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コロナワクチン予約システムベンダーが明かす、365日奮闘の舞台裏③

こんにちは、サイシードCOOの叶です。こちらのnoteは、弊社サイシードがコロナワクチン予約システムの最大手ベンダーとして、コロナウィルスと共に怒涛の1年間を過ごしてきた舞台裏を3部作で紹介している第3部です。
エピソード1,2をご覧になっていない方は、そちらから読んで頂くことをおすすめします!


公共領域のDX推進のためにベンチャーが果たせる役割はあるのか?

第3部では、コロナ対策のど真ん中で1年を駆け抜けた私の視点から「公共領域のDX推進ために、ベンチャーがどのような役割を果たせるのか」について、最近の動向も含めて私見を述べさせていただきたいと思います。

日本の官僚制度の凄さ、官僚の優秀さはズバ抜けている

言うまでもありませんが官公庁も自治体も、職員(官僚)の方々は極めて優秀です。

・練馬区モデルで小病院での接種を実現
・ワクチンの廃棄がほぼない
・接種間隔間違いなどの事故がほぼない

を実現することは、超綿密なオペレーションの設計と現場マネジメント能力が求められます。
しかも、河野太郎大臣による無茶振りに近い超高い目標に対しても、現場の努力により1日170万回の接種を実現してしまいました。

とにかくスピードを優先で、細かいことを切り捨てる諸外国に対して、細かいところまでほぼ完璧に実施し、かつ接種率でも諸外国を上回るというミラクルを達成してしまう省庁・自治体職員、そして日本が長年築き上げてきた官僚組織には感激しました。
(個人的には、メディアにはぜひこの偉業をもっと報道してもらいたいです)

アナログ前提からデジタル前提の事業設計に転換する

自治体の事業も官公庁の事業も、一般住民を相手にする場合、アナログ前提で考えられることが多いです。公平性の観点から、インターネットが使える人と使えない人がいた場合、使えない人に合わせて紙での運用になってしまいます。
いくら公務員が優秀でも、アナログ運用では正確性・効率性に限界があります。最初からデジタル前提で、対応できない人だけアナログな方法の救済策を設けるという考え方であれば、大幅に効率化が可能です。

「そんなこと現実的なの?」と思うかもしれませんが、実は既にデジタルを使える人の方が使えない人を上回っています。
下記のグラフは弊社の予約管理システムを導入している人口2万人程の高齢化が進んでいるある自治体における、予約取得方法の内訳です。

(左)年齢と手段毎のワクチン接種予約方法の内訳、(右)全予約の手段毎の内訳

グラフを見ると分かりますが、若者はもちろん、高齢者でもそれなりの割合はシステムで予約をしていて、IVRも含めると全体の半数以上はシステムからの予約になっています。
民主主義において「少数のために、多数の人が不利益を被る」構造は長続きしないので、これからはデジタル前提の事業設計がスタンダードになるでしょう。

ちなみに、事業者対象の場合は、経産省主導で作ったgBIzという仕組みで、法人のオンライン手続きを可能にしています。この素晴らしい仕組みが他の省庁の事業でも当たり前に使われるようになる日も遠くないはずです。

(画像)経産省HPより

デジタル庁の誕生でクラウドへのパラダイムシフトが一気に進む

行政のデジタル化をリードする組織として、御存知の通り2021年9月1日にデジタル庁が発足されました。

「デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指します。」

デジタル庁、組織情報

発足直後にVRSの立ち上げを猛スピードで行い、現在は自治体の業務システムのクラウド化にも猛スピードで取り組んでいます。

自治体の主要業務で使うシステムは、ほぼ全てオンプレ環境で作られています。機微な情報を扱うため、LGWANという閉域網内でシステムを利用し、その端末はインターネットに接続しないという前提がありました。
ただ、単独のシステムが1718自治体それぞれで存在しているため、国全体の改修・運用コストが莫大にかかります。
それらを開発するのは歴史の長い大手SIや地場SIで「役所に物理的にサーバーを設置し、保守担当を常駐させる」というようなビジネスなので、ベンチャーが入る余地はありませんでした。

