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問題を再定義する:対話をアップグレードする⑤

自分が本当に望む自分の在り方に気づくと、問題の見方が変わります。多くの場合、問題そのものの再定義が必要なほど変わります。

問題が変わったならば、そのアプローチも変わらざるを得ません。アプローチが変われば出てくる結果も変わります。ここに行き詰った対話を前進させる可能性が生まれます。

この記事では、行き詰った対話において、問題を再定義する方法と例を共有します。

<目次>
1.問題の再定義までのプロセス
2.問題の再定義の例
3.再定義した結果、何が起きたか
4.まとめ

1.問題の再定義までのプロセス

問題を再定義するには、「新しい自分の在り方」をつくりだすことが必要です。そのためには、まず「今までの自分の在り方」を振り返る必要があります。

<今までの自分の在り方を振り返る>
① 行き詰っている対話を特定する
② 行き詰っている対話で口に出されない心の中の会話をすべて書き出す
③ 今の自分の在り方を特定する(独善的、他責的、暴力的など)
④ 自分の会話のオーセンティシティの欠如を探す(正しさ、独善、揺ぎ無さ、心理的安全に依拠していないか)
⑤ 自分の会話の内発的動機、外発的動機を書き出す

ここで注意すべき点がいくつかあります。

まず、行き詰っている対話は現在も続いているものにします。たとえば、二度と会えない人との問題は解決できません。これでは問題を再定義する意味がありません。

チラッとでも心の中に浮かんだことはすべて書き出します。人間は自分を取り繕う達人です。自分に都合の悪いことは無かったことにしてしまいます。この点を十分に意識して書き出す作業を行います。

気恥ずかしいかもしれませんが、自分の家族や親友に「行き詰っている対話を明かし、そのように発言する自分を仮に隣で見ていたとしたらどのように感じるか」問いかけます。自分のオーセンティシティの欠如が他人の目で明らかになりますので、非常に示唆の多い作業です。

ここまでの作業は、以下の記事も参考になります。

・動的オーセンティシティという考え方:対話をアップグレードする①
https://note.mu/sec_chan/n/n790d3a38bd79
・オーセンティシティの欠如:対話をアップグレードする②
https://note.mu/sec_chan/n/ne01962126033
・内発的動機をさがす:対話をアップグレードする③
https://note.mu/sec_chan/n/na79831f5002a

さて、今までの自分を振り返る作業が完了したら、次はいよいよ新しい自分の在り方をつくりだす作業を始めます。

以下の問いに答え、最後に自分の新しい在り方を自分の心に響く形で言葉にします。

<新しい自分のあり方をつくる>
・本当は何を愛している?
・本当は何を世界に伝えたい?
・千年かかっても結果を目にすることができなくても取り組みたい大志は?
・自己表現として結果とは関係なく取り組む価値のあるものは?
・私の夢は?
・私が力を注いで生み出そうとしているのは?
・私が支持しているのは何?
■ 上記すべてを自分の心に響く形でまとめると?

例えば、「オープンで思いやりのある家族関係を築く」とか「より良い世界の実現へ貢献する人間でありたい」とか、短いフレーズにまとめます。すぐに思い出してつぶやけるくらいがベストです。

以下の記事も参考になります。

・自分の望む世界をつくれるとしたら?:自分の在り方を探る 対話をアップグレードする④
https://note.mu/sec_chan/n/ncf7c80b16cab

2.問題の再定義の例

ここに離婚した家族がいたとします。子供は片方が引き取り育てていますが、子供と離れて暮らしている方の親は子供と離れていることが辛く、できることならまた一緒に暮らしたいと考えています。

そこで、「また一緒に暮らしたい」と言ったところ「心が離れているのに一緒に暮らしても辛いだけだ」と反対されました。

この行き詰まった対話の問題は「また一緒に暮らしたいけれど、相手が反対するので暮らせない」です。

様々な心の声が聞こえます。子供にとって悪影響だ、経済的にも同居の方が効率が良い、子供と一緒にいたい、今なら上手くやれる、、、、。
書き出した声を振り返ると、相手の気持ちを尊重したものはなく、すべて自分の考えや感情でした。これを見て「自分は独善的である」と感じました。

「また一緒に暮らしたい」という望みの動機を探ると、一番の内発的動機は「子供と一緒にいたい」でした。ここから視野を広げ、どんな世界を自分は望むのだろうかと思いを馳せると、「誰もが自由でオープンで純粋な気持ちから行動できる、思いやりのある世界」を望んでいることがわかりました。

考えを自分に響く形でまとめてみると、新しい自分のあり方は「純粋な気持ちを尊重しあえる家族関係を築く」ことだと気付きました。

3.再定義した結果、何が起きるか

結果として、「同居するしないではなく、お互いの純粋な気持ちを尊重しあえるよう心が繋がっている方が重要だ」と考えが変わりました。

この場合は、当初の「また一緒に暮らしたいけれど、相手が反対するので暮らせない」という問題は消えて無くなります。

代わりに、新しい自分の在り方に基づいた「お互いの純粋な気持ちを尊重しあえるよう、家族の心が繋がるために何をしたら良いか」というものに変わります。

このように問題が再定義されたことで何が変わるでしょうか。

同居が目的になると現状の悪い点、同居の良い点を関係者へあげ連ねて説得に走ってしまうかもしれません。
しかし、家族関係を築くことが重要だと認識した後であれば、子供や同居親と会うときは、その時間自体を心豊かに過ごすようになるでしょう。現状の悪い点、同居の良い点などの話はどうでもよくなります。

子供や同居親にとっても、別居親が家族関係の構築にフォーカスしている状況の方が良いことが多いでしょう。

つまり、自分の在り方の変化に基づく問題の再定義は関係者にとってより現実的で受け入れやすく、メリットも多い選択肢を提供するのです。

4.まとめ

対話が行き詰まっている時、自分のあり方を見つめ直し、新しいあり方を発見すると、問題を再定義することができます。
再定義された問題は、過去の問題を消し去り、関係者にとってより良い選択肢を提供します。

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