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【前半】食品関連事業者向け EU圏進出勉強会③を開催しました

こんにちは、さっぽろ産業振興財団です。

「OUR BEST FOODS! FROM SAPPORO」の第三回目勉強会「海外展開セミナー」が12月7日、札幌市内にて開催されました!過去最多の44名様にお集まりいただき、活気あふれた会場よりその様子をお届けします。

コミュニティ「OUR BEST FOODS! FROM SAPPORO」、通称「アワベス」にはEU市場への進出をこれから始める事業者から、既にEU市場へ多数の製品を輸出している事業者まで幅広く参加しています。EU進出に関する情報の提供と勉強会を通じて、EU市場に対する理解を深め、国際展開の戦略を築くお手伝いをします。

今回の勉強会では、第一回勉強会で「EU圏における北海道の食の可能性」をご講演いただいたJETROの西尾さんに、再びオンラインでお越しいただき、現地のトレンドや見本市の活用方法について詳細なご講義をいただきました。また、記事の後半ではドイツ・ケルンで行われた世界最大の食品見本市ANUGAに出展された事業者の体験談や、さらに、ドイツで行った現地視察及び、現地で活躍するプロフェッショナルの方々とのインタビューもご紹介しています。

第三回勉強会の様子

第一部:見本市”ANUGA”から見る今後のフードトレンド予想

勉強会の前半はJETROパリ事務所の農林水産・食品担当ディレクター、西尾 友宏さんに現地パリからオンラインにてご講演いただきました。

ANUGAを踏まえたトレンド

現在、欧州ではどのような食品が注目されているのか、見本市ANUGAを踏まえた食品トレンドから大きく分けた以下の3つの分野をご紹介します。

【①代替タンパク質】
まず初めに、大きく着目されているのが、肉食文化のある欧州で現在「代替タンパク質」の普及が広まっていることです。そして最近では大豆をはじめ、プラントベースのタンパク源も急速に拡大しています。これまでの代替タンパク質といえば、味への期待値は低く、健康のためだけに食べている意識でしたが、ANUGAで実際に見たり試食したりした商品は見た目や味、食感さえも、通常の肉と変わらないものが多く、市場での研究と技術開発が進展していることが伺えました。
また、代替タンパクは畜産系の代替品にとどまらず、サーモンなどの魚や魚卵などの異なるタンパク源が注目を集めています。
そして、この分野で注目すべきは若者や新しい世代の起業家がこの分野に進出していることです。新しい技術や開発を進めるスタートアップ企業が急速に増えており、ANUGA出展企業は欧州だけでなく、アジア諸国や新興国のスタートアップも積極的に代替タンパク商品を取り扱っていました。 

【②〇〇フリー/健康食品】
続いて、健康食品として、「〇〇フリー」の商品に関心が寄せられています。欧州では特にグルテンフリーの需要が増え、従来のグルテンフリー商品はコーンスターチやそばを主成分にしていましたが、最近では大豆や米など他の穀物を使用した商品が増えて、その種類も拡大しています。また、ラクトースフリー商品も増加すると共に、アーモンドミルクなどの代替乳製品が人気を上げています。これらは環境への配慮と共に、消費者の健康意識の高まりに反映しています。
一方でこれらの商品は特に若い世代へ向けてファッション性の高い商品として展開されているのも現状です。環境や健康に配慮したライフスタイルを送っていることが、「かっこいい」とされ、流行りの服を着たり、ブランド品を身に着けたりすることと同じように、〇〇フリーの商品や健康食品が選ばれていることがあります。欧州では現在こういった視点でも小売分野や外食分野で、マーケティングすることが重要になっています。

【③ノンアルコール飲料】
飲料分野が急速な変化の広がりを見せています。欧州ではアルコールの消費量は減少傾向にあり、特に格安ワインやテーブルワインなどを選ぶ代わりに、良質なお酒を楽しもうという考え方が広まりました。ノンアルコール市場では、ワインやカクテルのノンアルコールが増え、さらに最近では、アルコールの代わりにCBDの成分を含んだ商品も注目を浴びているなど、新しい飲料市場が形成されています。アルコールを摂取しない人々が増えても、食事の一環として美味しい飲み物を楽しみたいという欲求は変わらずノンアルコール市場は今後も拡大していくでしょう。

これら3つのトレンドはいずれも、人々の健康や環境への配慮が共通しています。欧州など先進的な考え方が広がっている海外で、これらが強固になっていることが、将来の食品トレンドを理解する手がかりとなり、今後も世界的に拡大していくことが期待されています。

