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世界中で平和を叫ぶ人達〜私たちにできること〜

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ある人は言う、コロナですら一つにできなかった人類をロシアの侵略は一つにしたと。しかし、警察に厳重に警備された重々しいロシア大使館。その大使館前の交通量の多い道路の向こう側でたくさんの警察官に囲まれながらSTOP WAR IN UKRAINE と書かれたプラカードを持ち、抗議を続ける5人のウクライナ人とそれを通り過ぎる無数の日本の人々。更には、ウクライナ侵攻の陰でなかったことのように扱われるシリア、ナゴルノ=カラバフ、イエメン 、ミャンマークーデター等数えたらキリがない紛争や迫害、虐殺、それらを見なかったことにして世界が一つになったなんて口が裂けても言えるはずがない、そう思った。

2022年 3月2日 凍える大都会東京の煌びやかな六本木の街を歩いていく。道なりに10数分歩くとその場所は多数の警察に警備されており、平和の国日本とは思えない重々しい雰囲気に包まれていた。そんな、日本のロシア大使館の雰囲気から今世界が異常な事態に包まれているということ、その一端を感じることができた。

、、、、こんな状況じゃあそれもそうだよな、、、。故郷、祖国、友人や家族ががロシアに蹂躙されているている人たちや、ウクライナに家族や最愛の人がいる日本人がロシア大使館に突入してもおかしくないし、、、。俺もウクライナの人の立場だったら、、、。ロシア軍がウクライナに侵攻を開始してから約一週間経つ、この一週間で世界は、世界のルールは一変した。テレビで流される多くの避難民たちの映像、ウクライナの首都キエフや第二の都市ハリコフへの無差別攻撃。日本でいう東京や大阪がミサイル攻撃され、空襲を受けるようなものだ。そして、プーチンによる核兵器の使用をちらつかせた脅迫。それに、対応するようにロシアへの経済制裁、ロシア人への差別も始まった。

警察に厳重に警備された重々しいロシア大使館、その大使館前の交通量の多い道路の向こう側でたくさんの警察官に囲まれながらSTOP WAR IN UKRAINE と書かれたプラカードを持つ5人のウクライナの人たち。祖国が奪われる恐怖や悲しみに負けまいと押しつぶされないように気丈かつ絶望の入り混じった表情で抗議を続けている。

人口1396万人の大都会東京の中でたった五人でロシア大使館の前で必死に反戦を訴えていたのだ。、、、。たった5人で暗殺や毒殺など怖いイメージのあるロシアの大使館の前で反戦を訴える、、、どれだけ勇気のいる行動だろうか。数えきれない、サラリーマン、学生、カップル、無数の人々はそれを通り過ぎて行く。2月26日渋谷での反戦デモで2000人もの人が集まり、ウクライナの平和を叫んだと聞いた。中には日本人も沢山いたと。

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ウクライナ支援を表明するために、青と黄色のウクライナの国旗仕様となった東京都庁。税金をそんなことで無駄遣いするなと言う声もSNSでちらほら見かける。筆者からしたらそんなSNSの声愚かだとしか言いようがない。

しかし、ロシア大使館前の5人だけの抗議デモの雰囲気は渋谷の時の様子とはまるで違うようだ。俺は渋谷のデモにもいきたかったが、予定が合わず行くことはできなかった。だからこそ、彼らがどんな人でどのような思いで、抗議をしているのか、彼らのことが知りたくて、貴重な休みを使いこの場所に来た。そんな俺ですら、彼らの覚悟を決めたとも言える雰囲気や周りの警察官の威圧感により、声をかけずに通り過ぎてしまいたい、目を背けたいそんな気持ちになった。それほどまでの重々しい空気がロシア大使館と5人のウクライナの人たちの間には立ち込めていた。港区女子などの言葉があるような、港区のきらびやかなイメージとその張り詰めた雰囲気はまるで逆だった。多分この異様な空気は今世界中を包み込んでいる。

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声をかけた、彼らは想像もつかないような大変な状況だと言うのに写真を撮影させてくれた。何もかも諦めたとも言えるような悲しみと絶望が入り混じり、それでも戦争や世界の理不尽と戦い続けると言う強い意志を秘めたような表情。その鬼気迫る雰囲気に俺は圧倒された。これが、、覚悟決めた人達、、、。ロシア大使館前の講義は治安の関係で最大5人しか講義活動が行えないことになっているという話を聞いた。たった5人で、、、、どれだけの覚悟を必要とするのか。それに本当はもっと沢山のウクライナの人が抗議をしたいはずだ、、。自分たちの友人や家族だけでなく、故郷や国すらも蹂躙されなくなるかもしれない彼らにとってもう覚悟だのなんだのいっていられる状況ではないのかもしれない。一体、、、どんな思いで、、、、。

