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オーセンティシティの欠如:対話をアップグレードする②

オーセンティシティとは一貫性のことです。一貫性には過去にフォーカスしたもの、未来にフォーカスしたものがあります。対話において有益なのは未来にフォーカスした一貫性、すなわち動的オーセンティシティです。

対話の質を上げようと思えば、この動的オーセンティシティを意識する必要があります。

1.動的オーセンティシティの欠如

動的オーセンティシティが欠如すると、対話が硬直化します。

例えば、アラブ諸国のように互いのドグマが一歩も譲れないがために、相手を消し去るまで歩を進めます。これはオーセンティシティの欠如の基本的な形態である「揺るぎなさ」によるものとされます。

オーセンティシティの欠如には大きく4つのパターンがあり、ほとんどがこれらのいずれかもしくは複数に該当します。

<オーセンティシティの欠如の4形態>
① 正しさ(自分が正しく、相手が間違っている)
② 独善
③ 揺るぎなさ(固定的な考え、確固たる決心)
④ 安全圏(心理的な安全、労苦や羞恥を避けている)

対話に行き詰まった時は、自身の話している内容がこれらに該当していなかったかをチェックします。そうすると、ほとんどの場合、いずれかに該当します。

2.事例:妻との会話

例えば私の場合、正しさや独善さが強く出ることが多いです。
以前こんな発言をしたのを覚えています。

子供が1歳の頃、妻が肺炎にかかりました。子供も風邪をひいていました。
私は仕事を休んで子供と妻の看病をするつもりでした。
しかし、妻が普段育休でみんなに迷惑をかけているから仕事へ行くと言い出しました。
その時私は次のように言いました。
「肺炎なのに休めない職場などありえない。休めよ。休まないなら元気だということだから、俺も仕事へ行く」
しかし、結局妻は仕事へ行きました。私も仕事へ行きました。
子供は祖母に見てもらいました。

私の「ありえない」「休め」という発言には正しさ、独善さが強く出ています。また、「休まないなら俺も仕事へ行く」という半ば脅迫じみた表現を見ると、揺るぎなさもかなり強いですね。
その割には結局二人とも仕事へ行ってしまい、効果的な結果を導いていません。

3.事例の改善

今なら上のようには絶対に言いません。おそらく次のように話すでしょう。

「肺炎は重い病気だから、君の体が心配だ。僕にとって君は大事な人だから。体を大事にして仕事は休んでほしい。どうしても行かなければならないなら、せめて早く帰ってきてゆっくり休んでほしい」

どうでしょう。正しさや独善さはかなり減退したのではないでしょうか。また、相手に判断を委ねている点で揺るぎなさも減退していると思います。

改善例では自分自身の感情(心配)と必要としていること(君を大切にしたい)にフォーカスした言い方をしています。どこにも何が正しいことかという考えや意見は出てきていません。
このように言うと相手は抵抗心が起きませんし、何より思いやりが伝わります。

4.まとめ

実際には改善例の内容は言えていないので妻の反応がどう変わったかというのはわかりませんが、少なくとも前の言い方よりは良いと思います。

復習です。対話が行き詰まった時は、以下の4要素を確認します。思い当たるところがあれば、その対話は改善の余地があるということです。

<オーセンティシティの欠如の4形態>
① 正しさ(自分が正しく、相手が間違っている)
② 独善
③ 揺るぎなさ(固定的な考え、確固たる決心)
④ 安全圏(心理的な安全、労苦や羞恥を避けている)

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