見本市の使い方

新型コロナウイルスの影響以降、オンラインでの仕事が急増していますが、だからこそ直接会って顔を合わせることの重要性が一層高まっていると感じます。特に食品分野の商談においては、直接味わってみたり飲んでみたりすることが最も重要で、見本市は感度の高いバイヤーに出会う最適な機会であり、バイヤーと直接コネクションを持つことが可能です。パッケージや資料だけでは難しい主観的な評価も、直接対話して生産者のコンセプトやこだわりをバイヤーに理解していただくことで、効果的にアプローチできるのも見本市の魅力です。
そして不特定多数のバイヤーと対話できる見本市は、営業活動のファーストステップとして最も有効なため、海外営業の実践の場として活用しましょう。

規制の調べ方

まず規制を調べる前に知っておくべきことは、EUの規制は品物ごとに異なるため、個別に確認が必要だということです。規制の詳細を全て理解し、適合性を把握するのは困難。基本的なポイントを把握した上で、輸出先の規制を熟知しているインポーターなど、実際の取引関係者の指示に従うことが大切です。
 
規制の内容を調査する方法について、以下の3つの手順を紹介いたします。

①     ジェトロ農林水産物・食品の輸出支援ポータル:
個別の品目ごとの規制内容が掲載されており、これを参照することで、それぞれの地域や品目における規制事項を理解できます。
 
②     農林水産物・食品 輸出支援プラットフォーム:
一部主要地域の規制内容に関するレポートがまとめられており、これを確認することで、実際の規制に対する理解を深めることができます。
 
③     ジェトロビジネス短信:
規制は常に変化する可能性があります。最新の規制内容については、ジェトロビジネス短信をご活用ください。メンバー登録することで、最新の情報を受け取ることも可能です。

輸出に向けて注意すべきポイント

欧州の食品規制に関する具体的なポイントを以下にまとめました。

①     EU HACCPの認定:
動物性原料を加工した商品に対する規制があり、製造工場にはEU HACCPの認定が必要です。

②     残留農薬規制:
商品ごとに残留農薬規制が求められることがあります。使用可能な農薬はポジティブリストで規定されていますが、基準が異なるため、事前に調査が必要です。

③     重金属汚染物質の規制:
食品において基準が厳格であるため、専門機関での検査が推奨されます。特に米、海藻、塩などに留意し、基準に適合するか確認が必要です。

④     食品添加物の規制:
使用可能な食品添加物はEナンバーが付与されています。各EナンバーはEUのウェブサイトで使用用途や条件を確認できます。特に着色料については国内に比べ条件が厳しいため留意ください。

⑤     ノベルフード (Novel Food):
EUで恒常的に消費されていなかった商品はノベルフードに掲載され、掲載されていないものは輸入ができません。

⑥     ラベル表示:
アレルギー表記対象品目が多く、栄養表示項目に追加が必要です。GMOの表記義務や健康表示に関する規制に注意してください。

⑦     容器包装規制:
プラスティック排除に関する動きが強まっており、フランスの例ではビスフェノールA(瓶の王冠裏に使用される防腐剤)などの特定の物質が禁止されています。また使用される再生プラスティックが規則に合致している商品にはリサイクル表示(ロゴ)が必要です。 

これらのポイントを考慮しながら、製品の輸出や販売においてEUの食品規制に適合するように準備しましょう。農薬、残留農薬、重金属などのデータ提出が必要な場合は、専門機関に相談することがスムーズです。

【販路を見つける】
欧州市場では特にフランスがブランディング可能な市場であり、フランスでの成功が他の市場での販路の拡大に繋がる可能性があります。また、ターゲットとなる消費者層を検討することも重要です日本食品は価格が高くなりがちなため、どの層にどのようにアピールするか戦略的に考えることが必要となります。
 
【有効な商品説明】
欧州では合理的でデータに基づいた具体的な説明が好まれます。商品の特徴や製法、歴史的背景について詳しく説明し、さらに料理との相性や調理法、利用方法についても具体的に提供すると良いでしょう。トレンド予測では欧州だけでなく、アメリカや日本のトレンドも把握しておくと有益です。直接営業においては、アポイントのない飛び込みよりも、インポーターやパートナーを通じて進めることが効果的です。

▶ 記事【後半】へ続く
後半では海外展開経験者との対談や、ドイツ・デュッセルドルフでの視察やインタビューなどをご紹介しています。