”、、、応援してます、頑張ってください。”言いたいことも聞きたいことも山ほどあったが俺に言えたのはそんな言葉だけだった。そして、そのあまりにも重い空気から逃げるようにその場を去るしかなかった。彼らが抗議していた3月2日の夕方は、凍えるように寒く、みんなで辛いときはプラカードや荷物をお互い持ち合い。”荷物を持っていてくれてありがとう”そんな声を掛け合いながら彼らが抗議しているのがわずかだが聞こえた。そんな、鬼気迫る雰囲気の中でも、お互いを気遣い、自分自身が潰れそうなのに、互いを支え合う、そんな彼らの健気な姿に胸を打たれた。それは、まるで圧等的な力に押しつぶされまいとするウクライナの姿であるようにも思えた。そんな彼らの前を逃げるように去るしかない自分の無力さを痛いほど感じた、、、。また何も出来なかったのだ、、、。難民の人や迫害されている人のために何かしたい。正義を貫きたい。その覚悟を持ってフォトジャーナリストなどと言う身分を名乗っているにもかかわらず。俺には何も出来ていない、、、それが、あまりにも悔しくて、何故だか泣きそうになった。

彼らの表情を俺は痛いほど知っていた。世界の理不尽さに今までの全ての生活や最愛の人の命すら奪われたナゴルノ=カラバフ難民の人たちと表情や雰囲気と共通するものがあった。


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2020年の44日間戦争でドローン夜爆撃で最愛の家族が奪われたナゴルノ=カラバフ難民の家族

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44日間戦争で最愛の人を失い正気を失った女性とお母さんが大好きな娘。精神を病んでもなお自分のことを愛する娘を必死に守ろうとしている。

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戦争で故郷を追われ、今も敵軍からの銃弾が鳴り響く中で暮らしている家族。このお母さんとの誓いは忘れてはならないのだ。

抗議するウクライナの方々を前に取材したナゴルノ=カラバフ難民の彼らの顔が、声が頭の中に浮かんできた。

俺は散々話を聞かせてもらって、惨状を絶対伝えると彼らと約束したのに、、、何も出来なかった。写真の力で彼らの声を届ける、偉そうに吠えていた俺の目の前に何者でも無いものが語る正義、たとえ難民の方々の話を詳細に聞いてきたとしても、肩書きがない俺が語ってしまったせいで、普通の人がGoogleで5分で調べたような知識や偏った本で得た知識を得た人に、何も知らない馬鹿がと一蹴されてしまう現実だ。ウクライナの戦争で困っている人のためにも、話を聞かせてくれたナゴルノ=カラバフ難民達の誠意に報いることも俺の実力不足でできていない。

俺は思い出した。その、悔しさを。抗議をするウクライナの方々の表情を見て俺は改めて思い知らされたのだ自分の無力さを。俺は無力だ、、、、。44日間戦争で家族を亡くした人たちと対話した時も、あまりにも重い空気で俺はその場で固まってしまったのを思い出した。勝手に話を聞きに行ったのに俺は、、、。なのに俺なんかに真剣に話してくれて、笑顔で見送ってくれた、、、難民の人たちのキラキラした笑顔を思い出した。国を追われた彼らや、今侵略を受けているウクライナの人々にの苦悩や計り知れない絶望、恐怖、悲しみと比べれば俺のしょうもない悩みなんて大したことはない。彼らも彼らの国や故郷、家族のために何もできない、、そんな絶望感を抱えているのだろう、、。だからこそ、俺はもっと彼らの声なき声を声を聞かなければいけない、そして一人でも多くの人に声なき声を伝えなければならない。そう思った。もっと取材に行って、彼らの声をもっと世界に拡散する。それが、俺が彼らとした約束だから。

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過酷な状況でも陽気だったシリア難民。靴を買ったあげると約束したのに、コロナで果たすことができなくなったシリア難民の子供。写真は迫害の危険があり、載せられないが、クルド人の人たちは各地で迫害を受けているのに誰よりも優しく、毎日晩ご飯を作ってくれた。あの飯と優しさの恩は忘れない。

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経済制裁に苦しむイラン人達。色々偏見を持たれているが、世界一親切なイラン人は親切だと個人的に思う。2年前、自分が癌なのに愛する娘を戦争が起きるかもしれないイランから出したいと語っていたイランのお母さんの娘だ。また、イランにはたくさんの懸命に生きるアフガン難民の子供達がおり、売るためのゴミをくれと筆者に声をかけてきて衝撃を受けた。

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軍の圧政に苦しむミャンマーの人たち。アジア最後のフロンティアミャンマーにいくのは筆者が若い頃からの夢であった。そんな、ミャンマーで待ち受けていたのは美しい文化と人の笑顔であった。だからこそ、現在のミャンマーの状況は胸が痛む。軍の暴虐無尽さは決して許されるものではない。

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日本でミャンマーの国内避難民のために、募金活動をするミャンマーの方々。筆者も募金活動を手伝い、話を聞きに行ったことがある。彼らの話もnoteに書こうか迷ったが、現地に取材に行ったわけではないから書く資格はないと書いてなかったが、声なき声を書くという意味では書くべきかもしれない。彼らの家族や友人の中には身の危険が迫っている人たちもいる。

