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アートとビジネス 2

少し前に流行した「ビジネスにはアートが必要」というフレーズ。 
私も実務の中で、そう感じています。現在、私は士業での活動の傍ら、インクルージョンや教育、働きがいのある環境創りといった社会課題解決型の活動を行っています。こういった「社会課題解決型のビジネス」には、特にアート的なセンスが必要だと思います。
ビジネスとアートの関係に関しては、山口周さんの書籍などが有名ですね。
このコラムでは、もっと等身大で身近な視点で、私が感じている「ビジネスにおけるアートの必要性」を綴りたいと思います。


【コラムの概要】
1.社会課題解決型のビジネスも、アートも、「人々を魅了する」
  という点で本質は一緒。
2.ビジネスの実務でも、シンプルかつ明快に意義・解決手法・効果を、
  人々に訴求するセンスが必要。それはアーティスト達が作品を創る
  過程で不可欠なセンスに似ている。
3.人々を魅了する活動に全神経を注ぐアーティスト達との交流によって、
  ビジネスパーソンは、発想力とプロジェクトをやり切る突破力を
  鍛えられるのではと私は感じている。
4.その為、アーティストのセンスや彼らの作品と交われる街は、SDGs
  に繋がる社会課題解決型のビジネスが生まれやすいのではないか。


ビジネスに必要な美意識は意匠センスだけじゃない。

ビジネスに美意識が必要というのは、見た目をかっこいい製品にするデザインセンスとか、建築意匠のセンスとか、そういったプロダクトの意匠に関してではありません。
もっと本質的な部分です。課題の発掘、手法のデザイン、プロモーションといった、一連のプランニングにおいて、その根底に美意識が必要だと私は思っています。

私の場合 アーティストとの交流で得られるセンスと突破力

少し、私の体験を綴ります。ささやかな体験です。
私の同郷の友人で、研ぎ澄まされた感性を持つミュージシャンがいます。作詞作曲とボーカルを担当。多彩な彼は美容師でもあり、大きな海外コレクションにも参加していました。
彼は、私にはない感性を持っています。そして曲を作り上げるときの突破力・ゾーン状態には、いつも驚かされます。
そんな彼から私は多くの刺激を得ました。

作品に触れること、アーティストと交流すること

数年前から私は、彼やアーティスト仲間と毎週末の夜、彼が経営するバーやGiG会場で一緒の時間と空間を過ごすようになりました。彼らの曲を聞くだけでなく、曲を創るまでの過程、どうやったらファンに感動を与えられるか・心地よくできるかなどについて、彼の想いを聞き語り合います。ものすごい熱量です。

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逆に、私からも、自分の社会課題型ビジネスに対する想いを彼らに語ります。彼や友人のアーティスト達の意見は非常に興味深いものがありました。

「ところで、その社会課題にみんな興味あるの?自分事じゃない課題に、どうやって振り向かせるの?」
「もっとシンプルでわかりやすいやり方ないの?みんな、めんどくさがって参加しないよ。」
「伝わらないよ、こんなまどろっこしい言い回し」
「リリース画像ってジャケ写に似てるよね。この画像に、伝えたいこと全部入ってる?ここ一発勝負だよ。」

そして、彼が作品を生み出すときの突破力・ゾーン状態には驚かされます。
時間も予算も限られている彼のレコーディング時の集中力はすさまじいものがあります。

思い出深い原体験があります。
その当時、私は仲間達と、ある施設を運営していました。しかし成果が出せず、施設の半分のスペースを閉鎖することに。残り半分のスペースでは十分なサービスが出来ず、窮地に陥りました。
そのことを彼と、彼のバーで語り合いました。長い時間、話していると、彼から突拍子もない発想が。
それは、狭隘なスペースの中で、従来より広がりのあるサービスを提供するという発想。おもわず
「どうやって?」と聞くと、
 彼は「わからない。それは君が考えること。」
「前例とかあるの?」と私。
彼は「しらない。 それは君が調べること。」
彼は「今の状況を逆手にとるのって良くない?歌詞にするなら・・・」といって彼がデザインしたフレーズは、

一坪から世界へ

シンプルでわかりやすい、このフレーズから、私には、実際に提供するサービス・シーン・人々の笑顔が、次々に頭に浮かび、それが消えないうちに一気にPCに打ち込みました。私もゾーンに入ったような不思議な感覚がありました。
具体的なイメージが出来ると、突破力もついてきます。仲間達とイメージに向かって一気にサービスを作り上げました。
お陰で、その施設は今も多くの人々に利用されています。

インクルエントランス2

ビジネスもアートも本質は「人々を魅了する」こと

私たちの社会解決型ビジネスにも、課題を発掘するセンス、シンプルかつ明快な課題解決手法をデザインし、人々に興味を持たせることが重要です。

それはアーティストが人々を魅了する作品を生み出す過程やセンスと同じだと私は思います。人々の悩みや想いを表現し、心地よさや安らぎに変えるセンス。

ビジネスもアートも「人々を魅了する」点でプランニングは本質的に同じだと思います。
生み出す作品が異なるだけ。私たちビジネスパーソンの作品は「プロジェクト」

「プロジェクトの社会的意義に人々はワクワクしてくれるか?」
「解決する手法は、シンプルで解りやすいか?」
「得られる効果は心地よいものか?」

私たちの作品を、人々に訴求するものが「プレスリリース」。
人々の美意識に響くかが試される、私たち実務家の「ジャケ写」のようなもの。

人々の美意識に届くことに全神経を注ぐアーティスト達と交流を持ち、彼らのセンスに触れ、語り合い、時にはアドバイスをもらうことで、我々のような実務家は、発想力とプロジェクトをやり切る突破力を得られると、私は感じています。

アーティスト達との交流がある街で、SDGsの取組みが生まれる。

私は自分の実体験から、アーティストのセンスや彼らの作品と交われる場所では、新たな創造や、SDGs的な課題解決型のビジネスが生まれやすいと感じています。そのような場がある街には、ワクワクするような出会いや、新たな創造があると思います。

私の場合、その場所は、小さな街の小さなバーとGiGでした。

このコラムでは、アーティストに限定しましたが、アーティストに限らず、多様な価値観を持つ人々との交流、インクルージョン&ダイバーシティが新たな価値創造に繋がるのと同じロジックです。

私自身は、アーティストのような美意識を持ったビジネスパーソンには程遠いですが、そうありたいと思っています。

まとまりのない話になりましたが、以上のような視点をもって、東京の街に溶け込んだアートやアーティスト達の活動の場を探しながら、街歩きを楽しんでみては如何でしょうか。

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