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《創作》むしよけスプレー

こんばんは。久々の投稿です!
短い小説、ショートショートになります。
姉妹が作った商品を使わされる話。


 あるたころにふたりの姉妹がおり、ふたりとも化学の分野でとても有能な研究者だった。ふたりはまだまだ若いものの、相当な数の商品や特許を手がけていた。
 その姉は、やや年の離れた妹を目に入っても痛くないくらい可愛がっていた。
 ある週末、姉は出掛けていく妹に、試作品を手渡した。
「この時期、いろんな虫や菌が心配だから、これを振りかけて行ってみて」
 素直な妹は、実際に虫は怖いし、また姉の作品なら効果が高いと思い、ひとふりして出掛けることにした。
 スプレーはとても清涼な香りがし、妹はすっきりした気持ちで街に出た。
 姉はそんな妹を見送り、無事に効果が出ることを祈った。
 その日の夕方、妹はしょんぼりした顔で帰ってきた。姉は聞いた。
 どうしたの浮かない顔して。
 彼に振られちゃったの。
 あらあらそれは。姉は妹の話を聞きながら、内心ニヤリとしていた。なぜなら以前より、聞けば聞くほど嫌な男で、常々別れた方がいいと思っていたのだ。姉は妹を慰めながらよい人に出会って欲しいと思った。

 一方、妹は仕事の出来る姉のことを尊敬していたが、ときどき抜けている姉を心配してもいた。
 ある日の朝、妹はそんな姉に化粧クリームを手渡した。
「日焼けが気になる季節だから、これを着けたらよいよ。お姉ちゃん、すぐ肌が真っ赤になるでしょ」
 姉は、妹のくれたものならきちんと着けてあげねばと思い、丁寧にそのクリームを肌に乗せた。
 なんだか甘い、よい香りのするクリームで、肌なじみもよい。
 姉はゆったりした気持ちで、外にでかけていき、以降もきちんとクリームを塗ってから出勤した。
 しばらくした夜の団らんで、姉は妹に言った。
「なんだか最近、よく声をかけられるのよね、男性も女性も」
 妹はそれを聞いて、うんうん、姉の周りで変化を喜んだ。
 ちょっと抜けている姉は、最近の現象を不思議に思いながらも、次の日もそのクリームを塗る。

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