デジタル庁はこれらの基幹システムをクラウド化する取り組みを行っています。

1,基盤となるサーバー(ガバメントクラウド)を認定:現状AWSとGoogle Cloud
2,基盤システムの要件定義を行い、仕様を公開
3,仕様を満たすサービスをマーケットプレイスのような形で公開し、自治体ごとに複数ベンダーのクラウドサービスから選択できる

標準仕様書を見ていただけるとわかりますが、1つ1つのシステムの要件は当然かなり重いです。その上、開発しても導入されるかわからないので、既存ベンダーがシステムをクラウドに移行し、それをそのまま利用する動きが主流になると思います。
とはいえ、全く参入しようがなかった状態から、システム一本で勝負できる土壌を整えてもらったのは、革新的なことです。

私は個人的にデジタル庁に対する期待は非常に大きいです。

デジタル庁、組織情報

デジタル大臣になった牧島議員と直接お話したことはありませんが、副大臣の小林議員は政務官としてVRS導入を主導した際に、予約システムベンダー向けの説明会でお話させていただきました。
とてもクレバーで、システムについても細部まで理解されていて、かつイケメンという政界のスーパースターです。

現在の政務官になった山田議員は大学時代のゼミの教授でした。
技術経営をテーマとする「山田ゼミ」という名前で、学生が起業に対する解像度を高められる素晴らしいゼミでした。
ゼミの途中で「私、来月から議員になっちゃったから、山田ゼミ終わるわ」という伝説を残した人物ですが、自身で創業した企業を上場させた経験があり、議員になった当時からニコ生やYouTube Liveで政策の配信をするくらい先端技術に精通していました。

その他にも、私が業務で関わった方で「凄い人だな」と思う方々が参画していて、まさにオールスター軍団の様相を呈しています。
したがって、デジタル庁の取り組みによって、ある意味でベンダーロックイン状態になっている自治体のIT市場をさらに開放してくれると期待しております!

クラウド利用ならベンチャーと相性が良い

これまで行政のDX化の動向をメインに説明して来ましたが、この章が本noteの結論です。
クラウドを前提としたシステムは、UI/UXの概念やアジャイル開発に慣れている若いIT企業にとって相性が良い
ことは間違いありません。
そしてオンプレの地理的・人員的制約がないので、多くの自治体に導入できる可能性があります。

特に、ベンチャー企業が価値を発揮できるのは、緊急性があるケースだと考えています。自治体や官公庁では、予算成立から事業実施までの期間が非常に短いケースは少なくありません。
大手企業だと躊躇する条件であっても、意思決定が早く多少のオーバーワークが許されるベンチャー企業の爆発力が隠れた競争優位性だと考えています。

「クラウドサービスって、インターネット接続が必須になるけどセキュリティ大丈夫なの?」と思われる自治体担当者の方向けに補足すると、セキュリティ対策の方法は色々あるので適切に対応すれば全く問題ありません。
例えば、LTE over IPという技術を使えば、高速通信可能な閉域網を簡単に構築でき、LGWAN同様通信経路の傍受はされません。
合わせて、利用端末のアクセス先を制御すればウィルスの侵入を防げますし、仮想デスクトップサービスを使えば利用端末にデータは残りません。

また、事業者側が開発に失敗するリスクを回避するために、2,3社に発注する選択肢もありえます。コスト構造が大きく異なるので、それでも大手SIに発注するよりもトータルで低いコストになるでしょう。

サイシードが目指すところ

前の章では、日本の行政システムがクラウド化されていく中で、ベンチャー企業が大きな役割を果たせるのではないか?ということを書きました。
最後に、サイシードとして今後どのような役割を果たしていきたいか、そこでどのような方と一緒に取り組みたいかを紹介させていただきます。

公共領域のDXにも注力していきたい

弊社はこれまで民間企業のコールセンターやバックオフィスを対象に業務効率化してきましたが、コロナワクチンのプロジェクトで公共領域においてもDXの余地が大いにあると分かりました。

