏に呼び出されて、一番に言われたのがこれだった。心当たりもあって予想もついていたのに、何を言われたのか解らないかのように固まってしまう。「え、えっと、また急だね……」「そうでもないだろ。最近お互い冷めてきてるし、この関係のまま続くのも良くないしな」 何一つ間違ってない、彼の言う通りだ。私は既に、彼を恋愛対象として見れていない。このまま付き合って