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いろいろな偏見を持たれているイスラム教徒。イスラム教の祭イード(犠牲祭)の時、パキスタンのある村は異教徒である筆者を村総出で歓迎してくれ、料理を振る舞ってくれた。このような優しい面もイスラム教にはある。イスラム教徒というだけで、偏見を持たれるがいろいろな人がいる。

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そして、色々偏見を持たれているユダヤ人。イスラエルで出会った誰よりも心優しきユダヤ人の友達。イスラエル軍による、パレスチナ入植は決して許されてはならないが、人と政府は違う。筆者がイスラエルに滞在した際、筆者が通った15分後にに、その場所で警察がパレスチナの人に銃で撃たれる事件があった。彼はとても怖がっていた。

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パレスチナ、西岸地区でボランティアをしているフランス人の友達。親戚がいない筆者は勝手にフランスの祖父だと持っている。彼の目の前でパレスチナの人の農園がイスラエル軍に焼かれた事を訴えていた。彼との出会いがある意味国際情勢やイスラエル、パレスチナに興味を持つきっかけだった。

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2020年44日間戦争で故郷を失ったナゴルノ=カラバフ難民の少女。

父親が自ら命を絶った時、人の命を奪うような真似をしたのに権力やお金で正当化されるような強欲や悪を絶対に許せないと思った。人の命を奪っておいて笑って生きていくような人間がいる。そんな世界が許せなかった。そんな人間も許せなかった。そして真実を歪めて聖人、または成功者として扱われる悪が許せなかった。だから俺は悪にも権力にも屈しない、正義を貫くと決めた。権力や金で正当化される悪や犯罪があるのなら絶対に許さないそう父の亡骸に誓った。

そんな、絶望に打ちひしがれていた時俺に優しくしてくれて、生きる意味を教えてくれたのは世界中の人の優しさであった。何人かの彼らはすべてを失った難民であり、迫害を受けている少数民族の人であり、偏見で恐れられるムスリムでありユダヤ人であり、悪の枢軸イラン人だった。だから、こんな歪んだ世界を許せないと思ったし、彼らの本当の美しく、優しく、力強い生き方をみんなに知ってほしかった。それが、彼らへの恩返しであり、俺の責務だ。

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筆者に生きる意味を教えてくれた中央アジア秘境の子供達

ある人は言う、コロナですら一つにできなかった人類をロシアの侵略は一つにしたと。確かに今まで戦争や難民に興味がない人達もSNSで平和を叫んだりしている。それはある意味で素晴らしいことだ。しかし、俺はそうは思わない。ロシアに世界の注目が集まる中で、内戦下のシリアではアサド政権やロシア軍の攻撃や、武装勢力により現地の罪なき人々の生活は蹂躙されている。トルコはシリアでクルド人組織に攻撃を続けており、現地クルド人はもちろんヤジディの人の病院なども破壊されている。アフガニスタンではこの冬2280万人の人が飢餓で苦しんでおり、その内870万人が緊急事態の飢餓に陥っていると言われている(WFP World Food Programmeによると)。ミャンマーでは村や街で軍に市民が虐殺されている。そして、アルメニア、アゼルバイジャンの間でのナゴルノ=カラバフも平和維持軍ロシアがこんな状況下で再びいつ戦闘が始まってもおかしくはない。それだけではないウイグル、イエメン 、アフリカ諸国、パレスチナ、、、例を挙げれば枚挙にいとまがない世界中に紛争、難民や虐殺の問題がある。

確かにウクライナに皆が関心を持ち、ウクライナの平和を叫ぶ、それは素晴らしいこと。しかし、そんな世界中の苦しんでいる彼らの悲劇に目を背け、ロシアが悪い、プーチンが悪いと挙句ロシア人に差別をする人まで現れているこの状況で。アメリカではロシア料理のレストランを経営しているアルメニア人が人殺しなどの誹謗中傷を受けているという。そんな状態で、ロシアの侵略が世界を一つにしたなどとは俺にはいうことができない。ただ、共通の敵を作り、正義を叫ぶだけでは今までと同じ過ちを繰り返すだけだ。せっかく、多くの人々が平和や反戦、難民に興味を持ってくれたのだから、その関心や優しさをウクライナ以外の国や地域で苦しむ人たちにも少しでも差し伸べてあげて欲しい。渋谷のウクライナデモには日本人も含めて2000人もの人が集まり、ウクライナへの募金で20億円もの大金が集まった。そんな日本の人たちの平和やウクライナを思う気持ちは素晴らしいものだ。皆平和のために自分ができることをしているのだ。

だから、俺も平和のために自分ができることをするべきだ。俺にできること、それはナゴルノ=カラバフ難民100人取材の記事を書き切り、春の取材で現地に行って声なき声を聞き、現地の人と対話して、それを記事にして地道に一人でも多くの人の伝えることだ。世界中の声なき声を、、、それが平和のために私たちにできることだ。

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