例えば、クーポン券にするか現金給付にするかで話題になった「子供への10万円給付」事業ですが、クーポン券給付にした場合、
受け取り意思確認用紙の郵送→用紙、本人確認書類等の返送→クーポン券の到着→クーポン券を店舗で利用→店舗から事務局にクーポン券を郵送→事務局から店舗に入金
という凄まじいアナログ業務が発生します。
gotoトラベルの地域共通クーポン券も、似たようなフローです。

クーポン券を申し込んでから利用完了するまでの事務フロー

このように改善余地の大きい公共領域のDXにおいて、一般住民が利用するシステムはLINEアプリが最も受け入れられやすいと考えています。
既に多くの自治体ではLINE公式アカウントを導入しており、福岡市や渋谷区など先端的な自治体では、LINE公式アカウントが書類の申請や窓口予約の入り口となり、住民サービスの中心的な役割を果たしています

私も実際に利用したことがありますが、区役所に行かなくても書類を受け取れるので非常に便利です。

渋谷区LINE公式アカウントで書類の発行申請の流れ

LINE社ではLINE公式アカウントの他にもOCR、AiCall、eKYCなどAI技術を活用した様々なソリューションを提供しているので、これらを組み合わせることで業務プロセスのDXが完成します。

先程のクーポン券の給付でLINEを活用すれば、郵送は最後の1回で済みます。

1,自治体のLINE公式アカウントから、給付の案内が来る
2,LINEアプリから給付申請フォームを開き入力
3,入力後、eKYCでそのまま本人確認を実施
4,クーポン券の郵送を行う

もちろんデジタル申請ができないユーザーはアナログ申請の余地を残す必要はありますが、半数の住民がデジタルを選択すればその分事務コストが大幅に削減できます。

自治体の業務を効率化することが日本全体の生産性を向上することに繋がり、働き方改革・賃金上昇に直結する意義のあるミッションだと捉えております。

サイシードでは、社員・業務委託含めて積極採用中です!

オフィス(住友不動産新宿セントラルパークタワー)前での集合写真

やりたいことは明確ですが、とはいえ弊社はまだまだ小さい会社なので、大きな仕事をするには多くの仲間が必要です。
サイシードでは「メンバーが自己肯定感高く働けること」をインナービジョンとして設定しております。そのためには、金銭的な報酬を競争力のある水準に設定することはもちろん、成長実感や社会的意義も重要だと考えています。

成長実感を得るには成長する環境に身を置く必要があります。
キングダムで李牧が「大戦は人の成長を強力に促す」と述べたように、弊社では大戦級のプロジェクトを経て若手社員から傑物が誕生するケースが続出しています。
そのようなプロジェクトがたくさんあるので、退屈させないことをお約束します!(どのシーンか思い出せない方は、合従軍の慶舎 VS 麃公のあたりを読み返してください笑)

画像:キングダム 27巻

このnoteを見てサイシードで働くことに興味を持って頂いた方は、ぜひお気軽にTwitterのDMからご連絡ください!

官公庁職員の相談や、企業の協業依頼もwelcomeです!

このnoteを読んでいただいている多くの方は、自治体の関係者や官公庁と事業を行っている企業の方だと思いますので、協業等のご相談も大歓迎です。

官公庁担当者であれば、
・自治体でDX構想はあるが、何から実施していけばわからないので相談したい
・省庁の事業でシステムを刷新したいので、入札に参加して欲しい
・特定の業務をデジタル化したいと思っているが、どうすればよいか教えて欲しい

企業の社員であれば、
・自治体向けに人材派遣等を行っているが、IT導入に課題があるので協業したい
・自治体向けに提供しているオンプレのシステムをクラウドサービスに移行するにあたって協業したい

など、であれば弊社がお役に立てることがあると思います!
ぜひ問い合わせフォームより、ご相談いただければ幸いです。

まとめ

3部作を最後までお読みいただき、ありがとうござまいます!
これからも当noteでは弊社のPHILOSOPHYが伝えながらも、IT業界に興味がある方に有益な情報を伝えられるコンテンツを発信していきたいと考えています。
ぜひ、スキ、クリエイターのフォロー、SNSでのシェアの方よろしくお願いします!

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