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過労死白書と『睡眠不足』


厚生労働省が昨年8回目となる「令和5年版過労死等防止対策白書」を公開したところによると、「睡眠」というキーワードが105回も登場している。この白書は過労死等防止対策推進法に沿って政府が毎年国会に提出するもので、過労死を防止するために講じた施策の状況について報告するよう義務付けられている。

過労死問題は長時間労働と表裏一体。「理想の睡眠時間」と「実際の睡眠時間」のギャップが大きい労働者ほど、うつ病や不安障害が疑われる比率が高かったとの調査結果が出ている。

短睡眠時間と健康リスクの相関性については以前から深く論議されてきた。すでに2001年には労災認定に関する厚生労働省の検討会で睡眠不足が取り上げられ、最近では2019年4月に施行された働き方改革関連法案を策定する論議の中でも問題視されている。

理想的な睡眠の個人差はあるものの、健康を害する危険性の高いことが実証されている6時間未満の短時間睡眠は避けるようにしたい。アメリカのメタデータによると、たった1日でも睡眠不足があると、その後最低でも数日の間にしわ寄せがいく。

今回の睡眠指針の改訂でも睡眠医学や疫学を専門とする医療関係者や研究者が集まり、厚生労働省が主催する研究班の場で数年にわたり検討を行ってきた。

新しい睡眠指針ではメタ解析などで科学的に証明された信頼性の高い指針(推奨睡眠時間のような数値)については「推奨事項」として重視している他、若干エビデンスが不足しているけれども睡眠指導に役立つ情報を「参考情報」として取り上げている。

例としては、快適睡眠のための寝室環境、運動や食事、カフェインやアルコールの影響、妊娠や子育てと睡眠問題、夜勤・交替勤務問題、そして睡眠障害などだ。

バズワードとしては『睡眠休養感』があげられる。これは睡眠で休養が取れている感覚のことで、必要睡眠時間には大きな個人差があるので、同じ7時間睡眠でも疲労回復に十分な人もいれば、不足な人もいる。そこで睡眠充足度を知る手がかりとして今回の睡眠指針では「休養感」という指標が取り入れられている。

実際のところ、睡眠休養感が低い人は、心筋梗塞や狭心症、高血圧、糖尿病、うつ病などに罹りやすいことも疫学調査から明らかになっている。

これまでの「8時間睡眠」というコンセプトに盲目的に従うのではなく、もっ身体の声を聴いてあげること、そしてその声に基づいて、睡眠に優先順位を持たせることが鍵となる。

十分な睡眠がとれていないと、細胞内のテラメア(クロムゾンの先端のキャップのような部分)が短くなる速度が速いことがわかっている。テラメアの長さは、そのまま健康寿命と相関し、喫煙やストレスとも関連している。

健康に生きていくための必須ブロックとしての睡眠。毎日の生活の中で見直してみることが大切だ。





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